見出し画像

皆さんはDIME「攻殻機動隊」特集号をチェックしました?

今回は、「攻殻」の原作者として知られる漫画家/士郎正宗先生について少し書いてみたい。

というのも、先々月発売の「DIME」誌が<映像化30周年「攻殻」大特集>という企画をやってて、その中で「士郎先生に一問一答」という企画があるのよ。

士郎先生以外にも、押井守神山健治黄瀬和哉大塚明夫山寺宏一などオールスターが揃い踏みで、「攻殻」には特に繋がりがないはずの小学館が一体どうしちゃったんだろうね?
・・いや、これは小学館がどうこうというより、映像化30周年ということで「攻殻」の側が積極策に打って出てるということだと思う。
事実、来年には「攻殻」サイエンスSARU版もリリースされるわけですし。

また、今年は「士郎正宗の世界展」↓↓というのも開催された。

これらを見る限り、

士郎先生、いよいよ今後は積極的に仕事をしていくという意味じゃないのか?


そう、先生はこれまで仕事をセーブなさってきたんだよね。
一時期までお父様の介護で仕事がままならなかったと、先生ご自身が語っていた(もう今は大丈夫になったみたい)。

これほどに全世界的な知名度がある漫画家でありつつも全くメディアに露出しない人であり、それがまたミステリアスで、一層神格化されてるようにも思うんだが・・。
ただ、士郎先生の「担当」である講談社の編集者に「士郎先生って、実際はどんな人ですか?」と質問したところ、

「いかにも<関西人>という感じの、よく喋る面白いオジサン」

という意外なアンサーでした。

そうだね、確かによく考えたら士郎先生の漫画って明るいのよ。
世間では押井守版GHOST IN THE SHELL」のイメージが普及しすぎて、どこか士郎正宗=小難しい、哲学的、陰鬱、と誤解されちゃってるところがあると思うが、実際に先生の漫画を読むと意外なほどにギャグ要素が多いんです。

じゃ、なぜ先生はメディア露出しないのかということについて、ただシャイなのかと思えばそういうのじゃなく、ご本人いわく

「顔バレをすると、本屋で立ち読みしている人の側でさりげなく評判が聞けなくなるから」


とのことで、これ大したポリシーというわけじゃないみたいだし、多分だが近いうちにメディア露出も解禁されるのでは?

さて、話題を前述の「DIME」の記事に戻すが、この特集の目玉「士郎先生に一問一答」の内容をについて少し抜粋してご紹介しましょう。

Q. 『攻殻機動隊』で描きたかったテーマ、表現したかったことは?

各個人が通信端末使って連携する様子や、人工知能たちがちょっとヌケていてかわいかったり、冷徹合理的で怖かったり、人間の思惑から逸脱した行動を取り始めたりする様子を「融合が起こるところまで」描くのが『攻殻機動隊』の受け持ち部分となります。

Q. 『攻殻機動隊』の先見性は、科学技術や思想、商品やサービスにも大きな影響を与えていると言われています。最近注目されている商品、サービス、技術は?

立場的・商業的には「どうだ、凄いだろう!」と言った方が良いのかもしれませんが、個人的には、原作版の『攻殻』に特筆すべき先見性はないと思います。

Q. 専門的知識や神話的な背景などが惜しみなく詰め込まれていますが、最近読んで面白かった本は?

最近読んで面白かったのは、『日経サイエンス 2025年8月号』のプラナリアの記事です。
消化進行中〝積ん読〟は『サボテンはすごい』(ベレ出版)、『消防のための除染の教科書』(イカロス出版)、定期再読中『音楽・情報・脳』(放送大学教育振興会)です。

といった感じで、他にも色々と質疑応答はあるわけだが、もし興味があれば「DIME」を読んでみてください。

で、私がこの質疑応答を見てまず感じたことは、

「あぁ、士郎先生にとって『攻殻』は既に過去なんだなぁ・・」


ということである。
実際、この記事の中でも「別テーマは別タイトルで描く派なので、『攻殻』は終了してるつもり」と明言なさっており、これは先生のライフワークでも何でもないんですよ。
「攻殻」の原作は全3巻しかない短いものだが、あれでもう終わりだ、と。

で、二番目の質問に「『攻殻』に先見性はない」と答えた通り、先生が強調なさってるのは、この作品が決して自身の独創で生み出したものではない、ということ。
80年代時点で既に別媒体にあったものをインプットして、それを自分が漫画という媒体でアウトプットしたにすぎないんだ、ってことを先生は言いたいわけね。
私自身は大したことしてないんですよ、と。

で、先生の「インプット」は今もなお更新中のようで、三番目の質疑応答を見る限りでは、プラナリアだとかサボテンだとか、どっちかというと関心はサイバーパンクからオーガニックの方に移行してる感じなのかな?
ただ、前述の講談社「担当」編集者が言ってたことは、以前に先生と雑談をしてて「量子コンピュータ」の話題になり、その時は怒涛のように専門用語等が続出して先生が何を言ってるのか全然分からなかった、と。

