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アナログレコードが聴ける、東京23区で唯一の図書館に行ってみた。そしてジミヘンを聴いた。【超極私的名盤探訪vol.6】



 ボクは図書館を巡って、所蔵されてるCDをチェックして回るのが好きです。まだ20代だった90年代は、お金がないから図書館でCDを借りる、という動機で通ってました。そこから時間をあけて…近年はコロナ禍がキッカケになって図書館ブームが個人的に再燃。フラフラ遊びに行ける場所が減っちゃったし、これは静かな図書館にでも行くか…。そしたら、意外なほど興味深いCDがアチコチにあることがわかった! で、今でもかなりの頻度で図書館をまわっています。これを「図書館ディグ」と勝手に呼んでおります。
 で先日も、図書館で見つけた OASIS のブートレグを紹介しました。


文京区立小石川図書館。東京23区唯一レコードを聴ける図書館

 そんな中、CDではなく、レコードを聴くことができる図書館があることを、ネット記事で知ってしまいました!「文京区立小石川図書館」。東京23区の中で唯一、レコードの開架陳列そして貸出を行なっており、そして1席だけですけど、視聴コーナーも備えているというのです。在庫の量たるや、なんと2万枚!
 以下の音楽ナタリーさんの記事で知ることができました。めっちゃ詳しい記事なので、どうぞ読んでください。

 と言いつつ、時間のない方向けに、すげーザックリ、GEMINI を使って以下にまとめました。

小石川図書館「レコードライブラリー」の概要
東京都文京区にある小石川図書館は、約2万枚のレコードと約2万枚のCDを所蔵する、音楽好きの隠れた聖地として知られています。

1. 歴史と設立理念
始まり: 1954年に約200枚のレコード所蔵からスタート。
設立: 1966年の改築時に「レコードライブラリー」が誕生。
理念: 「目で読み耳で聴くことで、立体的に資料を利用することができる」 という方針のもと、音楽図書や楽譜、試聴設備が一体となった空間が作られました。

2. 独自の取り組みと「昭和遺産」としての価値
厳格な貸出ルール(当時): 1969年の貸出開始当初は、貴重なレコードの品質を保つため、利用者に自宅のプレイヤーの品番や針の型番を申請させていました。
独自の分類法: 全国共通の基準がなかったため、文京区独自で視聴覚資料の分類法を作成(クラシックを細分化する一方、ロックは1項目のみなど時代を反映)。
廃棄の危機からの集約: 1990年代にCDが主流となりレコードの購入が中止され、一時は廃棄も検討されました。しかし「20世紀後半の音楽文化を記録した貴重な資料」として価値が認められ、文京区内の各図書館のレコードが小石川図書館に集約・保存されることになりました。

3. 現在の運営と棚作り
現在も毎月新作CDを購入し、音楽文化の記録を継続中。
元レコードショップ(WAVEやHMV)のバイヤーという経歴を持つ大谷康史副館長(視聴覚資料担当)らが、利用者のニーズやデータに基づいた、バランスの良い棚作りを行っています。

https://natalie.mu/music/column/639401#google_vignette

ということで、実際に現場に行ってみた。

お隣は「竹早公園」。たくさんのテニスコートがあって、その先に図書館があります。

 地下鉄丸ノ内線・茗荷谷駅から徒歩6分ほど。駅ソバにある春日通りを南側へ歩いて、ちょっと横に入ると、キレイな公園の隣に図書館の建物が見えてきます。 
 実を言いますと、茗荷谷駅で下車なんて生まれて初めてでして、どんな街かもよく知らなかったんですけど、マクドナルドやサイゼリヤがあったり、スーパーやドラッグストアがあったりと、わりと普通の生活感があるところ。オフィスっぽいのは春日通り沿いだけで、一歩横に入れば静かな住宅街。 
 春日通り沿いにある「バンビ」という名前の洋食屋さんが、すごく陽気なオーラを放ってまして、ボリューム満点なハンバーグ定食などなどを比較的お安め価格で出してました。美味しかった!きっと平日はオフィスワーカーの人たちがランチを食べに来るのでしょうね。ボクが行ったのは日曜日でしたけど、家族連れもわざわざ来てる様子。創業は1960年代と歴史のあるお店のようです。あ、脱線しちゃった。

