【琥珀の夏】読書感想文 #辻村深月の本全部読む㉖
「カルト団体」をとりまく人々のお話、胡散臭さや怪しさをめっちゃ纏っているんだけど、具体的にどう悪いかと言われると言葉に困る、そんな団体へのモヤモヤを感じさせるお話でした。
序盤〜中盤はそこで過ごす、もしくは過ごした人間の状況や心理を群像劇の形式で書いていました。辻村深月の初期作品のように謎を散りばめて丁寧に状況説明をしているので、人によっては前半部分に退屈さを覚える人もいるかもしれません。
種明かしや物語がしっかり進み出すのは中盤以降で、前半はひたすら状況説明なので、そこで読むのをやめちゃう人もいそう。
感想
僕は大学時代の経験から、規模の大きいことばかり言って目の前の課題を軽視する人間が嫌いなので、このカルト集団のことは相当懐疑的に見ていました
物語中盤でこの感情が言語化されていて、とても心地よかったのを覚えています。
ただ、なまじ理念の聞こえはいいから、靡く人は靡くんだろうな
自分の子ども一人を救えないのに、他の子と、理想的な社会の方ばかりを見るのだろう。
利己的すぎる人間は叩かれて然るべきだけど、身内を顧みず利他的に動く人間も同じくらい叩かれるべき。
凪良ゆうの「星を編む」を読んだ時も同じ感想を持ちました。
トリックについて
辻村深月を多く読んだ人ほど、勝手にトリックに騙されそう、過去の辻村深月作品のトリックの積み上げが、今作品のミスリードを誘ってて、完全にしてやられました。俺も勝手に深読みして騙された
そしてあの種明かし。辻村深月のルーツである綾辻行人が完全に重なって見えました。これをするためにこの作品を書いていたんだろうなってくらいの衝撃
良い切れ味でした。
最後まで読んでの感想
清濁合わせ飲む覚悟がなく、それどころか清の方だけ選んで生きることが当然のように考える「ミライの学校」の人たちは、皮肉を込めて言えばたしかに「育ちがいい」し、「清潔な世界で生きてきた」んだと思います。
聞こえのいいことを並べながら、実情は終始自分たちの保身に走るカルト団体。読んでて気分のいいものではなかったです。
さいごに
この小説自体は結構最近のお話なんですけれど、初期作品の雰囲気を強めに感じて、それはそれでなんだか嬉しい気持ちになりました。
丁寧な状況説明と徹底した心理描写で行間を減らすことで、ファンを置いていかない姿勢や、結末の感じとか含めて、初期の辻村深月先生っぽさを感じます。
他の辻村深月作品と比べて好みかどうかはさておき、とても興味深い作品でした。
