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フラッシュカットの最大火力

映像についての雑記です。以前も似たようなものを書いていました。

その道の人間ではないので素人のメモだと思ってください。
また、今回は記事内容の都合上、明滅がすごい画像ばかりですのでご注意ください。


フラッシュカットの表現手法

先日公開された学マスのMV、タイムラインでとても話題になってました。監督は山口駿氏。ここ最近「すごい映像だなぁ」と思ってクレジットを見たらいつも山口監督かフロクロ氏がいるっていうくらいの勢いがある人。少し前に天然水スパークリングレモンのCMでえげつないモーションを見せつけられたのが記憶に新しい。
僕は氏が「バンバンアカウント作成太郎」とかいうふざけた名前で作った作品がとても好きです。


それは置いておいて、今回の学マスMVにおいて間奏部分にフラッシュカット表現が使用されていました。


こういう高速で画像を表示させることで共通している要素の部分に視線が誘導され、連続した動きのように見える手法をフラッシュカットと言うそうです。
この表現自体は以前から知っていましたが名前が分かりませんでした。このサイトによるとそういう名前だそうです。

この表現手法自体は以前からあるもので、PAPERS(1991年)あたりは特に有名なんじゃないかなと思います。映像編集がテレビ・映画から個人でも作れるものになってきた時代の初期にはすでにフラッシュカットが存在していたのを鑑みると、斬新で印象的に見えるこの方法も、実は古典的な手法の応用であることが分かります。それでも古臭さを感じさせずに現代でも使われるのを見ると、いかにこの表現手法が本質的なインパクトのあるものかが伝わります。

PAPERS / 佐藤義尚(1991年)


考えてみれば不思議なもので、高速で展開する画像の一つ一つは認識できなくても、そこになにか共通する要素があれば目が無意識に見つけてしまう。たとえそれが全く別のもの(サンフェーデッドにおけるピクトグラムと指の動き)だとしても脳が補完して一連の動きと認識してしまう。脳の錯覚を逆手に取った心理的アプローチとも言えます。

最近自分が見た中では「深セン東」「今日もふたりは」で使われてたのが印象に残っています。前者は環境音のカットアップも含めた展開の気持ちよさ、後者はアニメEDの動きを原作漫画から探し出して作った面白さがあります。そして両者に共通するのが映像の要所でのみフラッシュカットを使用したこと。 すなわち最も視聴者に強い印象を与えたい局面に限定して用いられている点です。
強烈な求心力と印象を視聴者に与える、まさに最大火力の表現手法です。

【音MDM天】今日もふたりは


いざという場面でこそ使うことで視線が誘導され目が離せなくなる。製作者の描いた視覚の導線に有無を言わせず従うことになる。映像の主導権が入れ替わる瞬間です。その力を発揮するタイミングと手法において、製作者の技量が問われるところでもあります。

激しい明滅は視聴者の負担が大きく、下手するとサブリミナルにも捉えられてしまう危険もあるので、地上波の放送作品ではフラッシュカットはあまり多くないと思います。思い当たるのは「ケイゾク」(1999年)のオープニングとか。
だからこそ音MADのような個人作品やネット公開に特化したMVにおいて能力を発揮する表現なのかもしれません。個人映像制作の自由さを感じるところでもあります。

フラッシュカットだけで作られた映像も多くありますが、明滅を極力減らしたり、色調を似たようにするなど見る側の負担を減らす方法がとられていたりします。どんなに火力の強い表現だとしても、それがずっと続けば見てる側も飽きてしまう。塩梅が難しいところです。視聴者に飽きさせず負担もかけないで気持ち良い映像を作れるかとなると、やはりこの表現は扱いが難しいのだなと思います。


タイムラプスとの役割分担

ところで、同じように高速で写真を展開する映像表現にタイムラプスがあります。

映画とかでフラッシュカットを使ったものがなかったかなーと思い出してたところ、ふと「逆噴射家族」のエンディングを思い出しました。

『逆噴射家族』エンディング(1984年)


あらためて見返してみると、フラッシュカットなのかタイムラプスなのかストップモーションなのか、どれとも言えないような不思議な感じがあります。言ってしまえばとても気持ち悪い映像になっている。ただそれは映画の内容に準じたものであり、意図があってこの不気味な映像が作られたと分かります。

タイムラプスは旅行動画などでよく見る技法で、長時間撮影した映像を短時間に圧縮することで目で見ただけでは認識できない動きを見ることができる方法です。入道雲がモクモクと大きくなる映像とかがイメージしやすいと思います。普通に雲を見ていても大きくなる実感は湧きませんが、時間を圧縮することでその過程を明確にする。タイムラプスは時間を操作する映像表現と言えます。

tilt shift time lapse TOKYO Observatories


フラッシュカットは連続した異なるイメージを圧縮することによってスピード感・リズムを生み出す手法なので、「高速でパパパっと動いている映像」という大まかなイメージは共通していても、目的や意図は全く異なります。

それを意識したうえで映像を見るとより面白く見られるかもしれません。最初に紹介した「サンフェーデッド」においても、 作品前半で描かれた高速で移動する群衆の中に取り残された主人公の孤独感が、間奏で挿入されるフラッシュカットによって最大限に増幅され、その最大火力が強く発揮されていたように思います。

ムリムリ進化論 / ナナヲアカリ


ケイゾクOPをゆめにっきっぽくしてみた


表現には意図があり、その意図を読み取るのが映像を見る楽しさのひとつでもあります。「なぜこの方法が使われたのか」を考えると、より面白いと思います。

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