【ショートショート】十中八九七五三
パドックへと向かう薄暗い通路を、何故か猫が歩いている。足元に纏わりついてくるその柔らかそうな生き物を、俺は舌打ちをしながら蹴り飛ばした。猫は尻尾を逆立て牙をむき出し威嚇してくる。
俺は鼻を鳴らして猫を一瞥すると、パドックの隅に佇む老婆に声を掛けた。
「よお、どうだ」
「……あんたかい。ほれ」
そう言って老婆は皺だらけの手を差し出した。俺は舌打ちをしながらポケットから皺だらけの万札を数枚取り出した。
「そうだね。今日は……十中八九、7-5-3で決まりだね」
「十中八九ね。あんたの言った通り、前回のレースでは儲けさせてもらったが……」
「賭けるも賭けないも、あんた次第だよ」
パドックを駆ける馬をじっと睨むと、俺は馬券場へと向かった。
ゲートが開くと一斉に馬が走り出した。7番を先頭に5と3も良い位置にいる。最終コーナーを回ると会場は歓声とも怒号ともつかない熱狂の渦に包まれた。
7-5-3だ。そのまま行け。
ゴール間近、何かが馬の前を横切った。馬がいななき騎手が落馬する。原因の何かは我関せずとばかりにあくびをして伸びをしている。俺の有り金を注ぎ込んだ馬券は、猫のせいで紙屑になった。
俺は周りに集まる猫たちにパン屑をばら撒く。こないだのは正に因果応報だ。これからは猫に優しい男になろう。
今日のレースは外せない。パドックへと向かう連絡路。鼠が俺の前を通り過ぎる。俺は鼠を蹴り飛ばした──以下略。
終
競馬したことないのであくまでもイメージです😓
たらはかにさまの毎週ショートショート【十中八九七五三】に参加させて頂きました。
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