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《行動経済学6️⃣》バブル頂点で買う人たちは「愚か」ではない。FOMOと群衆心理が生む"合理的な狂気"の解剖


「あの人も買っている。乗り遅れたくない」

2021年初頭、GameStop(GME)は5日間で株価が1,500%上昇した。

その週、証券口座を新規開設した人間の数は、月間平均の10倍を超えた。

彼らは「GameStopのビジネスが優れている」と思って買ったわけではない。
「みんなが乗っている。自分だけ取り残されたくない」という感覚に突き動かされた。

そして多くの人は、株価がピークをつけた翌日か翌週に買い、資金の50〜80%を失った。


FOMOは「愚かさ」ではなく「正常な神経反応」だ

バブルの頂点で買う人たちを「欲に目が眩んだ愚か者」と批判するのは、現象の本質を見誤っている。

神経科学の研究が明らかにしたことがある。

社会的な排除を感じるとき、人間の脳は物理的な痛みと同じ領域を活性化させる。

カリフォルニア大学のアイゼンバーガーらの研究(2003)では、コンピューターゲームで仲間外れにされた被験者のfMRIを分析すると、身体的な痛みを感じるときに活性化する背側前帯状皮質が強く反応することが示された。

「みんなが儲けている。自分だけが乗れていない」という感覚は、物理的な痛みに近い苦痛を引き起こす。

FOMOは「貪欲」ではない。「痛みからの逃避」だ。


なぜ群衆に従うことが「かつて」は合理的だったか

進化の観点から見ると、群衆に従う行動は何万年もの間、合理的な生存戦略だった。

サバンナで他の仲間が一斉に走り出したとき「なぜ走るか」を分析している個体は、ライオンに食われる。
群衆が動く方向に素早く従う個体が生き残り、子孫を残した。

「他の人間が熱狂している方向に引き寄せられる」という回路は、数万年の進化が選択した「生存のための最適解」だ。

しかし現代の金融市場において、この「古い最適解」は最悪の行動様式になる。
バブルの頂点とは「全員が熱狂している時点」であり、それは同時に「最も危険な購入タイミング」だからだ。


歴史が繰り返す「群衆心理の構造」

ロバート・シラーは「Irrational Exuberance(根拠なき熱狂)」で、バブルの形成と崩壊を歴史的に分析した。

チューリップバブル(1637年)、南海泡沫事件(1720年)、ドットコムバブル(2000年)、住宅バブル(2008年)、SPAC・暗号資産ブーム(2021年)——

表面上は異なるが、構造は同一だ。

  1. 新しい技術・概念が登場し、正当な興奮が生まれる

  2. 初期参加者が大きな利益を得る

  3. 「乗り遅れた」感覚を持つ人々が参入し始める

  4. 参入者の増加がさらなる株価上昇を生み、新たな参入者を呼び込む

  5. 「今回は違う」という信念が広まる

  6. 崩壊

この構造は、参加者の知性と無関係に機能する。
MBAホルダーも博士号保有者も、同じ神経系を持つ人間として同じ過ちを繰り返す。


SNSとアルゴリズムが「バブル生成速度」を加速させる

現代のバブルが過去のバブルと異なる一点がある。

それは速度だ。

X(旧Twitter)やRedditのインフルエンサーが熱狂した銘柄の情報を発信すると、数時間で数百万人がFOMOを感じ始める。
アルゴリズムはその熱狂をさらに増幅し、より多くの人に届ける。

2021年のGameStop、AMC、Dogecoin——これらはいずれも「SNSが作ったバブル」だった。

しかしその根底にある神経科学は、チューリップバブルと同じだ。


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「FOMO日記」:衝動を可視化して冷却する

FOMOへの対処法として、私が実践している方法がある。

「FOMO日記」 だ。

強烈な「買いたい」衝動を感じたとき、すぐには動かない。
代わりに以下を書き出す。

  • 今、何が起きているか(どんなニュースや情報があるか)

  • なぜ「今すぐ」買いたいと感じているか

  • この銘柄の3年後のビジネスについて、私は何を知っているか

  • 3ヶ月後にこの衝動を読み返したとき、正しかったと思えるか

この作業に5〜10分かかる。
そしてほとんどの場合、書き終わる頃には衝動が半分以下に冷めている。

FOMOは「即座に行動を要求する」感覚だ。「待つ」こと自体が対抗措置になる。

次回は、FOMOと対をなす確率の錯覚——ギャンブラーの誤謬とホットハンド錯誤を解剖する。


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