見た目は普通の図書館。ディープな在庫があることは玄関からはわからず。

 さて、図書館。1階は、カウンターや絵本コーナーもあるのでお子さん連れも含めて賑やか。そこをサクッとスルーして、2階に上がると、本棚に加えて閲覧テーブル(勉強する人、読書する人などなど)、そしてCDコーナーもゾロっと見えます。CD系音源も2万枚以上の在庫、ここも非常に興味深い。  
 問題のレコードは、特別なレコード専門の部屋をあてがわれておりまして、そこに2万枚というコレクションが、まー普通のレコード屋さんと同じ感覚で陳列されてます(館内撮影禁止ですから、イメージはナタリーさんの取材写真をご覧ください)。クラシック、ジャズ、ロック、ソウル、そして日本の音楽。クラシックが一番多い様子で、ロック、ソウルなどは1970年代〜80年代前半あたりに買い揃えたような印象。ロックやソウルを見る限りでは、奇を衒うような希少盤を、というより、キチンと押さえておくべき王道アーティストの王道の名譜を揃えてる感じでありました。
 お客さんは少ないというか…ボクみたいな物好きなおっさんがあともう一人いるくらいな感じ。または物好きな若者20歳代とか。そして男性だけ。ボクが3回くらい行った感じでは、常にレコード部屋に二人かボク一人か、という密度感。でもね、そっちの方が嬉しい!この2万枚を独り占めしてゆっくりコレクションをチェックできる方が楽しいじゃないですか!

ということで、実際にレコードを聴くぞ。

 これだ!というレコードを決めましたら、そのレコード部屋を出まして、2階の司書さんのカウンターに、試聴したいと申し出ます。一度に5枚までだったかな?ボクはそんなにたくさん持っていきませんでしたが。すると、司書さんがヘッドホンを貸してくれます。このヘッドホンとレコードを、試聴用ターンテーブルのところに持っていって、実際に再生するわけです。基本的に視聴は1時間まで。聴きたい人が他にいない場合は追加で30分聴き続けることができますが、試聴席は1つしかないですから、ちゃんと譲り合って聴きましょう。なお、CDの視聴機も別途2つあります。
 で、試聴席に座って、ターンテーブルを見てみますと…。ん?あれ?これはかなりヴィンテージなプレイヤーでは!?機種名が書かれているところにテプラで注意書きシールが貼られているので確実じゃないかもなんだけど、ボタンの配置や形状からみて、TECHNICS SL-1700 では?(手元のスマホで必死に調べた)名機 TECHNICS SL-1200 シリーズの親戚で、発売年はなんと1976年!50年前の機材じゃないか!なのに、メンテナンスが行き届いてとっても美品!うわーすげー!ボクの愛機 TECHNICS SL-1200MK3D もそろそろ30年経ってしまいそうなのだけど、ホコリ被ってたりで申し訳ない限り。なんて大事に丁寧に使われてきたんだろう。この機材が愛おしく思えて、そしてこれを大事に使ってきた図書館司書さんたちに強烈なリスペクトを感じる! 
 で、思わず、このターンテーブルの写真をスマホでパシャパシャ撮ってましたら、司書さんに「あのー館内では撮影はご遠慮ください」と注意されてしまいました。申し訳ありません!失礼しました!ですので、みなさん、この図書館では、レコードを聴く行為を、SNS映えする写真や動画にすることはできません!そしてレコード部屋も同様、撮影禁止。以前レコードを聴くカフェ「RECOCO」について記事を書いたのですが、カフェでは当たり前の撮影行為は、ここではルール違反ですので、お間違えなきようお願いします。純粋にレコードを楽しく聴くだけです!
 補足ですが、アンプは DENON PMA-390RE。ヘッドホンは AUDIO TECHNICA ATH-AVC500。こちらはヴィンテージというわけではなく、ここ10年前程度のモノという感じですかね。ちゃんと現代感覚で聴けます。

JIMI HENDLIX EXPERIENCE「SMASH HITS」。モノラルとステレオの差があった!

