見出し画像

姿勢に関するネット情報の8割は誤り  ⑤脚の長さが違う=ゆがみではない



1 脚の長さの差は誰にでもある



「脚の長さの差がある人は、骨盤がゆがんでいる」
というネット記事を見て、脚の長さの違いに気づいて
気にされている方が、けっこういらっしゃいます。

また、整体に行くと、左右の脚の長さの差を指摘されて、
骨盤の矯正を勧められることが多いのも、
脚の長さ=骨盤のゆがみの考えが定着することに
繋がっているようです。

先天性股関節脱臼、骨折、変形性膝関節症、関節リウマチ、
人工関節手術の影響などのけがや病気によるものを除くと、
実は、ほとんどの人が左右で脚の長さが違っています。

そのため、必ずしも脚の長さの違い(脚長差)=ゆがみ
とはいえないのです。

脚の長さの差があることで、利き足と軸足がある訳ですから。

そう言ってしまうと、足の長さの違いの指摘は、
生理的に存在するものを
「骨盤がこんなにゆがんでいますよ」
「骨盤を矯正しましょうね」
というセールストークに
利用しているように聞こえますね。

解剖学的にいうと、
心臓や肝臓などの臓器は 左右の偏りが見られるものの、
筋肉や骨格に左右差は認められないというのが、
医学的な見解です。

確かに解剖されたご遺体の骨格は左右対称ですが、
生きている体には、利き手や利き足があるように、
脚の長さの左右差は必ず見られます。

それは、人の重心は真ん中にはないためです。
必ず、前後・左右で、それぞれいずれかに
重心は偏っています。

お臍(へそ)の下あたりに、体の重心があるといわれますが、
お臍(へそ)の位置が、真ん中にある人はほとんどいません。
脚の長い側に重心は移動し、お臍(へそ)の位置もその方向へズレます。

本来、誰にも見られる「脚長差」が、
加齢や日常生活や仕事の無理の蓄積により、
許容範囲を越えて、骨盤のゆがみに繋がっていく
のです。

したがって、整体院で脚の長さを矯正するのは、
あながち間違いではなく、予防的見地、
根本原因にアプローチするためのことと考えられるのです。


2 脚長差の意味するもの


まず、
御自分の脚の長さの左右差(脚長差)を確認してみましょう。
一般的に、脚の長さの検査をする時は、
イラストの様にうつ伏せで行うか、仰向けで行う事が多いです。 

両脚を揃えて、内くるぶしやかかとを基準にして、
左右の脚の長さの差を比べます。

しかし、
自分で脚の長さの差を調べるには、
両足を前に伸ばしてお尻を落として座る
「長座位」で行うとよいでしょう。

その状態で、
両足を捻じったり床から浮いたりしない様に
ぴったり閉じて合わせます。

拇趾(足の親指)の先やかかと、内くるぶしの位置を
左右で比較すると脚の長さの差がわかると思います。

患者さんには、
写真のように、仰向けか長座位のまま、
両膝を曲げて立て、自分の方に脚を引き寄せた状態で、
骨盤の骨から膝までの長さの差を
比較する方法を行ってもらっています。

