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その後のTheo(テオ)③〜三日後のお話〜

 人形の話というものに、些か抵抗のある方もおられよう。無縁の世界、馴染みのないものに対して、人は心のどこかでバリアを張る。

 しかし、そう思いつつも、Vがこのところのダッシュボードの傾向を眺めてみると、ビューの伸びはいつもと変わらない。寧ろ早く伸びているように見える。

 いつも読んでくださる方々のおかげだと感謝する。また、記事を投稿すると必ずマガジンへ追加してくださる方々がいらっしゃる。その方々のおかげだろう。

 『あの人が勧める記事ならば』、との信頼から、気づけばVの人形に関するエッセイをうっかり読んでしまった人々を想像し、どうもすみません、とVは日本の方向に頭を下げる。

 『謝るほどのことでもない? 趣味というのは人それぞれなのだし』と思いつつ、やはり大人になると、「まだお人形遊びをしてるわけ?」と小馬鹿にしたり、揶揄する人もいるわけで、人形に関しては、あまり人に本気で語ってはいけない話題の一つとして避けてきたのだった。

 男兄弟の中で育ったとか、親が興味を示さなかったので買ってもらったことがないとか、全く人形と関わらない人生の方も多くいらっしゃることだろう。
 それでもアニメのフィギュアなどは、いつの頃からか世の中に溢れた。現代は、男性でも人形というものに対して抵抗がなくなった時代である、とは思う。
 それでもno+eに書くのはどうかと多少抵抗はあったのだ。

 いつも記事を読んでくださる方々は、他のテーマの記事同様に受け止めてくださったようだった。

 またそもそも書き始めたのは、武智倫太郎氏のツンデレ童話にソフィアというマッチ売りの少女が登場していたので、「うちにもSophiaがいます」とコメントさせていただいたところ、
「20年前にヴェネツィアで買ったビスクドールの名前が『ソフィア』だったのでしょうか?」
というご質問をいただいたことからだった。



 まさかそのVのコメントに対し、武智氏からその内容の返信が戻ってくるとは思っていなかった。
 Vの家にいる人形の名前に興味を持つ人がいる?!という意外さに驚いた。

 このそもそもの書き始めた理由については、既に人形の記事の中にも書いていることだが、同じ内容を反復することの意味を、昨日武智氏が論じていらっしゃった。

 Vはなるほど! と思い、再び書いてみた次第である。Vは学習したら実践するのだ(๑˃̵ᴗ˂̵)


どれも人形という定点へ戻りながら、角度だけを変え、意味を更新している。だから反復が停滞ではなく観測になっている。

『反復はネタ切れではない』より抜粋


 更に本日、Vの頭の中に突然落ちてきた人形の名前を例として、そうした閃きを《自発的想起》と心理学的に論じられ、AIのハルシネーションとの関係性を解説されている。
 こうした内容は大変面白く、興味が尽きない。ご一読をお勧めする。


 

 さて、今朝目覚めると、長女からLINEが送られて来ていた。

 土曜に家に来た男の子の人形テオの写真を送っておいたので、その返事。このテオの顔が、娘の長男に大変よく似ているのだ。


Theo


 娘も「確かに雰囲気がよく似ている」と書いていた。
 なかなか会えない孫の顔を見ているようで、Vも嬉しくなる🎶

 そして、娘は最近のVの人形の記事を読んだとのことで感想をくれた。

 


Sophia

no+e読んでてこの写真出てきた時、
「ママじゃん!」
って思ったよ。
パパが間違えるのわかるよ。

すごく似てる。
西洋のお顔だけど、どこか控えめな雰囲気もあって。
ママみたいだよ。
びっくりしたの。

長女からのLINEより


 OはSophiaの胸元アップの写真を見て、Vと間違えたわけだが、それは口元から下の写真であったから、
『そんなこともあるのね。まぁ唇の彩色がVの使っている口紅の色と似てたから』
と思ったのだが、娘はこの顔全体の写真を見てびっくりしたと言う。

 ‥‥似ているだろうか?
 Oといい、長女といい、Vの顔を見ているんだから見ていないんだか。何か誤認識があるような気がする‥‥今度次女の見解も訊いてみよう。


    ✨✨🤹‍♂️✨🤹‍♂️✨🤹‍♂️✨✨


 
 さて、Vは今朝も朝食とOのお弁当を作っていた。その最中、冷蔵庫のドレッシングの瓶を取り出した時、横にあった小さいビールの瓶が滑り落ちて、割れて粉々になってしまった。

 ビールはドアの部分に立てておいたのだが、冷やしておいても一向にOは飲まないし、牛乳のパックの蓋の締まりが悪かったので(この蓋は捻るタイプのものだが、一旦開けてしまうと毎回まともに締まらない。日本製の蓋が懐かしい)、立てておくしかなかった。その為入り切らなくなったので、醤油の瓶などを寝かせて入れてある棚に移したのだった。

