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【ショートショート】ほんわか台風

 台風を飼っている。掌に乗る小さなサイズだ。

 台風8号がぼくの住む街を通過した際、逸れてウロウロしていたところを保護した。

 初めは警戒していたのか、ぼくの部屋を手当たり次第にひっかき回し、床を水浸しにした。ぼくは暴れる台風をそっと見守り、したいようにさせてやった。

 そのうち気が済んだのか、床で縮こまっていた台風を、そっと掌で包みこんだ。一瞬ぴくりと体を揺らした台風だったが、やがて安心したように寝息を立てた。

 今では掌の上で走り回り、ハンディファンのように風を送ってくれる。ハチと名前を付けた。

 あっという間に季節は巡り、長い夏が通り過ぎると、短い秋がやってきた。最近、ハチの元気がない。大きさも半分ほどになってしまった。

「おい、ハチ。どうしたんだよ」

「台風は暖かい所でしか生きられないんだよ」

 父が寂しそうな目でハチを見つめながら言った。

 ぼくはハチをカイロの上に乗せたり、暖房を付けたりしてみたが、ハチは小さくなるばかりだった。

 そんな折、季節外れの台風がやってきた。ぼくは風雨が吹き荒れる中、マンションの屋上に登った。掌の上で小さく丸まるハチを、空に向かって高く掲げた。

 ハチは一瞬体を震わせると、ぼくの顔に優しく風を吹きつけた。暖かな風がほんわりとまつ毛を揺らすと、ハチは空へと昇っていった。

 台風が通り過ぎると、頭上の分厚い雲がゆっくりと動き、大きな青空の窓を開けた。 射し込んだ太陽の光は、冬を思わせる冷たい空気の中、肌に触れる一瞬だけ、夏の終わりのように暖かかった。



AIに頼んでタイトル画像を作るのが結構楽しかったんです。でも、小説を書くよりも時間がかかってるんじゃないか?と思うときもありまして。それならひとつでも多く書こうと思い直し、画像生成にいったんサヨナラを告げました。

テクノロジーの進化でできることが増えると余計に時間を取られるというのも、なんだか人間らしくて、笑えます。

たらはかにさまの毎週ショートショート【ほんわか台風】に参加させて頂きました。

前回のお題はこちら

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