この方法では、
膝頭の位置が頭の方向に移動している側が、
脚が短く見える側となります。
 

膝頭の位置が頭の方向に移動しているのは、
腸骨が後傾しているためです。


この方法を用いると、脚の長さが何を意味するかを、
患者さん自身にわかっていただけます。

膝を立てて脚の長さの差をチェックした場合、
同時に「腸骨」の前傾側と後傾側が確認できます。

「腸骨」とは、
骨盤の中央より両側に羽を広げたような形で見られる、
骨盤の中で最も大きな骨です。

腸骨が前に傾く動きを「前傾」
後ろに傾く動きを「後傾」といいます。


この動きは歩いたり走ったりする時に
自然に起こる動きです。

踏みこんで脚を後ろに蹴り出す時は、腸骨が前傾し、
脚が前に出る時は腸骨が後傾します。
左右で、骨盤の動きが異なるからこそ、
二足歩行が可能なのです。

〔右重心タイプ〕は、
右側の腸骨が前傾している
〔右重心タイプ〕は、
左側の腸骨が後傾している


さて、
われわれの股関節は、腸骨と大腿骨の骨頭が
連結して、その動きを担っています。

この腸骨と大腿骨頭の位置関係が崩れると、
左右の脚の長さが変わって見えます。

腸骨が前傾すると、
股関節の位置が 下方に移動して脚が長く見えます。
反対に腸骨が後傾すると、
股関節が後上方=頭側に近づくので脚が短く見えます。


そして、
脚が短く見える側に骨盤全体が傾き、背骨が弯曲します。


左右の腸骨には、必ず、
前傾している側と後傾している側があります。
つまり、だれでも脚の長さの差はあります。

ただし、寝た時と立った時とでは、
脚の長短が逆になるので、注意が必要です。

寝た時、座っている時に脚が短くみえる側に、
立った時に骨盤が傾いて 荷重がかかるため、
脚が長く見えます

一方、
寝た時、座っている時に脚が長く見える側は、
立った時には、腰方形筋や腸腰筋などの筋肉により
腸骨が引き上げられる分だけ、脚が短く見えるのです。

ネット上において、
「腸骨前傾側が脚が長い」という記述と
「腸骨後傾側が脚が長い」という記述がみられるのは、
そのためです。

立った時は、
腸骨前傾=足の長い側の
骨盤が上がるため、
脚が短く見える


3    腸骨の左右差がゆがみに変わる時


 
腸骨の前傾、後傾自体はだれにでもあるもので、
左が後傾すれば右が前傾する形でバランスをとっています。

したがって、脚の長さの差があるからと言って、
必ずしも骨盤がゆがんでいるとは言えないのです。

ある筋肉の過緊・硬化によりロックが掛かり、
腸骨の左右のバランスが崩れて、どちらかが
後傾または前傾で固定されて動きがなくなることで、
骨盤全体が後傾したり、あるいは前傾に見えたりします。

骨盤が後傾すると、
腰や膝が曲がって、へっぴり腰になります。
逆に、骨盤が前傾すると、
反り腰、出っ尻になります。


このような姿勢になっている場合、
腸骨の前傾・後傾バランス崩れにより、
骨盤のゆがみを引き起こしていると言えます。

その原因は、
重心の偏り過ぎ、筋肉の片使いなどにより、
腸骨を前傾させる、あるいは後傾に働く筋肉が硬くなることで、
骨盤の片側の関節のどちらかの動きに
ロックが掛かる
ことにあるのです。

腸骨の前傾に働く筋肉としては、
腸骨筋中殿筋大腿四頭筋などの伸筋
(そのため脚が長く見える)

腸骨の後傾に働く筋肉は、
大殿筋ハムストリングスなどの屈筋
(そのため脚が短く見える)

つまり、
骨盤を支える伸筋と屈筋のアンバランスが
大きくなることにより、
骨盤のゆがみが生じるのです。


4 手にも長さの差がある


座ったまま、あるいは立った状態で、
自分の正中を通し、両腕を伸ばすように真上に挙げていきます。
その状態で手を合わせると、腕の長い側と短い側を確認できます。



長い側は、腕の伸筋が優位で、肩甲骨が後傾しています。
短い側は、腕の屈筋が優位で、肩甲骨が前傾しています。

つまり、
肩甲骨が前傾する側は腕が短く見え、後傾側は長く見えます。

ここで注目してほしいのは、
腸骨の前傾側は肩甲骨が後傾し、後傾側は肩甲骨が前傾することです。

このような相関連動のしくみがあるからこそ、
運動会などで行進する時に、
手が前に出る側と足が前に出る側が、逆になるのです。

このことからも、骨盤と同様に、
だれにでも肩甲骨の左右差があることがわかります。

背中に右手を回して、左手を回した時と、
どちらが上に回しやすいかを比べます。
腕が長い側は、〔結滞動作〕がしづらく、
腕の短い側は、〔結滞動作〕がやりやすいのがわかります。


重心側は肩甲骨が開くため、肩甲骨を閉じる動きー
背中に手を回して手を頭方向にあげるのはやりづらいのです。


このように、肩甲骨の動きや腕の動きも、
誰もが左右差があるのです。
この差を気にされている方も多いですが、
四十肩などの関節の異常や痛みがない限り、問題ありません。

そして、その差が許容範囲を超えた時、
巻き肩や肩の高さの差などの
肩甲骨のゆがみとなって現れるのです。


5 脚の短い側・手の短い側が悪いという誤解


腕や脚の長短を解説すると、
「短い方の足(手)が悪いんですよね」という
言葉が返ってくることが多いです。
ネットを見ても、このような記述をよく目にしますが、
これは、論ずること自体、ナンセンスです。

