【血液検査データを見て考えよう!】検査値の「単位」に注目してみたよ
これから、不定期で「血液検査データを見て考えよう!」というテーマの、検査データよもやま話を投稿していきたいと思っています!
分子栄養学カウンセラーさんや、分子栄養学でセルフケアをしようとしている方たちにとって、血液検査データはいろいろなことを推測させてくれる宝の山です。が、深読みをするためには、知識と経験が必要ですよね。
私が血液データ読みの勉強を進めるうえで、躓き、どうしてだろう?と考えたこと、調べて納得したこと、まだちょっとモヤモヤが晴れていないことなどもでてくるかもしれません。これらをまずは共有させてもらって、出来ればコメントもいただいて、みんなでレベルアップしていければな、と思っています。
どうぞよろしくお願いいたします!
(この記事は、検査値の“単位”と“測定法”の理解を目的にした一般向け解説です。個別の検査結果の診断・治療を目的とするものではありません。)
検査値の単位の意味は?

血液データを語る時、ASTが23で、とか、MCVが88で、とか、HbA1cが5.5で、などなど、数字しか言いませんよね。っていうか、私はそうです。
検査値と基準値を必死で覚えて、大体感覚がつかめたかな、と思ったある日、ちょっと反省したのです。私、単位をないがしろにしているな、と。
酵素は U/L、血糖値は mg/dL、ヘモグロビンは g/dL、MCVはfL。網状赤血球は‰で、HbA1cは%・・・・。どうしてこの単位なのか?活性?濃度?量?割合?
あと、その数値がどのような臨床検査法で測られたのか、を知らないで、やみくもに基準値や理想値などを覚えるのも、いつか落とし穴にはまりそうだな、と警戒心が出てきてしまいました。
ちょいとここはきちんとせなあかんな、と思い始めたのです。
ASTを例に、考えてみる
どんな健康診断でも必ず測られている(と思う)AST(アスパラギン酸トランスアミナーゼ)という酵素を例に、考えてみることにします。
ASTの単位はU/Lですよね。この「U」は「ユニット」または「酵素単位」とよばれ、 国際生化学連合(IUB)によって、以下のように厳密に定義されているようです。
1 U(ユニット)とは: 最適条件下(温度30℃または37℃、pHなど)において、 1分間(1 minute)に、 1マイクロモル(1 µmol)の基質(材料)を変化させることができる酵素量
ここで、「温度30℃または・・・」と書いてありますが、今現在、血液検体を測定する際は、国際的にも日本においても37℃で統一されています。(昔は各機関で温度がバラバラだった時期もあったとのことです。)
さて、そういうわけで、「U」は、重さ(mg)や個数(mol)ではなく、体温と同じ温度環境下での「仕事の速さ(能力)」 を表す単位なのです。
だから、もしAST が20 U/L の場合、これは 「あなたの血液1リットルの中には、1分間に20マイクロモルのアスパラギン酸(基質)をオキサロ酢酸に変えるだけの能力を持つ酵素が含まれていますよ」 という意味です。
どうして、酵素の濃度で表さないのでしょうか?
ASTは酵素、すなわちタンパク質なので、技術的には「血液中に何mgあるか(質量)」を測ることは可能でしょう。 しかし、臨床現場ではあえて「U」を使います。理由は以下の通りです。
「働けない酵素」は数えない主義
ビタミンB6不足などで、形はASTだけど機能しない「不活性型AST(アポ酵素)」が混ざっているかもしれないのですが、ありのままで良しと考えています。(ASTがビタミンB6を補酵素としていることは有名ですよね。)
質量は微量すぎて測りにくい
酵素は触媒なので、ごく微量でも、ものすごいスピードで反応します。
質量(mg)で測ろうとしても測れないほど微量でも、活性(U)で測れば「反応生成物」がどんどん増えるので、感度よく検出できます。
測定にかかるコストが活性測定のほうが圧倒的に安い
活性測定は一回数十円程度の激安、質量を測るのはその数十~数百倍もするみたいです。
え~、でもちょっと待って!
働けないアポ酵素のASTも、臓器から漏れてくるのは同じはずですよね?
そしたら、細胞が壊れ、細胞膜が破れてしまうから血液に漏れ出てくる酵素(逸脱酵素)、を見ることで炎症の程度を見積もるなら、活性型も不活性型も併せた数値にした方が、より正確に炎症の程度を反映するのではないかな?・・・どうにかならないかな? なんて考えました。
測定方法を調べてみると

