「泉」詠の出来るまで ~和歌の推敲記~
隠岐後鳥羽院和歌大賞にて古事記編纂1300年記念大賞を頂いたのを機に、梶間和歌、冷泉家時雨亭文庫に入会いたしました。
(大賞関係の記事はこちらに連載しております)
そちらの年4回の会報に、題詠の和歌を投稿するコーナーがございます。
7回目の投稿歌は選から漏れましたが、推敲過程の公開は広く皆様のお役に立てるかと思いますので、いつもと同じようにnoteにて公開いたします。
和歌をお詠みになる方の参考や刺激としてはもちろん、
歌詠みさんでなくとも、いち歌人が歌を詠み、推敲する過程に触れてみたいという方はぜひお楽しみくださいませ。
「泉」詠の出来るまで ~和歌の推敲記~
会報「志くれてい」掲載歌
なし
おおまかな推敲過程
・題の発表とあわせて付された、冷泉貴実子先生の解説を読み込む
・各種定数歌などで「泉」詠の先例を読み込む
・「泉」題で用いるべき語や頻出する掛詞などを把握する
・完成度を気にせず歌を詠む、詠みまくる
・推敲と削除を繰り返す
こちらもご参照ください。
第1段階
手にむすぶ岩間の清水松陰は夏をも知らぬ風ぞ吹きける
むすぶ手の袖もすずしくかはるかな入相ひびく山の井の水
木の下はすずしかりけり山の井に袖をぬらして日をくらしつる
秋ちかし木の下陰に結ぶ手のしづくに袖ぞ濡れまさりける
ここかしこ夏はよそにて結ぶ手のしづくに濁る夜半の月影
月影も涼しかりけり結ぶ手に消えかつ見ゆる山の井の水
立ち寄れば涼しかりけり山の井の飽かで湧き出づる松の下陰
わかれつる人の面影見え見えでしづくに濁る山の井の水
影にごる岩間のしみづ夜風ふけてかたぶき果つる夏の夜の月
岩枕谷のしみづにまどろめば秋ちかからし風の夕暮れ
岩枕夏をわするる風ふけば去るも苦しき山の井の水
まずは数詠むことがだいじ。
第2段階
手にむすぶ岩間の清水松陰は夏をも知らぬ風ぞ吹きける
むすぶ手の袖もすずしくかはるかな入相ひびく山の井の水
木の下はすずしかりけり山の井に袖をぬらして日をくらしつる
秋ちかし木の下陰に結ぶ手のしづくに袖ぞ濡れまさりける
ここかしこ夏はよそにて結ぶ手のしづくに濁る夜半の月影
月影も涼しかりけり結ぶ手に消えかつ見ゆる山の井の水
立ち寄れば涼しかりけり山の井の飽かで湧き出づる松の下陰
わかれつる人の面影見え消えてしづくに濁る山の井の水
影にごる岩間のしみづ夜風ふけてかたぶき果つる夏の夜の月
岩枕谷のしみづにまどろめば秋ちかからし風の夕暮れ
木下やみ夏をわするる風ふけば立ち去りがたき山の井の水
微調整です。
第3段階
むすぶ手にしみづを清み松かげは夏をも知らぬ風ぞ吹きける
むすぶ手の袖もすずしくかはるかな入相ひびく山の井の水
木の下はすずしかりけり山の井に袖をぬらして日をくらしつる
秋ちかし木の下陰に結ぶ手のしづくににごる山の井の水
ここかしこ夏はよそにて結ぶ手のしづくに濁る夜半の月影
月影も涼しかりけり結ぶ手に消えかつ見ゆる山の井の水
立ち寄れば涼しかりけり山の井の飽かで湧き出づる松の下陰
わかれつる人の面影見え消えてしづくに濁る山の井の水
影にごる岩間のしみづ小夜ふけてかたぶき果つる夏の夜の月
岩枕谷のしみづにまどろめば秋ちかからし風の夕暮れ
木下やみ夏をわするる風ふけば去るもくるしき山の井の水
ひとりすむ深山の庵の松かげの清水すずしく月出でにけり
むすぶ手に夏も知られぬ松かげにかたへすずしき風ぞ吹きける
さすがに「夜風ふけて」の新古今アクロバティックは避けて穏当な表現に。
その他微調整したり、新たに詠み加えたりしました。
