【毎週ショートショートnote】木魚感想文
今年の夏休みの課題は「木魚感想文」。
一人ずつ木魚を貸与され、毎日叩いて感想を書く。
ぽくぽくと音を響かせると、不思議となにも考えられなくなる。
僕は「落ち着きました」とだけ書いた。
新学期。提出された感想文はどれもそっくりだった。
「心が静かになった」「落ち着きました」「集中できました」ーーー同じような言葉ばかり。
先生は満足そうに言った。
「とてもよい結果です。みんな、同じ気持ちを共有できましたね」
その後、廊下に掲示が出た。
《感想のばらつきがなくなり、クラスに一体感が生まれました》
保護者会でも評判は上々だった。
「家でも静かになった」「言うことを聞くようになった」
父母たちは安心した表情でうなずき合っていた。
《全国で学力格差が是正》
数か月後、新聞の一面に大きな見出しが躍った。
《均一な音色に感想を持つ訓練が、画一的な思考を保証》
僕は机に置かれた木魚を見つめた。
ぽく、ぽく、と叩くたび、胸のざわめきは静まっていく。
これでいいのだろうかーーーそう思う心さえ、単調な音に溶けていった。
(436文字)
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