 ビールが滑り落ちて割れた、それはそこに入れたVのミスである。しかし、何日もそこにあったのに、何故今なのだ。お弁当と朝食を作っている、何故この朝の一番忙しいタイミングで割れるのだ‥
 水分を拭き取り、粉々に割れて散ったガラスを集めながら、Vの頭にあったのは、『やっぱり』という確信だった。


 土曜にアンティークマーケットでテオを買った。車に戻って、それからペットショップに行く予定だった。それが、車を発進させた途端、OもVも車が変な感じに振動していることに気づいた。こんな事は初めてだった。
 見ると、メーターパネルのオレンジ色の警告灯が点滅していた。Vはこのマークは見たことはあるが、トラブルの経験はない。


エンジン警告灯



少し先にあったガソリンスタンドに車を入れ、取扱説明書で確認すると、エンジン警告灯であった。

エンジン警告灯(エンジンチェックランプ)は、車(エンジンや排気システム)の電子制御システムに異常が発生したことを知らせる黄色/オレンジ色のランプです。直ちに停止する必要はない場合が多いですが、エンジンの不調、燃費悪化、最悪の場合はエンジンストールに繋がるため、速やかに安全な場所に停車し、ディーラーや整備工場で診断を受けてください。

AIによる概要


 スタンドで確認すると、「業者を呼んで輸送しても、土曜なのですぐ直すとは思えない。おまけに高額である」とのことだった。
 この警告灯が点いても、2時間くらい走っても大丈夫だろうとのことだった。その場所から家までは30分ほどである。

 車の天井のボタンを押せば、BMWのコールセンターと直通で会話ができて、GPSで車の位置は確認され、工場の手配や代車を用意してもらえる。
 そうしても良かったのだが、この状態は緊急とはいえない。事故であったなら、迷わずすぐ利用するが、まだ車は動くし、この程度のトラブルで利用するのは申し訳ない、と結論づけた。
 月曜に、車検に出した時の修理工場に頼むことにして、そのまま家まで帰ることにしたのだった。


 あちらこちらに整備工場がある日本と違って、これまで全く車を持ち込めるようなところは見たことがない。ガソリンスタンドにも整備ができる工場
が併設されているところはまずない。スタンドでやってもらえるのは、せいぜいエンジンオイルや冷却水を入れるくらいのことである。

 無事に家まで帰れたものの、Vの頭に浮かんだのは、「行く時は全く問題なかったのに、人形を買った途端、こういうトラブルが突然起きた」ということだった。

 口にしても仕方ないので、Vは黙ってはいたが、人形を買った直後に、色々なトラブルが数日続いて起こったことは、これまでに何回か経験がある。

 人に話したところで、そんな事は偶然だ、と鼻で笑われるようなことだ。親に話したことがあるが、「馬鹿な事を言っている」と叱られただけだった。
だが、実際にそういうことが起きたのだ。


 Vはそういう時、人形との相性が悪いのだ、と感じていた。家に来るべき子ではなかったのだ。
 それ以上悪いことが起きると困る、と不安になった。
 子どもの頃は折角買ってもらった人形を捨てるわけにいかないので、人形に対して、悪さをしないように、不幸を招かないように、とよく言い聞かせたり、洋服を変えてみたり、周りにお花を飾って環境を変えたり、仏壇に祈ったり、いろいろとやってみた。

 よくわからないが、とにかく何かそういう事をしなければいけない、と誰にも言えないまま、子供心に緊張感を持ったのだった。
 数日続けると、トラブルは収まった。祈りは通じたのだと確信した。

 大人になってからは、たまにこうしたトラブルが起きると、子どもの頃のような解決方法を試してみたり、どうしようもないと判断した場合は、最終的に人形を手放した。
 何日も連続して怪我をしたり、体調を崩したり、仕事で思いもよらぬミスが連続して起きた為だ。

 今回は、突然起きた車のトラブルに続き、翌日は足の上に物を落とし、その翌日は昨年春に痛めた足の同じ部位を、また捻って痛めた。
 こうして何か起こる時は、足に怪我をする。過去のトラブルもそうだった。足に来るのだ。


 そして翌日の今朝、朝の一番忙しい時にビール瓶が落ちて割れて、足の裏にかけらが刺さった。スリッパを履いていたのにも関わらず、ガラスのかけらはスリッパと足裏の間に入り込んだのだ。

 台所の床は人工大理石なので、水分がこぼれていると大変滑る。何度も転びそうになりながら雑巾で拭き取り、大きなガラスを片付け、掃除機をかける。しかし小さなかけらは家具の近くにも飛び散っており、掃除機だけでは取りきれない。這いつくばって雑巾をかけ、小さなかけらを更に3個見つけた。


 危ないので掃除を先にするしかなく、おかげでお弁当は、Oが出かける2分前にやっと仕上がった。車は修理に出しているので、Oは適切な時刻のバスに乗らなくてはいけないので、大忙しだった。

 Oが出かける間際、つい「人形を買った途端、あれこれ起きた」と、口を滑らしてしまった。Vには長い年月の間に、何回か経験があるからだ。
 予想通り、Oは「そんなのたまたま起きただけだよ〜」と笑って出かけて行った。

