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【血液検査データを見て考えよう!】ASTとALTに注目してみたよ

前回は、血液検査データの数値の「単位」や「測定法」について深掘りしてみました。

お馴染みの「肝臓の数値」であるASTを例にとって、ビタミンB6との関連も、より明確に理解できた気がします。

今回は、せっかくなのでALTについても深堀りし、ASTとALTの合わせ技で深読みする時の知識を整理したいと思います。


ASTとALTの性格の違い?


ASTと同じく、ALT(アラニントランスアミナーゼ)は、ビタミンB6がないと働けない酵素です。

ASTは肝臓以外にも、心筋、骨格筋、赤血球などに多い酵素、ALTは主に肝臓に存在する肝特異性の高い酵素、なんていうふうに、大学の講義では話します。

加えて、血液データ読みでは、両者の性格の違いに注目します。

  • AST: ビタミンB6を ガッチリ離さない タイプ(結合力が強い)。 少しくらいビタミンB6不足でも、なんとか持ちこたえます。

  • ALT: ビタミンB6を すぐに手放してしまう タイプ(結合力が弱い)。 体内のビタミンB6が不足すると、真っ先にビタミンB6を落としてしまい、働けなくなります。

血液検体を提供した被験者がビタミンB6不足に陥っているとき、試薬にビタミンB6が入っていない日本標準法で測ると、

  • AST はまだビタミンB6を保持しているので、ある程度の数値が出ます。

  • ALT はビタミンB6を保持していない状態(アポ酵素)になりやすいため、検査試薬(ALTの場合は、L-アラニン、α―ケトグルタル酸、乳酸脱水素酵素、NADH)と反応できず、数値がガクンと下がります

さらに、長期間ビタミンB6不足の人は、働けないアポ酵素のALTがどんどん分解の対象となってしまうので、ALTがそもそも少なくなります。

その結果、「ASTに比べて、ALTだけが極端に低い」 というデータになります。

もし検査試薬にビタミンB6が入っていたら(世界標準法)、ALTも復活して数値が上がってしまうため、極端な「乖離(かいり)」が見えず、なかなか気づけないかもしれません。

日本標準法が「ビタミンB6を試薬に入れない」からこそ、私たちはデータから「潜在的なビタミンB6不足」を読み取ることができるのですね。


糖新生との関係


ASTに比べALTが低かった場合には、今まで述べてきた通り、ビタミンB6不足を考えます。加えてもう一つ、分子栄養学的には、「糖新生が盛んなんじゃないか?」という類推も行います。

なぜ、糖新生が盛んだとALTが低くなるのでしょうか?

「グルコースーアラニン回路でALTを酷使するので、消耗して減っていくのだ」という説明もよく耳にします。

しかし、大昔、化学の授業で習った通り、酵素はあくまで「触媒」です。自分自身は変化せずに反応を速める存在なので、「使えば使うほどすり減ってなくなる」というのはどうなのかな、とモヤモヤしていました。

このような「消耗」を考えなくても、「低血糖などの、糖新生が必要な状態の人にALT低値が多い」ことを説明できないかな?と調べたところ、以下のような説明ができることが分かりました。

1. アラニン(材料)不足による酵素の減少(適応現象)

糖新生が盛んに行われている(=体がエネルギー不足で必死に糖を作っている)状態では、筋肉を分解して大量の アラニン を肝臓に送ります。

もし、このアラニン供給が追いつかなくなると、肝臓は「あれ?これ以上ALTをたくさん用意しておいても、肝心のアラニン(材料)が来ないなら意味ないじゃん・・・」と判断するかもしれません。

生体は無駄を嫌うため、不要になった(働けない)酵素タンパク質の合成を減らしたり、分解を早めたりします。

その結果、長期的な糖新生亢進の果てに、筋肉量の減少やタンパク合成能力の低下も相まって、ALTの総量そのものが減ってしまう(低値になる)と考えられます。

2. ビタミンB6の「競合」と「消費」

糖新生には、ALTだけでなく、多くのアミノ酸代謝酵素がフル稼働する必要があります。糖新生の過程で働く多くの酵素も、すべて ビタミンB6 を必要とします。

また、糖新生よりも前に行われる、肝臓のグリコーゲンを分解する酵素(グリコーゲンホスホリラーゼ)も、体内のビタミンB6の大部分を貯蔵・消費していると言われています。

ビタミンB6を使ってグリコーゲンを分解しても、まだ血糖が足りない
      ↓
糖新生が盛んになる
      ↓
ビタミンB6が大量消費
      ↓
ビタミンB6との結合力が弱いALTが、真っ先にビタミンB6を奪われて「アポ化(働けない状態化)」する
       ↓
検査データでALTが低くなる

つまり、「ALT自体が消耗した」のではなく、「糖新生という緊急事態でビタミンB6が他の酵素に回されてしまい、ALTが働けなくなって、結局数値として低く出る」 という説明ができるようです。

ちなみに、糖新生を指令するホルモンである コルチゾール は、筋肉(タンパク質)を分解してアラニンを作らせますが、同時に 肝臓でのALTの合成(遺伝子発現)を誘導(増やす) 作用もあります。

ですから、ストレスのかかり始めは、コルチゾールが出て糖新生が始まると、実はALTは 増える 傾向にあるのですが、

長期間のストレスや低血糖で身体が疲弊し、タンパク質不足やB6枯渇が進むと、もはや酵素を作る余力がなくなり、ALTは 下がっていくそうです。

栄養指導の現場では「ALTが低いですね。分子栄養学の一般論では、こうしたデータの場合、エネルギー消費が激しかったりストレスがかかったりして、体の中でビタミンB6の需要が高まっていると考えることが多いんですよね。」という説明がなされる場合があります。

ということで、ASTとALTの数値が大きく乖離し、AST>ALTとなっている場合には、例外(高齢・低栄養/サルコペニア、透析、飲酒、筋肉、溶血、薬剤、肝炎など)もありますが、ビタミンB6補充は一つの解決策となる可能性がありますね。


次回以降、ASTやALTと深く関わる脂肪肝についても、まとめていきたいと思っています!


血液検査は病気の診断のためだけにあるのではありません。自分の体の状態(栄養状態や代謝の傾向)を知るための大切なツールです。 この記事では、あくまで『健康管理(セルフケア)』の視点から、検査値が持つ意味を一緒に学んでいくことを目的にしており、特定の栄養療法・サプリ摂取を推奨するものではありません。検査値の解釈は、測定法・年齢・筋肉量・服薬・腎機能・飲酒等で変動します 。症状がある/治療中/妊娠中/薬を服用中の方は、自己判断での変更を避け、医師・管理栄養士等に相談してください。また、病気の診断や治療については、必ず医師の判断を仰いでください。


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