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「攻殻SAC」シリーズ完結編のオチをご存じですか?

今回は、今だからこそ改めてこの作品↓↓について少し書いてみたい。

「攻殻機動隊SAC 2045」(2020~2022年)

制作:ProductionI.G

この「2045」は「GHORST IN THE SHELL」「SAC」「ARISE」に比べて話題になることが少ない作品だが、でもよく考えたらProductionI.Gにとってこれが最後の「攻殻」であり、少なくとも「SAC」シリーズの完結編がこれなんです。
あと、田中敦子さんの草薙cv最後の「攻殻」だし・・。
非常に大事な位置付けの作品だといえる。

なのに、なぜこの「2045」があまり話題にならなかったかといえば、ひとつはNetflixでのリリースだったこと。
そして、あともうひとつは、これが3DCG作品だったというのも実は大きなネックだっただろう。

しかし、後に監督の神山健治さんが明かしてたが、神山さんも理想を言えばホントは2Dでやりたかったんだそうだ。
だが、それをやるにはスタッフのスケジュールを押さえるのが無理だった、と。
多分、具体的には沖浦啓之、黄瀬和哉、西尾鉄也、この3神のスケジュールのことを指してるんでしょうね。

でも一方で荒牧伸志は押さえられたから、じゃいっそ荒牧さん軸で3DCGでいこう!という流れになったのかと。

じゃ、まずは最初にこの作品のタイトル、「2045」というところから触れておきましょうか・・。

ちなみに、この2045というのはダブルミーニングであり、ひとつはこの物語の舞台となる時代設定を表してるわけです。
西暦2045年というのは「笑い男」事件の15年後、そして「個別の11人」事件の13年後、さらにいうと「傀儡廻」事件の11年後。
なお、草薙の年齢は2045年時点で40歳です・・。

そしてダブルミーニングのもうひとつの方の意味は、これはフィクションではなくリアル世界の方の話だが、最近メディアでは「シンギュラリティが西暦2045年前後に到来する、というのをやたら騒いでるでしょ?

シンギュラリティとは、AIの技術的特異点のことである。
ようするに、2045年を境にAIが何か一線を越えるだろう、ということね。

・・で、この「SAC2045」においても主題はまさにそのシンギュラリティであり、これまで予測してた通りの西暦2045年、まさしくAIはそこで一線を越えてしまったんです。

じゃ、具体的にどういう事態になったのか?

<「SAC2045」シンギュラリティ>

①アメリカNSA所有の超高性能AI「1A84」に自我が芽生え、脱走。
なお、この「1A84」が複数の人間に接触(ダウンロード?)したことにより、複数名の「ポストヒューマン」(➾超ハイスペック新人類)が誕生。

②「ポストヒューマン」の最後の生き残り・シマムラタカシは、公安9課&米軍の武力をもってしても制圧できず、やがてシマムラは世界中の人々(公安9課、米軍を含む)に対してゴーストハックを敢行。
それにより、争いが起きない恒久平和の世界(現実と仮想世界の融合)が実現した。

シマムラタカシ(cv林原めぐみ)

はい、自我が芽生えたAIが脱走して人間と融合を図るというくだりは、「GHORST IN THE SHELL」における「人形使い」のオマージュそのまんまですね。

そもそも、この「SAC」シリーズというのは「もしも草薙が『人形使い』と出会わなかったら」という<if>を前提として作られた別世界線(セカンドライン)だったというのに、それがシリーズの最後の最後になって、遂に「なんちゃって人形使い」とでもいうべきAI「1A84」が登場しちゃうんですよ(笑)。
このへんからして、神山さんの「打ち止め」の意思を感じさせますよね。

ポストヒューマン

で、今回のパターンは「人形使い」の時の流れをかなり大胆にアレンジしており、その「1A 84」との融合の末に覚醒した「ポストヒューマン」というのがもうトンデモないバケモノでして・・。
普通に目視で弾丸かわすし、1対1では草薙ですら太刀打ちできない。

中でも特に最強なのがシマムラタカシという少年であり、こいつが挑んだ「全人類ゴーストハッキング」は「攻殻」史上でもおそらくダントツ1位のS級難易度だったと思う。
というか、こんなバケモノに対抗できそうなのは、「人形使い」と融合以降の草薙だけでしょ(つまり「イノセンス」における草薙)。

たとえばだが、この画のシーン↑↑において草薙はシマムラを仕留めてるが、実際のところは仕留めてはいません。
つまり、これはシマムラにゴーストハックされた上で見せられてる仮想現実なんですよ。
この虚構を見せられてる時点で、草薙はシマムラに負けてるということ。

じゃ、「SAC2045」は公安9課が敵(ポストヒューマン)に屈する<バッドエンド>ということなのか?

