引っ越し当日の朝なのに、全然片づけ終わりませんでした。【のぞみんさん企画】
引っ越し当日の、朝。
部屋の中に、モノが溢れている。
段ボールに詰め終わったのは、8割。
引っ越し屋さんが来るのは、2時間後。
あなたなら、どうしますか?
これは、私が実際にやらかした情けなくもしょうもない失敗談です……。
今日は、いつもあたたかい企画を開催されているのぞみんさんの新企画に、参加させていただきます。
今回のテーマは「教えて!私、こんな失敗やっちゃいました」。
私の失敗は、笑えるかどうか微妙なラインなんじゃないか、という不安がありますが……。
のぞみんさんいわく、小さな勘違いでも、ちょっと笑える話でも、まだ引きずっていてもOK、との温かいお言葉。
きっとこんな私でも、参加してだいじょうぶに違いない!
あたたかいお気持ちに励まされつつ、お話したいと思います。
そう、あれは、私がうつ病から立ち直り、新しい会社への再就職が決まった頃のことでした……。
ブルドーザーのように、突き進んだ
まだ私に「双極性障害」という病名がついていなかった頃の話です。
(双極性障害についてはこちら)
うつ病で長く働けなかった私は、なんとか再就職。
全てをリセットしたくなって、引っ越そう、と思い立ちました。
仕事をしていなかった期間が長かったので、当然、お金はありません。
何ヶ月かは生きていけるけれど、引っ越しの費用に、敷金礼金。
一気にギリギリ。
ふつうなら、ここで一度立ち止まるのかもしれませんね。
「いや、もうちょっと貯めてからにしよう」って。
でも、私は気にしませんでした。
景気よく50万円ほど、借金しました。
今になって振り返ると、これはたぶん、うつ状態からの 躁転 だったんだろうな、と思います。躁転というのは、異常に明るくなる状態ですね。
爆発的に行動力があって、引っ越しも借金も転職活動も、すべて「なんとかなる」。
ブルドーザーのように全てをなぎ倒しながら進み、止まれません。
それが転職や引っ越しのエネルギーになったのは、事実かもしれません。
引っ越し業者の手配は早々に済ませて、あとは「ちょっとずつ片づければいいや」と思っていました。
いやー……
本当に。
ダメでした。
全然、集中できないんです。
段ボールを組み立てては、ぼーっとして、別のものを触り出して、また座り込んで……の繰り返し。
(これも、たぶん症状の一部だったのかもしれません)
実際に片付けに着手し始めたのは、引っ越し当日の5日前くらい。
その時点で、もう私は、間に合わない予感がしていました。仕方なくトリアージ(絶対に要るモノから詰め始める)をやっていました……。
当日。段ボールとゴミに囲まれて
それでも一応、徹夜で詰めるだけ詰めて、当日の朝を迎えました。
そして
部屋の中に、モノが溢れている。
段ボールに詰め終わったのは、8割。
引っ越し屋さんが来るのは、2時間後。
残った2割は、ほとんど、いるんだかいらないんだか分からないモノたちでした。
ぬいぐるみ、マジックハンド、訳の分からないボトルなど、すぐ買い直せるようなガラクタたち。
疲れ果てていると、引っ越し業者の爽やかなお兄さんたちが2人、やってきました。
「片付いてなくてすみません」
私が頭を下げても、彼らは顔色一つ変えませんでした。
「大丈夫ですよー」
きらりと輝く、笑顔です。
たぶん、こういう、どうしようもない客が一定数いるんでしょうね……。
日本のサービス業の懐の深さよ。
お兄さんたちが段ボールを次々に運び出していく中、私は部屋の片隅で、同時並行の梱包作業を続けていました。
みじめな気分です。
どこの世界に、運び出されるのと並行して荷詰めをする客がいるんでしょうか。
夜逃げか?