腕や脚の長短の差は、体の重心が
左右にズレている現象だからです。

この重心の偏るという現象も、荷重が掛かるという現象と
混同されていることが多いです。

「重心の偏り」とは、物体や身体のバランスの中心が
中心から左右にズレている現象であるに対し、
「荷重が掛かる」とは、手や足に実際の重さや負荷がかかる
(力や重量の問題)現象を言います。

左右・前後どちらに移動しやすいかという現象と、
立位の状態でどちらに体重を掛けやすいか(〝休めの状態〟)、
ということでは、左右で真逆になります。

重心側(脚の長い側)は、足や手を横に、あるいは前に出しやすい側、
荷重側(脚の短い側)は、手や足に体重を掛けやすい側となります。

では、「手足の長い側と短い側でどちらが悪いのか」
の悪い側を、症状が起きている側と仮定して見ていきましょう。

脚の長い側ー体の重心を置く側(重心側)と、
脚の短い側ー体重を支える側(荷重側)では、
負担のかかり方が異なるため現れやすい症状が変わります。

重心側、脚の長い側、骨盤の前傾側には、
腰痛や坐骨神経痛、股関節痛、五十肩が
起こり易いといえます。

重心を掛けてバランスを取ろうとする側は、
筋肉が常に緊張し、縮みやすくなります。

また、
立った時には、逆側に荷重が掛かることで、
腰、骨盤や肩関節周りの筋肉が絶えず引き伸ばされ、
座った時には、片側の臀部に重心が移動し、
臀部の筋や坐骨神経に圧迫が掛かりやすいのです。

<脚の長い側に多い症状>

 首まわりや腰の筋肉のつっぱり

 股関節や足首、肩関節が硬くなり、可動域が制限される

・ 足首の外反捻挫を起こしやすい

 筋肉に神経が圧迫されることによる、
お尻や太ももの痛み(坐骨神経痛)

一方、絶えず荷重を受け、体重を支え続ける側は、
床からの強い衝撃と摩擦を受け続けるため、
関節や軟骨組織のすり減り・炎症が起きやすくなります。

<脚の短い側に多い症状>

 膝の内側の痛みや腫れ、股関節の内側の痛み

・ 足裏の足底腱膜炎や膝の内側の鵞足炎

・ 関節を保護するために過剰に関節液が分泌され、
 膝や外くるぶしなどに水が溜まる

・ 踵に体重が掛かり浮指になり、
 足裏の指の付け根の痛みが生ずる

また、上半身でも、
スマホ操作やパソコン仕事の場合など、
荷重側で支え負担が掛かることで、
同側の肩や肩甲骨の内側が凝りやすい、
食いしばりによる顎の異常をきたしやすくなります。

