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《行動経済学5️⃣》「自分は平均より賢い」という錯覚が、最も高くつく。過信バイアスとトレード頻度の致命的関係


「自分だけは違う」と全員が思っている

質問しよう。

あなたは、投資家として平均より上か、下か。

おそらく「上」と答えた。あるいは少なくとも「平均程度」と答えた。

これは統計的に不可能だ。
全員が平均以上であることは、定義上ありえない。

しかし行動経済学の研究では一貫して、人間の70〜80%が「自分は平均より運転が上手い」「自分は平均より公平だ」「自分は平均より賢い」と回答する。

投資の世界でも同様だ。ほぼ全員が「自分は平均的な投資家より優れている」と感じている。

そしてこの「感じ」が、資産を最も静かに破壊する。


バーバー&オディーンの衝撃的な研究

2001年、ブラッド・バーバーとテランス・オディーンは「Boys will be Boys(男の子はやはり男の子)」と題した研究を発表した。

米国の個人投資家35,000口座の売買データを分析したこの研究は、金融業界に衝撃を与えた。

結論はシンプルで残酷だった。

取引頻度が高い投資家ほど、パフォーマンスが悪い。

最も頻繁に売買したグループは、最も少なかったグループと比べ、年率パフォーマンスが約7%低かった。

そして過信バイアスが強い傾向にある男性は、女性より取引頻度が45%高く、リターンは女性より約1%低かった。

「行動しない」ことが、最も有効な投資戦略だというデータだ。


過信バイアスはどこから生まれるか

過信バイアスには3つの源泉がある。

① 「自分は特別」という認知の歪み(唯一性の錯覚)
人間は自分自身を「統計の例外」と感じやすい。「平均的な投資家は損をするが、自分は違う要因を見抜いている」という信念。

② 相場上昇局面での「誤った帰属」
2020〜2021年の上昇相場でほぼ全員が儲かった。
しかし上昇相場では「市場が上がったから儲かった」ではなく「自分の銘柄選択が正しかったから儲かった」と解釈する人間が多い。
これを心理学では「自己奉仕的帰属バイアス」と呼ぶ。

③ 選択的記憶
成功した取引は鮮明に記憶し、失敗した取引は薄れやすい。
結果として「自分の過去の勝率」を実際より高く見積もる。


ビギナーズラックが最も危険な理由

投資を始めて3〜6ヶ月で大きな利益を出した人間は、最も過信バイアスを植え付けられやすい。

神経科学的には、報酬(儲け)を経験した脳はドーパミンを放出し、その行動を「成功パターン」として強化する。

しかし初期の成功が運によるものであっても、脳はそれを「自分のスキル」として記録する。

そして「スキルがある」と思った人間は、取引頻度を上げ、ポジションサイズを大きくし、リスクを過小評価する。

ビギナーズラックは、その後の大きな損失の「仕込み段階」だ。


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重要なのは「儲かったかどうか」ではなく「根拠が当たったかどうか」だ。
根拠が外れているのに儲かっていれば、それは「スキル」ではなく「運」だ。

これを記録し続けると、「自分の予測精度」という残酷な数字が見えてくる。
多くの場合、それは50〜60%程度であり、「自分は平均より賢い」という感覚とはかけ離れた数値だ。

自分の勝率を「感覚」でなく「データ」で知ること——これが過信バイアスへの唯一の有効な処方だ。

次回は、FOMOと群衆心理がいかにして「合理的に見える狂気」を生み出すかを解剖する。


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