経理事務が、何役もこなす会社(夏祭りとクリスマス)
一番、長く勤めた会社での話です。
カーディーラーの店舗が、いくつかあり、別棟に、本社があって、私は、そこで、
経理事務、兼、人事、兼、本社業務——
いわば “何でも屋” のような仕事をしていました。
カーディーラーと聞くと、ガラス張りの明るい店内、音楽が流れて、商談中にはコーヒーが出てくる。
そんな華やかなイメージがありますよね。
でも私のいる本社は、少し違いました。
事務室と台所、その隣が社長室。
静かで、どちらかというと地味で、淡々と仕事をこなす毎日です。
——ところが。
夏と冬になると、
その空気が一変するんです。
「日頃の感謝を込めて」
夏は、夏祭り、冬は、クリスマスパーティ。
そして、暗黙の了解で、事務の私も “戦力” として駆り出されます。
夏祭りは、
店舗の駐車場を使った本格的な縁日。
たこ焼き、スーパーボールすくい、くじ引きなどなど。
営業さんも事務員も浴衣に着替えて、お客様をお迎えします。
中でも、圧巻だったのが、たこ焼き。

屋台は、営業さんの知り合いから借りた本格仕様。
そしてなぜか——
社長と私が、たこ焼き担当。
たすき掛けをして、真夏の炎天下。
「どんだけ〜焼くの?」というくらい、ひたすら焼き続けました。
首に、タオルを巻いても追いつかない汗。
浴衣は、びしょびしょ。
翌日、鏡を見ると頬が、真っ赤で、
日焼けではなく、鉄板の熱で “焼けていた” んです。
こんな経験、
後にも先にもあの時だけでした。
そして季節は、冬へ。
今度は、
クリスマスパーティです。

コンセプトは、まさかの「ディスコ」。
ガラス張りの店内を黒い布で覆い、
ミラーボールにカラオケ機材までレンタル。
夕方から始まるパーティの打ち合わせに、
なぜか、また、経理事務の私が、参加していました。
——なぜ?
と思いながらも、やるからには楽しんでもらいたい。
そんな気持ちで、ああでもない、こうでもないと意見を出し合います。
そこで、決まったのが、当時、人気だった
男女の集団お見合い企画。
営業さんたちが、事前に、お客様に声をかけて、参加者を集めてきていました。
そしてパーティのラスト。
男女5対5の “お見合い企画” がスタート。
——ここで、まさかの展開です。
司会進行、経理事務の私 (なんで~?)。
アシスタントに営業さんがついてくれて、
マイクを回しながら、自己紹介やインタビュー。
「彼氏いない歴〇年です」なんてやりとりに、場内がどっと沸きます。
普段の私は、
事務所で静かに仕事をするタイプ。
営業さんたちとも、せいぜい、一言二言交わす程度。
たぶん「真面目な経理の人」という印象だったと思います。
——ええ、その通りなんです。普段は!
でも、誰もやりたがらないことを
「やってくれないか」と頼まれると、つい、引き受けてしまうんです。
関西で育って、吉本新喜劇やお笑い番組を見てきたせいか、
見よう見まねで、ツッコミも、スカしも、なんとなくできてしまう。
いざという時だけ、別の自分が出てくるんですよね。
そして、クライマックスの告白タイム。
男性が、
意中の女性の前に立ち、手を差し出す。
そこに、別の男性が「ちょっと待った」と割って入る。
どちらを選ぶのか——
会場の空気が、一気に張りつめます。
遠い記憶ですが、たしか2組くらい成立して、
拍手に包まれて終わったように思います。
夏は、たこ焼き、冬は、司会進行。
当日は、当然、経理の仕事なんて一切できません。
正直、どちらも、へとへとになるくらい疲れました。
でも、あんな経験、なかなかできるものじゃありません。
静かに数字と向き合っていたはずの私が、
気づけば、人前で話している。
「私、こんなこともできるんだ」
そう思えた、少しだけ特別な時間でした。
たぶん、あれは、火事場の馬鹿力?みたいなものだったんだと思います。
ちなみに12月は、ほとんど休みなしでした。
今なら確実にアウトやな、ですね笑。
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