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【小説】『傲慢と善良』で描かれる「いい子」の残酷さ

こんにちはうみです🐬✨
漫画編集者を目指す大学生です😍

今日は『傲慢と善良』という氏の辻村深月氏の小説を読んだので、感じたことについて紹介しようと思います!


『傲慢と善良』

 この作品は辻村深月氏によって書かれた小説です。主人公西澤架には結婚目前の彼女、坂庭真実がいるのですが、ある日その彼女が忽然と姿を消してしまいます。彼女を探すために彼女に関係する人々と関わる中で彼女に「過去」架が向き合っていく、そんなお話です。

 タイトル通りこの作品のキーワードは「傲慢」と「善良」です。一見すると対照的と思われるような組み合わせですが、どちらも現代社会で抱える生きづらさの根源となっており、この2つによる悩みを繊細に描いている作品でした。

 また作中でも触れられているように、イギリスのジェーン・オースティンという作家の作品『高慢と偏見』を現代社会の構造で書き直したような印象を受けました!気になった方はこちらも調べてみると面白いかもしれません!


この先ネタバレ注意!!




印象に残った部分

 この作品に出てくる架の彼女、真実は「いい子だね」と形容されることが多い人間です。しかしこの「いい子」という「善良」さは良いことでもあり、残酷なことでもあるんです。

 作中で真実の母親、陽子はいつまでも娘のことを子供だと思っています。その為大人になってからも真実のことを信用せず、自分の生きてきた世界の中で真実の物語を作り上げ完結させる、まさに井の中の蛙状態で真実を育ててきました。この陽子の「傲慢」さは架との会話の端々ににじんでおり、他人との関わりの強さが強い地方で生きてきたオールドファッションな思考故の干渉も明らかになります(真実の進学先を陽子が決めたり、成人してからも門限を決めて子供を諭すように怒ったり)。

 難しいですよね。親が子を世話するのは愛情の一種だと思いますが、少し間違えると子を家庭という逃げられない鳥籠の中に閉じ込めてしまうことになります。

 真実の姉、希実は自分の家庭に嫌気がさして大学進学をきっかけに1人立ちしますが、このような環境でも「いい子」として育った真実は他人からの評価を最優先に考えてしまう人間になってしまいます。

 一見すると親の言うことを聞かずに生きたり、嘘で人を騙したり、打算的に生きたりするのは「悪いこと」であるとされています。これらの振舞い方は社会で生きている中で自然に悟って身についていくいわゆる「世渡り」の方法です。真実は親の囲った鳥籠の中でそのような負の感情に触れることなく生きてきました。言うこと全てを信じる娘だからこそ、陽子は干渉が強まり結果として、意図せずとも陽子と真実の共依存のような状況を作り出してしまったのです。


 この「善良」さが真実の自分の物語を強め、自己肯定感が低いわりに他人に求める基準が高まっている状況につながっていました。


 「善良」である事は自分の物語を他人に押し付けてしまう可能性があります。「傲慢」な陽子と「善良」な真実の違いは、まさに紙一重で表裏一体であると言えます。最初は「善良」であることの良い面の真実が描かれますが物語が進むにつれて「善良」であるということの本当の「傲慢」さや醜さの描写が増え、真実という人間の脆さが描かれていきます。

 最後は真実が災害から復興しつつある宮城県で写真洗浄や地図製作のボランティアを様々なバックグラウンドを持つ人とともに行うことを通して「自らの意思」を再生していく展開へとつながり、ハッピーエンドで閉じられます。


 うみは作中の真実の状況がとても自分に共通する部分があったので作中で真実の姿を考えるたびに自分が重なってしまいました。


 うみは引っ越しの多い子供時代を過ごしたので、八方美人でどこでも人に合わせてしまいます。話す人の求めているテンションや話し方、返答や振る舞いを無意識に探して振舞うので、いろいろな人とすぐ話せるということはうみの長所だと思っています。

 ですがその生き方が身についちゃっていると本当の自分の考えていることとかわかんなくなっちゃうんですよね。短期的な人間関係って、相手に自分のすべて知ってもらって関わるよりも相手を知って自分がそれに沿って関わっていく方が楽なので。

 なのである程度自分の型を作って後は相手に合わせるんです。そうすれば周りに「いい子」だと思われて、新しい環境にも早く打ち解けやすく、友達を作りやすい。

 家庭環境も親が危ないことのリスクがある事はそもそも関わらせてくれなかった(夜ごはんを友達と食べに行くことが中学校卒業までNGだったり、SNSを始めたのも高校2年生からでした)のと、沸点が分かるほど子供の頃に親と関わっていなかったので必然的に「いい子」を家族の前でも無意識に振舞っちゃっていたんですよね。

 少し違う点はありますが、自己肯定感が低いのに自分の価値をどこか過大評価して、他人に合わせるように生きながらも、合わせる部分を他人に押し付ける「傲慢」さがとても似ていると感じました。そして作中で真実が「いい人がいない」と言っていたのはまさしくこれが理由なんだな、と気付きました。

 また、人を評価してしまう恋愛や婚活を舞台にしているからこそ真実の脆さが出ていたと思うので、他人を評価して判断を委ねる前に自分の弱さをしっかりと見て、自分で選択できるようになりたいなと思いました。😊


まとめ

 現代社会において「いい人がいない」という言葉はよく聞く言葉だと思いますが、これは無意識にでも「いい子」を振舞う傾向のある、全員に共通するものなのかなと思います。「善良」さに隠された「傲慢」さ。そんな複雑な感情を繊細に描いたこの作品が気になった方はぜひご覧ください!


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