硬直した基準から成長した新しい基準へマインドセット #36
「メンタル」と「マインド」の違い
現代では、「メンタル」や「マインド」という言葉を日常的に耳にします。
なんとなく同じように使われがちですが、私はこの2つを少し違うものとして捉えています。
まず「メンタル」とは、心や精神そのものというよりも、
その時々の“状態”や“調子”のこと。
だからこそ、メンタルはとても繊細で、不安定です。
たとえば、失敗が続くとどうなるでしょうか。
自信を失い、ネガティブな思考に引っ張られ、さらに悪い結果を招きやすくなる。
一方で、成功が続けばどうか。
自信が生まれ、前向きな状態になり、良い結果を引き寄せやすくなる。
誰もが、メンタルをポジティブに保ちたいと思うはずです。
しかし、実際にはそれが簡単ではないのも事実です。

「感情(エモーション)」との関係性
ここで、もう一つ大切な視点があります。
それが「感情(エモーション)」です。
怒りや悲しみ、喜びといった感情は、
その瞬間ごとに生まれては消えていく“一時的な波”です。
そして私は、こう捉えています。
マインドが感情を生み出し、
その積み重ねがメンタルをつくる。
だからこそ、メンタルを安定させるためには、
感情そのものに振り回されないことが重要になります。
たとえば、誰かに怒られたとき。
「怒られた」というのは事実ですが、
「悔しい」「腹が立つ」というのは感情です。
この2つを無意識に混ぜてしまうと、
感情に引っ張られてメンタルは大きく揺れます。
逆に、
「これは事実で、これは感情だ」と切り分けて捉えるだけで、
不思議と冷静さを取り戻せます。
マインドフルネスの状態に導く
さらに言えば、感情は“コントロールするもの”というより、
“観察するもの”です。
今、自分は何を感じているのか。
ただそれに気づく。
いわゆるマインドフルネスの状態です。
感情に飲み込まれるのではなく、
一歩引いて見つめる。
それだけで、メンタルの揺れは確実に小さくなります。
感情は「行動」からも整えらる。
そして面白いことに、感情は「行動」からも整えられます。
この身体の状態、つまり行動によって感情がコントロールされることをエンボディメントといいます。
軽い運動や、ゆっくりとした呼吸、あるいは、笑顔。
こうしたシンプルな行動は、思考を介さずに心を整えます。
つまり、
マインド → 感情 → メンタルだけでなく、
行動 → 感情 → メンタルというルートもあるということです。
マインドとは何かー
では、「マインド」とは何でしょうか。
マインドは、心や精神そのもの。
そしてそこから派生する「マインドセット」とは、
• これまでの経験
• 時代背景
• 信念や価値観
• 判断基準
• 無意識の思い込み
こうしたものによって形づくられた、“自分にとっての当たり前”の基準です。
つまり、メンタルはこのマインドセットという土台の上に存在している——
私はそう考えています。
ブリックスウォール(煉瓦の壁)
ここで、ひとつ有名な話があります。
1923年、陸上競技の1マイル(約1600m)走で、
37年ぶりに記録が更新されました。
しかし当時、世界はこう断言していました。
「4分の壁は絶対に破れない」
専門家ですら、それを“ブリックウォール(煉瓦の壁)”と呼び、
人類には不可能だと信じていたのです。
実際、その後30年間、誰一人としてその壁を破ることはありませんでした。

しかし1954年。
イギリスの大学生、ロジャー・バニスターがその常識を覆します。
記録は、3分59秒4。
彼は「できる」と信じ、当時まだ一般的ではなかった
科学的トレーニングを取り入れ、挑戦を続けました。
つまり、“不可能”という前提そのものを突破したのです。
硬直した基準から成長した新しい基準をつくる
そして本当に興味深いのは、ここからです。
バニスターが4分を切ったその後、
わずか1年で37人もの選手が4分を突破。
さらに翌年には、
300人以上がその壁を越えました。
30年間、誰も破れなかった壁が、です。
これは何を意味しているのでしょうか。
それは、「限界」だと思っていたものが、
実は“思い込み”だったということ。
つまり、
・ 現状維持に固執した「硬直したマインドセット」から
・ 成長を前提とした「新しいマインドセット」へ
基準そのものがマインドセットされたということです。
“できない理由”は、“できる前提”へと変わる
人は無意識のうちに、
「今のままでいたい」という心理に引っ張られます。
しかし、変化の激しい現代において、
現状維持は“衰退”とほとんど同じ意味を持ちます。
だからこそ大切なのは、
目の前の「あたりまえ」に妥協しないこと。
そして、自分自身で新しい基準をつくり続けること。
メンタルは揺らぎます。
でも、マインドセットは鍛えることができる。
そのマインドの土台が変わったとき、
“できない理由”は、“できる前提”へと変わっていきます。