図書館のLPは帯ナシでしたが撮影不可なので、ebay から帯アリ画像を拝借しました。https://www.ebay.co.uk/itm/405219190173

 高校時代から聴いている、JIMI HENDLIX の初期シングルを含むコンピ盤。これを試しに聴いてみたら、今までのCDの印象からイメージが変わったりするかなー?と思って、早速針を落としました。で、一曲目が彼の代表作「PURPLE HAZE」。…うん…うん…そうねえ…。うーん、うーん?あれ?微妙になんか違うぞ?というか、率直、物足りない感じがしちゃうぞ?でもこれは、レコードとCD/サブスクでの質感の差とかだけじゃなくて、もっとなんか本当に違う…。なんだこの違和感?
 その時、ジャケの隅っこにあるレーベルのロゴマーク「POLYDOR」の下に、MP2349 MONO って書いてあるのに気づく。MONO!このアルバム、モノラル音源なの!?ウッソ、ボクのCDはバリバリのステレオ音源だったんだけど。モノラルとステレオじゃ大違いじゃないか!媒体の特性だけではなく、媒体がリリースされた時代/時期で、音源の処理の考え方が違うということが起こるのかー!

 この図書館のLP、レコード番号 MP2349 は日本法人 POLYDOR K.K. がイギリス/モノラル盤1968年の仕様にあわせまして1974年に再発したもの。ちなみに、このコンピのアメリカ盤は収録曲が違うそうです。ただややこしいことに、1曲だけはステレオになってる仕様みたい(この例外については面倒かつマニアックすぎるので今日は割愛)。
 そしてボクが今まで聴いてたCD、やはり日本の POLYDOR K.K. から1989年に再発された P20P22003。これは1974年LPのモノラル盤を踏襲しておらず、イギリス/ステレオ盤1968年音源を復刻したものでした。こちらもややこしいことに、ステレオ盤といいつつ4曲はモノラル。モノラルで制作しちゃったからステレオにしようがない楽曲があったのですね。しかし、すごいことに、モノラル音源をムリヤリ処理して「擬似ステレオ」に仕立てたバージョンがここには含まれてます。しかも代表曲「PURPLE HAZE」「THE WIND CRIES MARY」「HEY JOE」を「擬似ステレオ」にした。本当にステレオ、本当にモノラル、擬似ステレオがデコボコと混じってるバージョンだったのです。
 定説におきましては、モノラル音源の方が、音がシンプルで太くなるのでかっこよく聴こえる、というのがモノラル/ステレオ過渡期の音源の常識だと思います。MONO のコレクターさんもいますよね。でもですね、ボクの主観ですと、ここでは「擬似ステレオ混じりのデコボコ」がいい!と思いました。
 
LPモノラル盤がシンプルなのは間違い無いのです。しかし、CDステレオ盤(=LPステレオ盤の復刻)は、L-R のチャンネル配分が猛烈に乱暴で極端なんですよ。「擬似ステレオ」も本物のステレオも。今の常識じゃ考えられないようなトチ狂ったミックス。でもこれこそ JIMI HENDLIX のサイケデリア感覚に近いような気がしちゃう。こんな手法はきっとこの時代にしかあり得なかったもので、むしろ逆に貴重じゃないかと思っちゃった。
 
「PURPLE HAZE」は、ギターこそ左右のど真ん中で活躍しているのですが、JIMI 本人のボーカルは右にしかいないのです。ヘッドホンの左ではほとんど聴こえません。レッチリもカバーした「FIRE」は、ボーカルこそど真ん中にいますが、今度はギターの音が右にしかいない。メロウな感じが絶品な「THE WIND CRIES MARY」は、ドラムが左にしかいなくて、ボーカルが右にしかいない。右だけ聴いてたら、ギターとボーカルだけの弾き語りになるし、左だけ聴いたら、ロックトリオのインスト楽曲ですわ。傑作「FOXY LADY」もボーカルが右だけになってる。うわー極端!「HEY JOE」も途中で活躍するギターソロは右にしかいなかったり。「CAN YOU SEE ME」という曲では、ブレイク時にパーンと JIMI のギターが一音響くのですけど、その一音をわざわざパンで左右にグネグネ振って、ヘッドホンの中で左右フラフラ響くようにしている。どの楽曲もどこか異常で不穏なイビツさがある。
 ミキサーさんたちの手探り感覚がホント露骨。当時の新技術であった「ステレオ収録」に対峙するにあたり、よくわからんのだけど、なんかメチャクチャにしちゃった、デタラメやっちゃったという事実が、結果としてボクにはヤンチャで愛おしい。だから、このアルバムに関しては、今回図書館で聴いたLP音源より、今まで聴いてたCD音源の方が、ボクは好きです!なおサブスクもステレオ音源を踏襲している様子…2009年にリマスターしてる気配があるので、厳密に一緒ではないかもしれませんが。