さて、では実際どうやって血液中のASTの活性を測定するのでしょうか?
まず、多くのルーチン検査(生化学・免疫)は、だいたい以下の流れです。臨床検査会社や病院の検査室では、全自動(またはほぼ全自動)の分析装置を用いています。
採血管が到着 → バーコードで個体識別
遠心して血清/血漿を作る
(必要なら)分注・仕分け:分析装置ごとに“子検体”を作る
分析装置が吸い上げ → 試薬と反応 → 検出
装置内の校正(キャリブレーション)と精度管理を通して値を確定
LIS(検査情報システム)→ 報告
この手順の4が生化学的測定ですが、ここは、光学(比色) か 電極を用います 。
比色とは、血清に試薬を入れて反応させ、色の変化や吸光度を測ることです。ということは、検体の色や濁り(溶血=赤、黄疸=黄色、乳び(食後の脂質粒子)=白濁 など)が測定に影響する可能性があるということです。
また、Na、K、Clなどは、イオン選択性電極で測るのが一般的です。これも、装置や方式が異なると乳びや高蛋白などでズレが出ることがあるかもしれません。
ところで、 自動分析装置では、ASTそのものを直接見つけ出して数えているわけではありません。酵素の量を測っているわけではないのですものね。
実際は、「ASTに仕事をさせて、その結果を測る」 という方法をとっています。
検体に、試薬(アスパラギン酸、α-ケトグルタル酸、リンゴ酸脱水素酵素、NADH)を入れます。
ASTがせっせと働き、「アスパラギン酸+α-ケトグルタル酸」が「オキサロ酢酸+グルタミン酸」に変わります。
出来たオキサロ酢酸とNADHが、リンゴ酸脱水素酵素によりリンゴ酸とNAD+になっていきます。
NADHは波長340nm(紫外線の一種)の光を強く吸収しますが、NAD+は吸収しません。この両者の違いから 「NADHが減っていくスピード」 を光で測定します。
スピードが速ければ「ASTがたくさん働いている=Uの数値が高い」、スピードが遅ければ「ASTがあまり働いていない=Uの数値が低い」、となります。
ところで、試薬としてアスパラギン酸、α-ケトグルタル酸、リンゴ酸脱水素酵素、NADHを添加するのが日本標準法(JSCC法)なのですが、世界標準法(IFCC法)では、これに加えて、たっぷりのビタミンB6を添加します。
するとどうでしょう、血漿中のビタミンB6不足でアポ酵素となっていたASTが、ビタミンB6がいてくれるおかげでみんな「働ける酵素=活性型」に代わります。
つまり、世界標準法は、先ほど私が感じた「活性型も不活性型も合わせた値の方が炎症の程度をより反映するのではないか?」という疑問の解決策を提示してくれています。
もちろん、ビタミンB6不足以外の理由(酸化ストレス、重金属、レアな体質など)で「働けない酵素」になっているASTの量は測り切れませんが、ASTが働けなくなるメジャーな理由はビタミンB6不足とのことなので、大きな影響はなさそうです。
まとめると、
世界標準法(IFCC法・ビタミンB6あり): 試薬にビタミンB6が入っているので、体内のビタミンB6不足に関係なく「酵素の総量」として高い値が出る。「純粋に臓器ダメージを見たい」測り方
日本標準法(JSCC法・ビタミンB6なし): 体内のビタミンB6不足があれば、数値が低く出る(マスクされる)。栄養状態が反映される。「生体がビタミンB6不足なのならその状態も含めて評価すべきだ」とする測り方
つまり、同じ血液検体でも測る方法によって数値が変わってしまう(IFCCの方が高く出る傾向がある)のですよね。
もし、同時に両方の方法で測ってもらえれば、どれだけビタミンB6が足りないかが一目瞭然となるのかもしれません。
また、ASTが20前後のちょうどいい値を出していたのに、ビタミンB群サプリなどを摂取してビタミンB6を十分に補充したら、ASTの値がぐーーんと上がった!、、というようなことも起こるのかもしれませんね。
これは肝障害の悪化を直ちに意味するとは限らず、これまで条件によっては十分に捉えられていなかった酵素活性が、測定条件の違いなどで見え方が変わった可能性もあります。
このように、一部の条件では、測定条件(PLP添加の有無、測定法の違い等)や栄養状態によって“見え方”が変わる可能性があります。
ただし、AST上昇には別要因も多く、検査結果の評価は医療者と行うのが安全です。
いかがでしたでしょうか?
生化学がめちゃくちゃ苦手な私が、出来るだけ自分に分かりやすい!をモットーに、検査値の単位と酵素について調べ、考えてみました。
次回はASTとALTを比較してまとめます!

血液検査は病気の診断のためだけにあるのではありません。自分の体の状態(栄養状態や代謝の傾向)を知るための大切なツールです。 この記事では、あくまで『健康管理(セルフケア)』の視点から、検査値が持つ意味を一緒に学んでいくことを目的にしており、特定の栄養療法・サプリ摂取を推奨するものではありません。検査値の解釈は、測定法・年齢・筋肉量・服薬・腎機能・飲酒等で変動します 。症状がある/治療中/妊娠中/薬を服用中の方は、自己判断での変更を避け、医師・管理栄養士等に相談してください。また、病気の診断や治療については、必ず医師の判断を仰いでください。
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