【毎週ショートショートnote裏】スクショシュシュシュ
スマホで画面を保存すると、妙な音がした。
「シュシュシュ」。
スクリーンショットーーーただのスマホの機能のはずだった。
けれど、保存した画像には見覚えのない言葉が上書きされていた。
「中央線遅延」。数分後、本当に電車は止まった。
試しに成績表を表示して「満点」と書き加えると、点数まで変わっていた。
それから僕は、スクショを重ねた。
未来を少しだけ操作するために。
人生は一変した。気に入らない結果はすべて書き換えられる。
けれど、ひとつ厄介なことがあった。
アルバムから写真が、一枚ずつ消えていくのだ。
最初は気づかなかった。
けれど、確かにあったはずの風景が思い出せない。
そこに誰がいたのかも。名前も、声も、どこにも残らない。
写真をめくるたび、空白が広がっていく。
アルバムは増えていくスクショに埋まって、知っていたはずの隙間が潰されていく。
それでもやめられなかった。
昨夜までは覚えていた家族の笑顔も、今はもう思い出せない。
そして今朝。保存した画面を確認して、はっとした。
アルバムに映っているはずの「僕」がいない。
どんな顔をしていたか、声は、名前はーーー。
思い出せない。
思い出せるわけがない。
だって「僕」も、上書きされてしまったのだから。
(508文字)
表のお題はこちら⇩
*この記事は下記企画に参加しています*