 やっと一息ついたVは朝食を食べながら、さてどうしたものかと考えた。テオを手放す気は全くない。とすれば改善策を考えねば。
 テオを眺めていると、まず手が痛そうだ、と思った。自立の為のスタンドをつけているが、コーラの箱を積んだ板の上に立っており、足元はゴムでスタンドを固定、箱の両隅に付いている紐で手を固定するようになっている。

 ふと、もう木箱や手押し車はいらなくない? と思った。コラボ商品なので、そのままセットにして、マーケットでも家でも同じように飾ってあったが、別にそうする必要もない。

 製造されてから、何年も木箱と手押し車のところに括り付けられていて、一緒に埃をかぶっていたわけだ。
 また、幼い子供の人形なのに、コーラを運ぶお手伝いのお仕事をさせられている設定であった。良い洋服を着ているものの、労働している!

 Vは、テオの手を固定している紐を外し、スタンドからも外して、抱っこした。箱はもう不要だ。コラボ商品だけど、別に関係ない。


「ねえ、テオ、もう自由になって、この家の子になったんだから、これからは楽しくのんびり暮らせばいいんだからね。
 初めて来たお家で、最初は慣れなくて嫌だったかもしれないけど、みんなと仲良く暮らしていこうね。
 いたずらはしないでね。怪我したり、車が動かないと困っちゃうからね」
とよく言い聞かせる。

 そして、初日と同様、もう一度先輩の人形たちに挨拶させる。犬にも改めてご挨拶。犬はクンクンして、テオの手をちょっと舐めた。「仲良くしてね」

 箱にセットしていた時は、左側の顔ばかり見ていたが、一人で立っているテオはそれまでとは違う表情を見せた。正面や右側から見ると、穏やかに楽しげな顔である。


 どの位置から見ても、Vとは視線が合わない。何かあらぬ方を見ている。何かを考え込んでいるのか、或いは全く何も考えていないような表情に見えるのは、視線が虚空を向いている為だ。子供がぼんやりしている時に、よくする表情。

 長女のところの孫と顔がよく似ているだけではなく、あの子がいたずらして叱られた後、あらぬ方に視線を向けて、叱られている現実が過ぎ去るのを待っているような、そんな表情にも見えて笑える。

 コーラの木箱から離れて、一人で立っているテオの顔は、どう見ても清々した様子で楽しげだ。
 テオとこの家の相性が良いかどうか、はっきりわからないけれど、Oは、
「こんなに可愛がってくれる家はないよ」
と今朝話していた。


 もっと良い相性の家は他にもあったかもしれないけれど、少なくともVはテオを綺麗な姿に戻し、自由な身にさせた。それだけでも満足してくれたと思う。

 何の保証も確信もないけれど、明日からはもうトラブルは起きない気がする。何となく。

 テオは今朝まで飾られていた棚から移動し、他の人形もテオと共に移動することになった。

 同じマーケットで昨年買った、小さな民族衣装の子が二人いる。スロバキア辺りの衣装の子とオーストリアの衣装の子だ。オーストリアの子の民族衣装
は、ドイツやスイスの衣装とも似ているが、胸元の装飾が繊細で、オーストリアのものだとわかる。


 この二体は、他の国の衣装の子たちと箱に入って売られていて、衣装が特徴的で面白いと思ったものの、他の人形は手が取れたり、かなり痛んでいた。この二体は足を少し修理すれば大丈夫そうだったので、連れて帰った子たちだった。

 見ると、この子たちは、テオのそばに置かれていた、もう一つの手押し車とサイズ感が合いそうだ。乗せてみた。

「あら、私たちにぴったりよ♪ 」
「乗って移動するのは楽ね!」

 二人のお姉様方は、ご機嫌で手押し車に収まった。何だか楽しそうな顔になった気がした。

 この子たちにも名前を付けてあげなくては。またカルロやテオの時のように、良い名前が頭の中に落ちて来ますように。


おほほほほ


                —了—



【あとがき】
 このエッセイを書き終えたところ、コメントをいただきました。
 ベルリンご在住の音楽家ブウスカさんが、民族衣装の二人のお人形に命名をしてくださいました。

 Vの脳には降りて来る気配はありませんでしたが、ブウスカさんのところに降りて来たという、感動のフィナーレでした💕

 金髪おさげのお姉さんはルイーゼさん、右側のお姉さんがハンナさん。ブウスカさんの同僚の方にそっくりなのだそうです🎶

 なお、この二人には、ご同僚への敬意を込めて、さん付けで呼ばせていただこうと思います。
 他のお人形はちゃん付けなのですが、この二人はルイーゼさん、ハンナさん呼びがぴったりです。

 素敵なお名前を頂戴して、二人は急に生き生きしたように見えます。元々そういう名前だったに違いありません。
 今日は良い日になりました。

 ブウスカさん、心より感謝申し上げますm(_ _)m
 



 芸術家ならではの鋭く繊細な視点と、クールなジョーク。センス溢れるブウスカさんの記事はこちら。




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