第4段階
秋ちかし木の下陰に結ぶ手のしづくににごる山の井の水
月影も涼しかりけり結ぶ手に消えかつ見ゆる山の井の水
立ち寄れば涼しかりけり山の井の飽かで湧き出づる松の下陰
わかれつる人の面影見え消えてしづくに濁る山の井の水
影にごる岩間のしみづ小夜ふけてかたぶき果つる夏の夜の月
岩まくら谷の清水にまどろめば秋ちかからし風の夕暮れ
木下やみ夏をわするる風ふけば去るもくるしき山の井の水
ひとりすむ深山の庵の松かげに清水すずしく月出でにけり
むすぶ手に夏も知られぬ山の井のかたへすずしき風ぞ吹きける
微調整しつつ、絞りに掛かりました。
第5段階
秋ちかし木の下陰に結ぶ手のしづくににごる山の井の水
月影も涼しかりけり結ぶ手に消えかつ見ゆる山の井の水
わかれつる人の面影見え消えてしづくに濁る山の井の水
影にごる岩間のしみづ小夜ふけてかたぶき果つる夏の夜の月
岩まくら谷の清水にまどろめば秋ちかからし風の夕暮れ
木下やみ夏をわするる風ふけば去るもくるしき山の井の水
松かげはかたへすずしき風ぞ吹く夏も知られぬ山の井の水
第6段階
秋ちかし木の下陰に結ぶ手のしづくににごる山の井の水
月影も涼しかりけり結ぶ手に消えかつ見ゆる山の井の水
岩まくら谷の清水にまどろめば秋ちかからし風の夕暮れ
木下やみ夏をわするる風ふけば去るもくるしき山の井の水
会報「志くれてい」投稿歌
月影も涼しかりけりむすふ手に消えかつ見ゆる山の井の水
岩まくら谷のしみつにまとろめは秋ちかからし風の夕暮れ
濁点を消し、こちらの2首を投稿しました。
2023年5月の「泉」詠
秋ちかしあふぎの風も忘るべくいづみに袖を濡らす我が背子 梶間和歌
「堀河百首」チャレンジで2023年に詠んだものです。ご参考までに。
和歌をお詠みになる方の参考になりましたら幸いです。

和歌の推敲記
和歌物語の維持メンバーになる
noteをはじめとした梶間和歌の和歌活動は、
メンバーシップ・チップ・寄付や有料コンテンツの購入などで支えてくださる皆様のお力で成り立っています。
お寄せいただいたご支援で生活を回しながら、和歌(特に京極派和歌)の発信をし、
また和歌にゆかりのある土地を旅してレポートを書いたり、歴史の勉強をしてエッセイを書いたりしてきました。
皆様のご支援があってこそ、多くの記事やコンテンツを無料または低価格で届けてこられましたし、これからも届け続けることができます。
「梶間和歌の活動や生き方に意義を感じている」
そして
「経済的に余裕がある」
という方には、この活動の維持メンバーとしてご参加いただけましたら幸いです。
noteのチップやメンバーシップなど、 ご無理のない形でお力添えください。
寄付という形に躊躇のお気持ちがありましたら、低価格のコンテンツのご購入という形でも等しく有難いです。
もちろん、あなたが作品や記事を読んでくださること、私の発信を受け取ってくださること、それ自体が私にとって大きな力。
経済的に余裕はないが価値や意義を感じている――そんな皆様からのスキやシェアなどにも、あらためて、心より感謝申し上げます。
皆様に頂いた支えを、これからも和歌をはじめとした人文知の発信という形で社会に還元してまいります。
今後とも、あなたはあなたの領分において、私は私の領分において、ともに世界を美しくしてゆきましょう。
この記事を書いた人


いいなと思ったら応援しよう!
応援ありがとうございます。頂いたサポートは、書籍代等、より充実した創作や勉強のために使わせていただきます!