映像のワク(フレーム)の表現について
映像についての雑記です。
最近動画を見ていて、特にモーショングラフィックス作品を中心にオブジェクトをワク(フレーム)として使用している例がよく見られるなということが何となく気になっていました。

最初にそれに気づいたのは上記の動画です。画面の四隅・端にオブジェクトが置かれ、それがまるでカメラのファインダーを覗いた際にある画面情報のようにフレームの役割をしています。ただし一般的な枠とは異なり、額縁的な線ではなく、意味ありげなオブジェクトが配置されています。
オブジェクトは映像に必ずしも関連あるというわけではなく、例えば右上にある「IDM」のロゴや、左下の顔マーク等は作中・歌詞で特に言及があるわけではありません。あくまで賑やかしとして存在していると思われます。

このシーンは特徴的で、画面の枠としてレターボックス(上下の黒帯)があるにもかかわらず、その上からオブジェクトと文字によって二重のフレームが作成されています。
レターボックスによって狭められた可視範囲を、さらにオブジェクトによるフレームで注目させる、そんな意図を感じさせる構成になっています。
フレームによって映像の表示部分を少なくする=注目してほしい部分に視線誘導するという役割がありますが、それ以上にデザインとしてのフレームというのが頻繁に見かけるような気がします。ある種のトレンドのようなものかもしれませんし、今が新しいフレームの黎明期なのかもしれません。
以下、いろいろと見つけたもののメモ。どれも工夫と意図があって面白いです。

まるでテロップが表示されているかのような大胆なオブジェクトのフレーム。全体的に使われている色が限定されてるがゆえに存在感が強く、それだけに画面全体が引き締まったような印象になります。デザインも映像全体の雰囲気とマッチしていて強気かつ力強い雰囲気が伺えます。
赤と黒の組み合わせ、こうしてみると攻撃的というか主張の強さを感じます。強気な曲に対してのヒントになりそう。

全体をしっかりと囲んでいる一方で、オシャレかつ柔らかい印象を受けるオブジェクトが飾られています。このフレームを見ただけでも映像の雰囲気が掴め、内容への没入感を上げてくれます。そう考えると画面のごく一部に過ぎないフレームにもその映像の空気感を作る役割が十二分にあるということがわかります。

先述の作品と同じように、上下のレターボックスに加えてオブジェクトのフレームを設置するという二重構成になっています。
線や文字は非常に小さいですが、全体的に寒色であるなかで蛍光色を使用したことでとても目立ちます。サイズは小さくさりげなく、でもアクセントとして際立つといった難しい調整をしていることが分かります。読むことは困難でも、そこにあることを主張することはできる。塩梅が難しそうですがアイディアになりそうです。

シンプルな円形のオブジェクト。その欠損具合でそれが月を意味することが分かるというのは映像の内容に依存するものであり、また解釈を視聴者にゆだねることになります。
この映像ではフレームのオブジェクトが頻繁に変わります。細かな要素をふんだんに含んだ作品なので多くの解釈ができ、それ故に内容に深みを与えてくれる気がします。モノ・動きそれぞれにどんな意味があるか考えながら見ると面白く、フレームはその楽しさをより広げてくれる存在です。

目立たず、あくまで雰囲気を壊さない程度に四隅に配置されたオブジェクトは、角を丸く切ったメッセージカードのようです。落ち着きがある一方で無機質な印象もあり、主張がないぶん映像自体に集中できます。
全編がアニメ調な本作においてフレームが登場する場面はごく一部ですが、一部だからこそ、その場面が特別であるという意図を見て取れます。なぜこの場面にフレームをつけたのかということを解釈しながら映像を見るのもまた楽しい。

打って変わってかなり派手な色のレターボックス、文字と線、オブジェクトによる二重フレーム構成。映像自体はもっと派手な色使いであるため相対的に枠内は落ち着きがあるように思わされます。膨大な数のオブジェクトが激しく動いている一方で動かず固定されているフレーム部分は逆に目立つ。その視線誘導を利用しているとも思える構図の作りが見事です。
画像を高速で切り替え、一部分を動かさないことでそこに視線誘導する手法(名前がわからない)の応用のようにも感じます。

映像自体は16:9の比率になっていますが、左右に半透明部分を作ることで4:3に近い構図になり、まるで写真のような印象を受けます。このように左右にフレームを持ってくる映像はなかなか珍しい(と思う)。半透明であるがゆえにモーショングラフィックスやデザインがとてもおしゃれかつエモーショナルに見える。

カメラのファインダーを表現するフレームは頻繁に使用されるものですが、それをどう映像の一部として落とし込むか、作者の技量が問われるところでもあります。本作は情報としては非常にシンプルで、実際のカメラにあるものというよりはおもちゃのカメラという感じがあり、優しさ・暖かみを感じます。実際次の場面でトイカメラっぽいものが登場するので、その場面繋ぎという意味でもこのフレームはさりげない映像効果を生む役割を持っていることが分かります。
いろいろと見ていくと、たかがフレームされどフレームといった感じで、些細ながらも映像の雰囲気・演出・意図に強く影響を与えるものであるということが見て取れます。特に二重フレーム構図については最近のトレンドなのでしょうか。視野をより狭くする手法は今後の作品でも展開しそうな気がします。
映像はそれ自体が限られた範囲でしか表現できない手段ですが、それをさらに限定する方法は、逆に映像だからこそ可能な手段でもあります。現実の世界のフレームもレターボックスもない無制限の広さを16:9ないし4:3で切り取って見せる表現の特異さをなんだか再認識させられるような思いです。
映像論としては考察不十分な文章ですが、これを書くために映像を見まくることでレファレンスが増やせることに気づきました。今後もちまちま書いていきたい。
