構造で見る⑦ 電線 ——「電線」が日本株最強セクターになった理由
「電線株を買おう」
そう思ったとき、あなたはどの会社を選ぶだろうか。
フジクラ、古河電工、住友電工。どれも「電線」と呼ばれる。でも、ここまでの3つの構造で分解すると、中身はまったく別の会社だ。
実は3社とも、
“どのAI需要で稼いでいるか”
が違う。
前回までのおさらい。
株価を動かすのは、業績構造・評価構造・需給構造の3つ。壊れている場所が違えば、処方箋も違う。
今回は、この3構造を「いま最も注目されているセクター」で使ってみる。
「電線」が日本株の主役になった理由
2024年〜2025年、日本株で最も株価が上がったセクターは「電線」だ。
背景にあるのは、5つのメガトレンド。
・AIデータセンターの爆発的な増設
・光ファイバー需要の急拡大
・電力インフラの老朽化と再投資
・EV(電気自動車)の普及
・北米を中心とした設備投資の加速
これらすべてが、「線をつなぐ」技術を持つ企業に資金を集中させた。
しかし、同じ「電線株」でも、どのトレンドで稼いでいるかはまったく違う。
フジクラ(5803)——AI純粋プレイ
まずはフジクラ。電線3社の中で、最もAIデータセンターに特化している。
Q3累計の売上高は8,549億円(前年比+20.2%)、営業利益は1,422億円(同+47.7%)。通期では営業利益1,950億円を見込み、5年連続の過去最高益を更新する。
原動力は情報通信事業。Q3累計で売上+63.4%増、営業利益は+117.5%増と、文字通り倍増した。
生成AIの普及でデータセンターの新設が世界中で加速しており、そこに必要な光ファイバーケーブルと融着接続機でフジクラは世界トップクラスのシェアを持つ。
ROEは24.4%。営業利益率は17.6%。電線3社で圧倒的に高い。
2020年に海外エネルギー事業で赤字に転落した際、光ファイバーに経営資源を集中する決断をした。その「選択と集中」がいま、爆発的に効いている。
✅ 業績構造 → 売上+20%、利益+48%。AI特需で5年連続最高益。
✅ 評価構造 → PER40倍超と高いが、利益成長率+45%でPEGレシオは約0.95。成長が評価を正当化。
✅ 需給構造 → 株式分割(1→6)で個人投資家の参入が加速。海外投資家の買いも旺盛。
古河電工(5801)——バランス型
次は古河電工。データセンター、電力インフラ、自動車の3本柱で稼ぐ。
Q3累計の売上高は9,489億円(前年比+7.6%)、営業利益は351億円(同+11.9%)。通期では売上1兆3,000億円、営業利益560億円を見込む。
フジクラほどの爆発力はない。しかし、データセンター向け光製品の伸長に加え、電力ケーブルや自動車用ワイヤーハーネスも堅調。どれか一つが崩れても、他で支える構造になっている。
営業利益率は約4.7%。フジクラの17.6%と比べると大きな差がある。これは事業のポートフォリオが広い分、低採算事業も抱えているということ。
一方で、純利益は前年比+117%と倍増。特別利益の影響もあるが、利益のトレンドは明確に上向いている。
⚠️ 業績構造 → 爆発的成長ではない。ただ、インフラ分散型で崩れにくく、利益率改善余地は大きい。
✅ 評価構造 → PERは電線3社で最も低め。割安感あり。
✅ 需給構造 → 増配(120円→160円)で下支え。上場来高値圏。
住友電工(5802)——自動車×通信の二刀流
最後は住友電工。売上高は3社の中で圧倒的に大きい。
Q3累計の売上高は3兆6,869億円(前年比+7.1%)、営業利益は2,710億円(同+31.0%)。通期では売上4兆9,000億円、純利益3,200億円(同+65.1%増)を見込む。
最大のセグメントは自動車関連。ワイヤーハーネスで世界トップクラスのシェアを持ち、Q3累計で売上2兆1,351億円。全体の約6割を占める。
しかし注目すべきは情報通信。Q3累計で売上2,205億円と前年比+38%増。AI向け光デバイスが急成長しており、利益率も高い。
住友電工は「自動車で基盤を固め、AIで成長する」という構造。EV化の進展でワイヤーハーネスの需要が底堅い一方、データセンター向けの高採算事業が利益を押し上げている。
✅ 業績構造 → 売上+7%、営業利益+31%。自動車の安定+AIの成長。
✅ 評価構造 → PER、PBRともに3社の中間。バランスの取れた評価。
✅ 需給構造 → 増配(97円→118円)。子会社売却益も含め株主還元強化。
3社を並べて構造で見る
🚀【フジクラ】—— AI特化型
業績✅ 評価✅ 需給✅
光ファイバーで利益倍増。AI特需の恩恵を最も直接的に受ける。成長力は3社で圧倒的。ただし、AI投資が減速すれば反動も大きい。
🏗️【古河電工】—— インフラ分散型
業績⚠️ 評価✅ 需給✅
DC+電力+自動車の3本柱。爆発力はないが、崩れにくい。利益率の改善余地が最大の伸びしろ。
⚡【住友電工】—— 二刀流型
業績✅ 評価✅ 需給✅
自動車×AIの二刀流。売上規模は3社で圧倒的。安定感と成長性を両立しているが、自動車市場の減速リスクを内包する。
「電線」で括るな、構造で見ろ
3社はすべて「電線株」と呼ばれる。でも中身はまるで違う。
フジクラは「いま」、AI特需で爆発している。
古河電工は「広く」、インフラ全体に張っている。
住友電工は「深く」、自動車とAIの両方に根を下ろしている。
セクターで選ぶのではなく、構造で選ぶ。
5月12日〜14日の決算発表で、3社の構造の違いが数字に表れる。
同じ「電線」でも、市場は同じ“電線株”として買っているわけではない。
同じセクターでも、
市場は“別の未来”を織り込んでいる。
▶︎ フジクラ(5803)—— AI純粋プレイ
▶︎ 古河電工(5801)—— インフラ分散型
▶︎ 住友電工(5802)—— 自動車×AIの二刀流
本記事は企業分析および投資教育を目的とした情報提供であり、特定銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
記載のデータは2026年3月期第3四半期決算(2026年2月発表)および公開情報に基づきます。