計画性がないにも程があります。
暗い気持ちで、なんとか追加で何箱か詰めて、テープを貼って。貼った瞬間からお兄さんが持っていきます。
ふと顔を上げると、運び出される荷物はもう、無かった。
ガラクタを除き、部屋はキレイです。
私はおそるおそる聞きました。
「あの……、少しだけ、待っていただくことは……」
お兄さん。
笑顔で、爽やかに答えてくれました。
「そういうのは、無理っすねー」
そうだよなぁ。
他にも現場がありますものね……。
最後にちょっとだけ気の毒がってくれたのか、お兄さんは、5分くらいで詰められそうな荷物を、余った段ボールにササッとまとめて持って行ってくれました。
ありがとう、お兄さん。本当にありがとう。
そして、引っ越し業者のトラックは、行ってしまいました……。
ぐるりと見回すと、まだ、それなりにモノが残っている。
ちなみに、部屋の明け渡しは夕方に控えています。
照明もない天井を見上げ、私はため息をつきました。
だけど、諦めるのは早い。
躁状態の時の頭の中は、経験がない方には、想像がつきづらいものだと思いますが……。
「不安」がなくなる、というのは私にとって典型的な症状です。
ふつうの状態だと、何かしよう、したいと思う時
でも、迷惑をかける。
でも、恥ずかしい。
でも、常識が。
なんて声が頭をよぎるじゃないですか。
これ、無くなっちゃうんですよね。
「それって、いいことじゃないの?」と思う方も、いらっしゃるかもしれません。
けれど、自分を止める声は、足を引っ張ることもありますが、悪いものではないんです。
過去の経験を元に、人に迷惑をかけないように、自分を守れるようにと考えてくれている「優しさ」。
ただ自分の命や、明日の暮らしや、生活の足元が揺れている時にまでこの「でも」たちに勝たせ続けると、たまに、悲しいことが起きることがありますね……。
不思議なんですけど、躁状態の時は「でも」が、頭から消えてしまいます。
なので、私は全く諦めませんでした。
「廃品回収」とネットで検索して、片っ端から電話をかけ始めます。
途中から、もう探しているのは「廃品回収」というより何でも屋 でした。
いや、本当にあるんですよ、「何でも屋」。非合法でなければ何でもやってくれる。
お金は余分にかかります。
でも、背に腹は代えられないんですよね。
私は大家の前でガラクタを見せつけたり、延滞料金を支払いたくありません。
「今日の午後一くらいでお願いしたいんです」
ムチャ振り。
誰か応じてくれるんでしょうか?
でも私は意地になっていて、やってくれるなら金に糸目はつけない気分になっていました。(繰り返しますが、すでに借金しています)
10社くらい電話してようやく……
1社だけ、引き受けてくれるところが見つかりました。
「いいっすよー」
と軽いノリです。信頼できるんでしょうか?
でも思ったより安かったので、二つ返事でお願いすることに。
お金、ないんですけどね。
……ちなみに、私の母は父の借金でずいぶん苦労していたようなので、私はもともと借金もリボもローンも分割払いもあまり好きではありません。
合理的に考えれば、今すぐ一括で払うのが一番安くつくんですから。
それでもこの時の私は、お金を遣うことになんの躊躇いもなかったんです。
こういう「浪費」は典型的な躁エピソードです。
本当に怖いですね。
イケイケな廃品回収のお兄さん。そして、明け渡しできるのか?
午後一くらいで、作業着姿の兄さんたちが2人来てくれました。
思っていたより若い上に……なんと言えばいいのか、やんちゃな感じです。一人はオールバックでした。陰キャの私は普段側に寄らないタイプの男性たちです。
でも私は「どうにでもなぁれ」という気分だったので、もう無反応です。
邪魔にならないように、部屋の隅っこで、少し落ち込みながら体育座りをしていました。
いくら躁状態だとしても、疲れないわけじゃないですし、昨晩から寝ていないので……。

お兄さんたちはてきぱきと部屋の中のガラクタ(今はゴミ)を袋に詰めていき、たまにこちらに振り向いて聞いてきます。
「これも、捨てちゃっていいんですか? いるんじゃないんですか?」
クイックルワイパー的な、掃除用具の残骸です。
私は虚無の表情で、首を横に振りました。
「いや……捨てちゃってください」
お兄さんたちはものの1時間もかからずに、ガラクタだらけだった部屋を、すっかりきれいにしてくれました。
私は丁寧にお礼を言って代金を渡します……。たしか2万円ちょっとだったと思います。
でも、間に合いました。
その後引き渡しのため、何食わぬ顔で大家さんを迎えた私。