・・いやね、そこが正直何といっていいのか微妙である。

確かに公安9課(人類)はシマムラ(ポストヒューマン)に屈したにせよ、それがバッドエンドなのかどうかはよく分からん。

一応、ラストのネタバレをすると(もう4年経った作品だしイイでしょ?)結局シマムラは「全人類ゴーストハック」をし、「セカイ書き換え」をほぼ完遂したわけです。

これ自体は現実世界と仮想世界を融合させる試みというか、人々は今までと変わらない生活(現実)を送りつつ、なぜか一方では自分にとっての都合のいい仮想現実を体験してるという、<半現実/半仮想>とでもいうべき融合型セカイを彼は創り上げたんですね。

・・ん?意味分からん?
はい、私も正直そのイメージはよく分かりません(笑)。
ただ、そこは「皆が満たされた平和なセカイ」らしく、おそらく戦争のないセカイになるだろう、と。

だが、そのセカイで草薙だけ「あ、これ現実じゃない!」と気付いちゃうんですよ(笑)。
・・で、ひとり覚醒し、リアルの方でシマムラと邂逅したところ、シマムラは「書き換え」の仕上げに入ってたのね。

で、シマムラは言うんだわ。

貴方がこのコード↓↓を引き抜けば、
セカイは元の世界に戻る、と・・

まさか最後の最後で、世界の命運が草薙の手に委ねられるとは・・(笑)。

<草薙の選択>

①コードを抜く

➾常に争いがあり格差もあり、不幸に満ちた<リアル>を選択

②コードを抜かない

➾常に争いがなく、幸福で満ち足りた<バーチャル>を選択

で、作中では、草薙が①と②のどちらを選択したかの描写は出てきません。

ただし、Netflix版(第2期全12話)と劇場版(第2期総集編)を比較したら、微妙にラストの描写が異なってるんですよね。
全12話版の方では「どちらとでも解釈できる」ニュアンスだったのに対し、総集編の方では明らかに「②を選択した」ことが匂わされている。

多分だが、これは②が正解ということなんでしょうね・・。

いや、一般的な漫画/アニメなら、こういう選択において主人公とは十中八九①を選ぶものである。
優しい嘘のセカイなんかより、苦しくとも本物のセカイを俺は選ぶぜ!」的なオチ。
そこは少年ジャンプでも少年マガジンでも少年サンデーでも共通のベクトルだといっていい。
なのに神山監督(荒牧監督)は、そうしなかった。

・・なぜか?

まぁ、率直に言ってしまうと

それは本編(原作)の草薙が「あっち側に行く(現世を放棄する)」という選択をするようなキャラだったからですよ。

そういう意味でいうと、「攻殻」というのは日本の一般的なエンタメの文脈からはズレてるのかもしれませんよね・・。

・・まぁとにかく、「GHOST IN THE SHELL」では草薙がリアルを捨てて「あっち側」に行ってしまったのに対し、「SAC2045」では逆にバーチャルの方が「こっち側」に来てリアルに融合するという、ちょっとしたマイナーチェンジになってるということだよな?

でもって、草薙自身は今後「あっち側」も「こっち側」も自由に往来できるイレギュラーな存在として生きていくんだろう。

じゃ一方、シマムラは今後どうなるのかというと、本人いわく「システムに統合され、非存在となる」ということらしい。
システムとの一体化、いわばカミ様みたいな、ふわっとした存在になるわけね?

じゃ、あとシマムラに意識処理を施された、世界中の人々は今後どうなっていくのか?
・・まぁ、ここが一番のキモだな。

彼らは、きっとリアルとバーチャルの2つを同時並行に生きる存在となり、そういうのを「ダブルシンク」(2つの情報処理)というらしい。
そして、こういうダブルシンクが出来るようになった人たちのことを、作中では<N>と命名されている。

じゃ、この<N>とは一体何なのか?

よく分からんが、どうも人類が<N>になることこそがシンギュラリティの主旨だったようで、これは一種の「進化」という解釈にもなるらしいのね。

で、この「リアルとバーチャルを同時並行で生きる」というダブルシンクは作中にて「解脱」と表現されており、つまり、このダブルシンクこそが煩悩から解放される極意、ということだろうか?

なお、<N>の意味については大まかに次の3通りの考え方があります。

①ニュートラルの<N>

「ニュートラル」の意味・・対立する2つのいずれにも属さないこと。
中立、中間。

②ニュータイプの<N>

「ニュータイプ」の意味・・文字通り、旧人と異なる新人類のことを指す。
地球の重力に縛られない人たち。

③Netflixの<N>

「Netflix」の意味・・世界全人類がNetflixに加入した時にシンギュラリティが起き、人々は<N>となる。

なるほど、なかなか深いですねぇ・・。

個人的にだが、シマムラの野望は③であった可能性が高いと思う。

ところが、今度のサイエンスSARU版の新「攻殻」は、<N>ではない<F>の方、フジテレビ系列みたいっすね?

可哀相にシマムラくん、あそこまで身を削って超頑張ったのになぁ・・


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