 
昨今巷に流れる「レコードの方が音がいい、CD/サブスクはよくない」という言説は一つの偏見になり得ます。キチンと自分の直感で判断した方が良いかも(今回はモノラル/ステレオって話ですけどね)。今回は自分の耳で違和感を感じ、GEMINIと相談しながら2つの盤の成り立ちと違いを研究しました(GEMINI、間違った情報いっぱいで大変でした。かわいそうに聴けば一発でステレオとわかるのに、彼は音を聴くことができないでデータを検索するだけ…)。様々なバージョンを聴き比べるチャンスがあるなら、ホントにどっちがいいか、自分の耳を信じて確認してみましょうね。率直、サブスクのロスレスがいいなんてことも、ボクには全然あります。

 ま、他にもアレコレ聴いてみて、やっぱり楽しかったです。クラシックがいっぱいだから、何か一枚と思って、ARNOLD SCHONBERG のレコードも聴いた…うん、これはクラシック素人には全然歯が立たなかったです。「第一期/調性時代末期〜第二期/無調時代」の楽曲だそうで、十二音技法の前の頃みたいだったけど、さっぱりわからんかったです。SCHONBERG の在庫はそんな多くなかったし、もっと普通のやつを聴けばよかった。

この図書館ではイベントもやってます。

 ボク自身がまだ参加できてないのでアレなんですが、館内の掲示板とかを見ると、いろいろな催しをやっている様子です。前は「プログレッシブロックのレコードを聴いてみましょう」みたいな会だったけど、ついこの前は、「BILL EVANS のドキュメンタリーの上映会+レコードも聴いてみよう」みたいなイベントもあったとか。必ずしもレコードだけというわけではないのか、「90年代ジェイポップ」をお題に取り上げるイベントも用意されている様子です。
 音楽ナタリーの記事を以下に GEMINI がまとめました。副館長さんが、レコードショップのバイヤーさんだったのですね!だから色々なことができるんだ。こういう試みは素敵ですね!

レコードコンサートの取り組み
大量のレコードをただ保存するだけでなく、「生のレコードの音を聴いてもらう場」として定期的に開催されているのがレコードコンサートです。

1. 開催のきっかけと反響
背景: 以前は年に1〜2回の開催でしたが、コロナ禍を経て「外に出て大きな音で音楽を聴きたい」というニーズが高まったことから、現在は毎月開催されています。
反響: 定員20名の枠に対して、受付開始からわずか15分で満席になるほどの人気を集めています。

2. コンサートの特徴とこだわり
贅沢な音響環境: 館内にある高級オーディオ機器(JBLの大型スピーカーやマッキントッシュのアンプなど)を使用し、自宅では味わえない臨場感のある音を体験できます。
元バイヤーによる選曲: 視聴覚担当の大谷副館長(元WAVE・HMVバイヤー)らがテーマに沿ってレコードを選盤。「ジャズの名盤」といった王道から、季節に合わせた企画まで、解説を交えながら2時間じっくりと音楽に浸れるプログラムになっています。
幅広い客層: 当時リアルタイムで聴いていたシニア層だけでなく、近年のレトロブームやレコード人気から、20代〜30代の若い世代の参加も増えています。

昭和から続く歴史的なコレクションと、元プロのノウハウを活かしたイベントが融合し、現在のレコード人気ともリンクする形で多くの人に愛されています。

https://natalie.mu/music/column/639401#google_vignette


 記事を書こうと思った時は、コダワリ図書館のユニークな試みを軽く書くだけのつもりだったのに、思った以上に JIMI HENDLIX への思い入れ、そしてモノラル盤/ステレオ盤の違いへの思い入れが出まくってしまいました。他の図書館についても今後語りたいですね。

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