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【つながる旅行記#413】『丸亀市猪熊弦一郎現代美術館』で芸術をたっぷり摂取する

前回は丸亀城から夕焼けを眺めて、スパイシーな骨付鳥を食した。

(どんだけ肉が好きなんだろう…)

さて、一夜明けて本日は引き続き丸亀市を観光していこう。

土器川を渡って、目指すは美術館のある丸亀駅方面だ。

橋を渡る

おぉ……! 飯野山が良い感じに見えているじゃないか……!

やはりああいう『THE・山』という形だとつい見てしまうな。

コサギ
商店街
(一体何が…?)

というわけで、1.5キロほど歩いて『丸亀市猪熊弦一郎現代美術館』に到着である。

自分は上野駅の絵くらいでしか猪熊弦一郎を知らないわけだが、他にはどんな作品が見られるのだろうか。

いや、そもそも今目の前にあるこれらも、猪熊弦一郎の作品のようだ。

てっきり画家オンリーだと思っていたが、こういう巨大なオブジェも作れてしまう人だったのか。

しかしこう、非常に独特な絵というかなんというか……!

上の方にあるヘリコプター(?)なんて、凄いことになってないか……?

ヘリコプター(?)

なおこちらの壁画は近づいてみると、象嵌で作られていることがわかる。

要するにこれは、背景となる白い大理石の上に、”砕いた黒い御影石を埋め込む”ことで、筆のタッチが再現されているのである。

この壁画は1991年に作られたものだが、元となる絵を拡大コピーした紙を体育館に広げて、それを筆でなぞり直したものを壁画に採用したそうだ。(その際のインクの飛沫も壁画に採用されている)


いやしかし壁画の製作過程はともかくとして、上野駅のときってこんな感じの絵だったっけ?

なんだか絵の印象が違うような……。

上野駅の「自由」

『自由』は1951年に描かれたものなのだが、美術館の壁画と比べるとこちらのほうが写実的な印象を受ける。

(この絵を描いてから40年の間に、猪熊弦一郎に一体何が……?)

やはり芸術家というのは年月を経ると写実から遠のいていくものなのかもしれない。


まあそれはともかく美術館の中へ。

ちなみに今回の企画展では、猪熊弦一郎が国の命令で従軍画家になったときの作品や、その背景資料が展示されている。

背景資料というのは、『前線に画家を派遣する意図を説明する資料』とかそういうやつだ。

例を挙げると、以下の文章を100倍堅苦しくした内容の書類が猪熊弦一郎の元に届いていたようである。

・我が国は古来より巨匠の手による優秀なる戦争画を残してきた
・世界史上未曾有の聖戦である大東亜戦争に際しても絵は残さねばならない
・我が国の将兵がいかに優秀で身命を捧げていたかを後世に残し、日本精神と現代戦争文化を子孫に伝えるのだ!
・作品は国内主要各地で展覧会を開催して、一般国民に見せるぞ!

意訳

なお他にも、猪熊弦一郎以外に藤田嗣治など多くの画家が戦地に派遣されていたことがわかる資料も展示されていた。

当然ながら中には亡くなっている画家も存在し、あの岩倉具視(ともみ)の曾孫である岩倉具方(ともかた)は、海軍従軍画家として上海に赴任したが迫撃砲により戦死している。


なお自分が好きな岡本太郎は従軍画家としてではなく、まさかの普通の兵士として徴兵されてしまい、殴られ通しの初年兵教育を受けて反骨精神が醸成されまくったわけだが、これはまた別のお話……。

(でも生きててよかった)


そんな感じで作品をあれこれ見たわけだが、どうにも猪熊弦一郎という芸術家の実態が全然つかめない自分が居る。

この美術館に入るまでは、『子どもが描いたようなタッチの壁画』だったり『写実っぽいけどゆるい絵』なんかを描く画家だと思っていたのだが、美術館の中は意外にも抽象画が多いのだ。

解説によると、1955年にアメリカに渡ってニューヨークを拠点に活動し始めてから抽象画に目覚めたらしい。


そして数々の絵に混ざって、椎名誠が猪熊弦一郎と会話した内容の抜粋が壁に展示されていたので、少し紹介しよう。

美術館などで大きな絵に顔をスリ寄せるようにして、あるいは舐めるようにして眺めている人がいる。果して、ああいう見方というのはどうなのだろうか。
「田園風景」の絵の隅の、草むらの十センチ四方を、そんな極微的距離で眺めて一体何の意味があるのであろうか。

だからまた画伯に聞いた。
「あんな見方に果して意味があるのですか?」
「あるのです」
間髪をいれずキッパリと画伯は答えた。

「絵というものはそれを描いた画家の苦しみの足跡なのです。
そういうものは遠くからぼんやり眺めていたのではわかりません。

できるだけそばに行ってじっくりと、細かいところまで見つめていく、という見方が必要なのです。

そうやってみるとじつにいろいろのことがつたわってきます。
それはじつに面白いことなのです」

とまあこんな感じのことを猪熊弦一郎が語っていたらしい。

なのでこの美術館ではその考えに基づいて、パーティションが存在しないのだそうだ。

……言われてみれば、美術館では当たり前の足元のテープがない!

テープなし!

ここまで環境を揃えてくれていると、いつも以上に近付いて鑑賞したくなるというものだ。

油絵なんかのデコボコを見るのが好きな自分としては、こうやって絵を近くで見ることを芸術家に肯定して貰えるのはちょっと嬉しい。

(まあ抽象画の場合は、遠くても近くても結局なにがなにやらという気がしないでもないが)


※こんな感じの作品がいっぱいです↓


そんなわけで、入口からは想像もつかない中身だった『丸亀市猪熊弦一郎現代美術館』でした。

まさかこの外観から大量の抽象画に遭遇する流れになるとは。

そして今思うと、この壁画のデザインはまだわかりやすかったということに気付き、ありがたみを感じている自分がいる。


……いやまてよ?

よく見たらこの壁画も意味不明なものが大量に存在しているような……?

まあでも、美術館内の抽象画よりはまだどうにかなりそうだから……!


それでは芸術成分を自分の許容量を超えるレベルで摂取したところで、街へ繰り出そうか。

美術館の目の前にある『まるがめレンタサイクル』で、昨日に引き続き自転車を借りていくとしよう。

まるがめレンタサイクル

果たして新しい土地でどんなものに出会えるのか。

次回へ続く……!!


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