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「伝えたつもり」で終わらないために ― ペーシング #137

■ コミュニケーションとは何か

組織づくりの本質は信頼です。

人は、ひとりでできることには限界があります。
だからこそ、同じ目的を持つ人たちと集まり、組織をつくります。

しかし、目的が同じでも、人はそれぞれ違います。
考え方も、価値観も、進め方も違う。

だからこそ、異なる価値観を超えて、いかにして信頼関係を築くための「コミュニケーション」が大切になります。

■ コミュニケーション質とは

しかし実際には、ここでズレが生まれます。
いわゆる「ミスコミュニケーション」です。
それは主に、次の3つのフィルターによって起こります。

● 省略:すべてを伝えていない
● 歪曲:自分の解釈を加えてしまう
● 一般化:一部を全体のように扱う


このフィルターを通ることで、本来の情報は簡単に歪んでしまいます。
だからこそ、これらを意識的に取り除くことが、コミュニケーションの質を高める第一歩になります。

■ 「言葉だけ」では、ほとんど伝わらない

コミュニケーションには有名な考え方があります。いわゆる「メラビアンの法則」です。

● 言語(Verbal):7%
● 声のトーンや話し方(Vocal):38%
● 表情や態度(Visual):55%


つまり、言葉の内容は、たった7%しか影響しないとも言われています。
もちろん、業務連絡のようなシンプルな情報であれば、メールなど言語だけでも成立します。
しかし、人が関わる場面、特に感情が絡む場面では違います。

「何を言うか」以上に、「どう伝えるか」が重要になります。

■ 信頼を生むシンプルなスキル「ペーシング」

ノンバーバル(非言語)の中でも、特に重要なのがペーシングです。
ペーシングとは、相手のペースに自分を合わせること。

例えば、
・ 相手の話すスピードに合わせる
・ 声のトーンや大きさを調整する
・ 相手の言葉を拾って返す

こうした小さな同調が、相手に「理解されている」という感覚を生みます。
そしてそれが、安心感や信頼関係につながります。

逆に、早口の相手にゆっくり返す、静かな相手に強く詰めるなどのようにテンポが合わない、あるいは、必要以上に合わせ過ぎると、相手も違和感を覚えます。
そこで、例えば、2割程度を目安に合わしてみることをオススメします。
これだけで、相手は無意識に距離を感じます。

■ 自分を適切に見せる「自己開示」

ペーシングは有効なスキルですが、それだけでは表面的な関係にとどまることがあります。

ここで重要になるのが自己開示です。
組織においては、互いに自己開示し合うことが重要です。

ここでいう自己開示とは、相手が心を開きやすくなるように、自分自身を適切に見せることです。

ただし、勘違いしてはいけません。
・ 個人情報をむやみにさらすことではない
・ 意味のない話をすることでもない
・ 自分本位な情報を押し付けることでもない
これらはむしろ逆効果で、相手の負担になります。

人は、相手のことが見えないと不安になります。

例えば——
・ 自己紹介をしてもらったとき
・ 出身地や趣味の話を聞いたとき
・ 日常の一部に触れたとき
こうした情報があるだけで、自然と警戒心はやわらぎます。

一方で、良く見せようとして自分を繕うと——
その違和感は相手に伝わり、「本音が見えない人」という印象を与えてしまいます。

■ ペーシング × 自己開示

ペーシングは「相手に合わせる技術」。
自己開示は「自分を見せる姿勢」。
この2つが揃ってはじめて、コミュニケーションは深まります。

・ 合わせるだけ → 表面的な関係
・ 話すだけ → 押し付けになる

だからこそ大切なのは、自分を開きながら、相手に歩調を合わせることです。

例えば、人と話すとき、
・ 自分が先に話してしまう
・ 相手の話を遮る
・ 一方的に話し続ける
・相手に話す余地を与えない
こうなると、相手は「理解されていない」「聞いてもらえない」と感じてしまいます。

結果として、信頼は生まれません。
それは「伝えている」のではなく、押し付けている状態です。

コミュニケーションは、一方通行では成り立ちません。
相手が投げたボールが少し暴投でも、まずは受け止める。
そして、相手が受け取りやすいボールを投げ返す。

信頼とは、そんなキャッチボールの積み重ねから生まれるのだと思います。

■ ペーシングは「迎合」ではない

ここで重要なのは、ペーシングは迎合ではない、ということです。

・ 自分の考えを大切にする
・ 相手の状態に合わせて伝える

これは、アサーション(健全な自己主張)の考え方でもあります。

組織は、互いに補い合うことで成り立ちます。
しかし、自分のペースだけで進めようとすると、組織は機能しなくなります。

大切なのは——
・ 相手の状態を見ること
・ そして、自分の状態を知ること

■ 信頼で動く組織の第一歩

英語で次のようなことわざがあります。
“You can lead a horse to water, but you can’t make it drink.”
これは、「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない。」という形で知られています。

人間を馬に喩えることをご容赦いただいた上で、「機会や条件を与えることはできても、最終的にそれを受け入れるかどうかは本人次第である」という意味です。

ペーシングの本質はシンプルです。
自分を大切にしながら、相手と歩調を合わせること。
そしてそこに、自己開示が加わることで、相手は受け入れてくれる可能性が高まり、信頼はより深くなるはずです。

「伝え方」を磨く前に、「関わり方」を見直してみる。
それが、信頼で動く組織への第一歩になるはずです。

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