このように、
脚の長い側と短い側とではそれぞれ異なる負担が発生し、
どちらが悪いというのではなく、
それぞれの症状の発生するメカニズムがあるのです。

6 骨盤の前傾・後傾の矯正は左右同じやり方では揃わない


たとえば、骨盤が前傾しているといっても、
左右ともに前傾しているわけではないのです。
ですから、
左右ともに腸骨の前傾を矯正することは、
まずい訳です。

【骨盤前傾のセルフケア】とネット検索すると、
下の写真のようなセルフケアが掲載されてます。


右を行った後、
左も同じように行うのは
調整法としては誤りです。

太ももの前側の筋肉をストレッチして緩め、
骨盤を前傾させたポジションから戻ろうとすることで、
骨盤が後傾方向に矯正されます。

しかし、ネットには、
「逆側も同じように行ってください」
という一文が、必ずと言ってよいほど加えられています。
これでは、左右差が矯正されることはありません。

運動として行うのなら問題はないですが、
骨盤矯正や脚の長さの差を揃える目的が、かなわなくなります。

やはり、根底には、体は左右対称という考えが、
根強く残っていると考えられているようです。

私が骨盤前傾側の腸骨矯正法を指導すると、
半数以上の方から、
「逆側も同じようにすればよいですね!」
という言葉が返ってきます。

逆側は、臀部から太もも後側の筋肉を緩め、
骨盤を後傾方向に動かしてから、
前傾方向の動きを誘導する必要があるのです。


青矢印は非重心側―骨盤後傾側
赤矢印は重心側―骨盤前傾側
のやり方

骨盤前傾側と後傾側、それぞれの腸骨の矯正を、
簡単かつ、的確に行う方法ー【足落とし】を考案しました。

〇 脚の長さの左右差が一瞬で整う『足落とし』


① 『足落とし』の効果の秘密

『足落とし』は、
脚の長い側ー腸骨の前傾側と、
脚の長さが短い側ー腸骨の後傾側で、
足の落とし方を変えることで、
脚の長さの左右差を整えます。


〇 腸骨の前傾側(長足側)は、
太ももの前側の筋肉をストレッチしながら
腸骨を前傾させるように動かし
最後に、足の甲を床にポンと落とします

反射により腸骨は後傾方向に矯正され、
脚は短くなります。
 
〇 骨盤の後傾側(短足側)は、
太ももの後ろ側の筋肉をストレッチしながら
腸骨を後傾させるように動かし
最後に、足の裏を床にポンと落とします

反射により、腸骨は前傾方向に
矯正され、脚は長くなります。
 

  ②    脚の長短、骨盤の前傾・後傾の判定  


自分の脚の長短がわかりづらい場合、
腸骨の前傾・後傾を判定する方法で
判定するとよいでしょう。

〇 腸骨の前傾側(脚の長い側)
を調べる

椅子に腰かけて脚を組む時、
脚を深く上に組む側は、腸骨が前傾しています。

いつも
右脚を上にしないと脚を組めない人は、
右の腸骨が前傾していると言えます。

〇 腸骨の後傾側(脚の短い側)
を調べ

立て膝をした時、
膝を立てやすい側は、腸骨が後傾しているといえます。

いつも左膝を立て、
右のすねを床につけている、あるいは、
右の股関節を開いている人は、
左の腸骨が後傾していると言えます。

③ 足落としのやり方

・用意するもの

牛乳パックで作った椅子、正座椅子、
踏み台など低めの椅子



① 右重心タイプ(左脚短・右脚長)の足落とし

 
A 右側

①     左立て膝をして座り、
右膝を曲げて床につけ、
右手で右足首の甲側を持つ
 

②    左手で 右腸骨の前側の凸を固定して、
右膝をつけたまま
息を吐きながら 右足を持ち上げる

③    息を 吐ききったら 
右足の甲を ポンと床に落とす 


脚の長い側
ー腸骨前傾側の「足落とし」

B 左側

① 左立て膝をして座り、
右膝をつけたまま
右手で左鼠径部の上を押さえる

② 左手で、左膝蓋骨(膝の皿)の下を引っ掛けて、
息を吐きながら 左股関節を深く曲げ、
足を持ち上げる

③ 息を吐ききったら 
左足の裏を ポンと床に落とす
 

※ 脚の短い側の「足落とし」をする際、
逆足の膝頭を床についた方が
安定する。〔写真では立てている〕

脚の短い側
ー腸骨後傾側の「足落とし」
右膝をついたまま行った方が
安定します


②   左重心タイプ (右脚短・左脚長)の足落とし  


A 左側

① 右立て膝をして座り、
左膝を曲げて床につけ、
左手で 左足首の甲側を持つ 

② 右手で 左腸骨の前側の凸を固定して、
左膝をつけたまま
息を吐きながら 左足を持ち上げる

③ 息を吐ききったら 
左足の甲を ポンと床に落とす


脚の長い側
ー腸骨前傾側の「足落とし」


B 右側

① 右立て膝をして座り、
左膝をつけたまま
左手で右鼠径部の上を押さえる

② 右手で右膝蓋骨(膝の皿)の下を引っ掛けて、
息を吐きながら 右股関節を深く曲げ
足を持ち上げる

③ 息を吐ききったら 
右足の裏を ポンと床に落とす 

※ 
脚の短い側の「足落とし」をする際、
逆足の膝頭を床ついた方が
安定する。〔写真では立てている〕


脚の短い側
ー腸骨後傾側の「足落とし」
左膝をついたまま行った方が
安定します


※脚の長さのわかる人は、
長座状態で足を合わせて
あらかじめ調べておいて、
「足落とし」をした後の変化を確認してください。

どちらの足落としも、
床に落ちた時に「ポン」と
音がするくらいに、意識して
止めないようにスムーズに
落としてもらうのが
効果のポイントです。 

片側の足落としが効いたからといって、
逆側も同じように足の甲を落とすようなことは
くれぐれもしないでくださいね。


#創作大賞2026 #オールカテゴリ部門





いいなと思ったら応援しよう!