20年以上、ずっと士郎先生を担当している講談社編集者/桂田氏

いや、士郎先生はこうやって謙遜なさってるけど、私はこの「インプット」こそが先生の類い稀な才能じゃないかと思うのよ。
その時代の最先端のものを目ざとく見つけ、その最新テクノロジーを徹底的に勉強していくのが先生のスタイルでは?
ちなみに先生は、1983年2月で既にサイバーパンク作品を発表している。
リドリースコット監督作「ブレードランナー」公開の半年後であり、創作のタイミングではほぼ同時だったといっていいだろう。

「ブラックマジックM-66」

そのデビュー作をアニメ化したのが「ブラックマジックM-66」であり、これは士郎先生自身が監督をなさっています。
普通にYouTubeでアーカイブされてるから、興味ある人はどうぞ。
ただ、先生自身はこの制作で「自分にアニメの才能は無い・・」と痛感したらしく、以降はアニメに携わらず、またその後のアニメ化に際しても原作者としてクチを挟むことは一切してないという。
ちなみに、押井守作品のことは高く評価してるそうだが。

ただね、私が個人的に「あぁ、士郎正宗色がよく出てるなぁ」と一番感じるのはこの作品なんですよ↓↓

OVA「特装戦車隊ドミニオン」(1993年)

これは、数ある士郎正宗系アニメの中でも飛び抜けて明るい。楽しい。
本来の士郎先生カラーは、こっち系なんだから。
これを未見の方は、是非ご覧になっていただきたい。
YouTubeで「new dominion 1-6」と検索すれば2時間52分の動画が見つかるはずなので、それをご覧ください。
なお、千葉繁の役名が「うる星やつら」と同名の「メガネ」で、しかもそのキャラ設定は「パトレイバー」のシゲさんとほぼ同じという、なんか色んなものが混線しちゃってるところが個人的には大好きです。

さて、続けてお薦めしたいのは、やはりこれ↓↓ですね。

「Appleseed Alpha」(2015年)

監督/荒巻伸志

海外では大絶賛されたのに、なぜか日本ではあまりにも語られない本作。
これ、あのジェームズ・キャメロン

「前2作も大好きだったが、今回の作品は全く別の次元に到達している」

とまで言ってくれており、ある意味で日本の3DCGアニメの金字塔なんですよ。
未見の方はYouTubeで「Appleseed Alpha english sub」と検索すれば日本語吹替版が見られますので、是非どうぞ。

これ、3DCGでもいわゆる「フォトルック」というどっちかというと日本人があまり好きじゃない系統のやつで、制作側もそのへんは分かってたのか、日本公開はアメリカ公開の翌年でしたっけ。

で、これは日本のアニメといっていいかは微妙なんですよね。
監督は荒巻伸志だしプロデューサーも日本人だが、製作がアメリカのSONYなのよ。
SONYという企業は、もはや国籍で語ることができない存在になっている。

皮肉にも、「Appleseed」という物語の世界観そのものがそうなんだよね。
世界大戦の末に「国家」が滅び、かつての多国籍企業(SONYのような)が人々を統治する疑似国家のような機能を果たしてるという未来・・。

で、この「Appleseed Alpha」で最大の見所になってるのが巨大ロボの描写である。
リアル志向の士郎作品に巨大ロボというサンライズ的概念はどちらかというと珍しいんだが、でもちゃんと出てきます。
しかし、そこは工学知識に異様なほど長けた士郎先生だけに、サンライズ的二足歩行型には絶対にしないんですよ。
二足歩行型は、俗にいう「パワードスーツ」仕様までを一定の限界としてるみたいで、何十メートルもある巨大ロボットで二足歩行は無理だ、と考えているんだろう。
・・いや、そこはサンライズの人たちも実は分かってるんだけどね(笑)。
理論上無理でも、そこはロマンだし・・。

で、士郎先生的には「多脚式なら、あるいは」という発想に至ったのか、

巨大ロボ=巨大なタチコマ

というところに落ち着きましたね(笑)。

いちいち設定がクソ真面目な人やなぁ・・


でも、士郎先生の本質はそこなんですよ。
基本、この先生の作家性は<テクノロジーの描写>である。
だからこそ、そこをロマンのひと言で誤魔化したくないんだろう。

で、話を士郎先生の「DIME」一問一答に戻すが、最近の先生のインプットが「プラナリア」「サボテン」「除汚」「音楽/情報/脳」といった内容だと知り、私が真っ先に思い浮かんだのがこの「Appleseed」なんですよ。
この作品のテーマはサイバーパンクよりむしろバイオテクノロジーの分野、バイオロイドという人造人間の存在がひとつのカギなんです。

今後、もし士郎先生が新たな「アウトプット」をするというのなら、それは「Appleseed」ということになるんでしょうね。

それはそれで、楽しみにしたい。


いいなと思ったら応援しよう!