(ここでも、なんか、傷がどうだのこうだのとひと悶着ありましたが、のらりくらりしていたら、うやむやになりました)
部屋を明け渡したあと、なんとも言えない気持ちで部屋を後にしました…。
正直、ホッとしたんです。
ありえないズボラさでしたが、何とかなりましたね。
やっぱり、人間、諦めなければ道は開けるんです。
ありがとうお兄さんたち。
だから今日、私はこの話を書いています
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
なんだか、恥ずかしいですね。
このエピソード、人に話すとドン引きされるんですよ。
「え……。なんで片づけられなかったの?」
と。
日ごろ散らかっている部屋に住んでいたって、引っ越しが終わっても荷詰めが終わっていないなんて……ありえないですよね。
業者のお兄さんたちには、本当に申し訳ないことをしました。
(と同時に感謝も)
ただ、こうやって書いてみると、こんなしょうもない話からも、お伝えできる教訓が2つあるかな、と思いました。
1つめは、躁状態が、どんなものか。
「気分が上がる」とか「テンションが高い」だけでは語り尽くせないというか。実際の躁(この程度ならまだ軽躁状態かもしれません)は、こういった形で訪れます……。
普段なら、
・やらない借金や、大きな買い物に躊躇がない。
・関わらないような人とも躊躇なく関わっていく。
・逆に人間関係を断ったり、リセットしてしまう。
止まれない。
それなのに本人は「調子が良い」と思っていますから、自分でも気づけないことが、しばしばあるんです。
もし身近に、急に「えっ、そんなことする人だっけ?」という決断を連発する人がいたら、ちょっと心配して見ていてあげてください。
2つめは、「どれだけ追い詰められても、どうにかなる」(場合が多い)……ということ。
結局私たちって、自分の常識の範疇で「そんなことしたら、きっととんでもないことになるに違いない」と思ってしまうことは多いんですよね。
もちろん、危険なことであれば、慎重になられていいと思いますが。
でもそれ以外のことは、たいていやってみればどうにかなることって、多いじゃないですか。
今回だって、引っ越しは……失敗したかに見えましたが……。まぁ、最悪の状況だと思っても、なにがしかの打ち手はあるということです。
そして困った時、なりふり構わずやれるか。
人に迷惑をかけてはいけない、自分の不始末は自分で背負うべき、と思って黙ってしまう方は、多いと思います。
でも、黙っていたら、自分が本気で困っていることを、どうやって誰かに伝えられるんでしょうか。
廃品回収のお兄さんたちは、諦めずに探してお金を払えば来てくれる。
引っ越しまでに間に合わなくても、あがけばどうにかなりました。
恥ずかしくても、迷惑をかけても、頭を下げて、人に頼ればどうにかなる時があります。お礼をきちんとすれば、それでいいと思うんですよね。
あなたは何か、困っていることがありませんか?
人に頼ればもっと助かるであろうことも、自分だけで全て、やろうとしていませんか。
最後に、のぞみんさんへ。
いつも、とっても素敵な企画を開催してくださって、本当にありがとうございます。
今回も、「いま自分が書きたい話」を、ちゃんと言葉にする機会をいただきました。
そして、のぞみんさんは2026年5月26日にnote1周年を迎え、メンバーシップを開設されるそうです🎉
夢は、 メンバーさんみんなでのランチ会 だそうで…!
なんて素敵な夢なんだろう、と読みながら微笑んでしまいました。気になる方は、ぜひ、のぞみんさんのページを覗いてみてくださいね。
そして、この企画に参加してみたい方へ。
「教えて!私、こんな失敗やっちゃいました」
締切:2026年5月23日(土)
あと、4日ほど。
笑える失敗でも、まだ少し痛む失敗でも、こうやって書いてみると、不思議と、ちょっと心が軽くなる気がしますね。
「あれは、私のせいだけじゃなかったかも」とか、「ま、結果的にはなんとかなったな」とか、書いている途中で、自分でも気づいたりする。
私の失敗が、誰かの「自分はまだマシだ」になればいいし、誰かの失敗を読んで、私も「自分だけじゃなかった」と思えたら、嬉しいです。
引っ越しに間に合わなくても。
業者さんの前で体育座りしても。
それでもきっと、だいじょうぶです。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
▶本文中でちょっとだけ触れた、うつ病明けでも転職頑張ったお話はこちら。
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