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【エッセイ】オバケは出てこない

ひこひとさんのプチ怪談を読んで、自分の怖い話を思い返してみた。安心してほしい。オバケは出てこない。

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大学生の頃。私は一人暮らしをしていた。
住んでいた地名は、身体の一部分の名称で、どうやら、土地を掘り返したらその身体の一部分が出てくるということが由来だと聞いたことがある。過去、その土地が戦地だったとか、処刑場だったとかそんな話はよく知らない。知ったら、もう住めない。
住んでいたアパートの周りを囲むように墓場があり、引っ越してきた当初は嫌で仕方なかった。とはいえ、数年も住めば慣れてくる。一度引っ越したが、より墓場が近くなった。というか、隣だった。綺麗なお墓だったが、正直、辺り一帯を取り囲むようにあるゲゲゲの鬼太郎風の苔が生えたお墓の方が私は好きだった。 
引っ越したマンションの部屋は2階で、部屋を出ると、すぐに見下ろすかたちで墓場がある。ある日、墓場で髪が肩より少し長い40代くらいの男性が墓場に腰を下ろし、墓石を抱きしめるように撫でていた。髪の隙間から見える窪んだ目は大きくギョロリとしている。一度目が合った時は背筋がひやりとしたが、私は気づかないふりをして、何事もなかったように部屋に入った。男性の視線は部屋に入ったあとも残っているような気がした。週に数回、それは行われているようだった。 

バイト先の飲食店の夫婦や、友人にそれとなく話を聞いたこともあったが、誰も知らないようだった。 
たまに、墓場から、妙に細くて痩せこけたネコが三日月のように細い目を吊り上げて、いつもじっとこちらを見るのがなんとなく嫌だった。墓場は好きだったが。 

ある日、県外から友人が2人、泊まりで遊びにやってきた。夜になると、墓場の抜け道を通り、3人で近くのカラオケへと遊びに行った。楽しい時間を過ごし、夜中の0時を過ぎた頃、3人でマンションに戻ることにした。帰り道は、長い登り坂を突き当たりまで歩き、左へと曲がれば抜け道の墓場だ。
「ちょっと怖いね」
なんてふざけながら登り坂を登ろうとしたときだ。登り坂の突き当たりに腰を曲げた白装束の男性が一人立っている。3人で顔を見合わせた。友人2人とも顔を強張らせている。わずかな街灯の明かりを頼りに、私はその姿をじっくりと見た。それは、いつもの墓場の男性だった。長い髪の隙間から、ギョロリとした目をのぞかせる。首がぐるりとこちらを向き、私たちを確かめるようにじっと見ている。息を呑み、3人で立ち尽くしていると、男性は、杖のような、錫杖のようなものをこちらに向かってカン、カン、カンと何度も地面に叩きつける。静まりかえった道路には、金物を叩きつけるような音が繰り返し響き渡る。怒っているのだろうか。近づくことは、到底できなかった。抜け道を通ればたった数百メートルの道を3人でタクシーを呼んで回り道をして帰った。

その後も、その男性を墓場で定期的に見たが、白装束はその夜だけだった。取っておきの日だったのだろうか。一度だけ、奇声をあげて追いかけられたこともあったが、走るのが異常に遅かった。本当の、“夜は墓場で運動会”だった。結局のところ、男性はよほど、あの墓場が好きなのだなと私はそう結論づけて、その後の大学生活を穏やかに過ごしたような気がする。卒業する頃には、墓場に姿がないと風邪でもひいたのではないかと多少は心配したが。


オバケは、出てこない。


                   mashiro

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🕯️そういえば、田舎で一人暮らしをしていた祖母は、生きている人間が一番怖いと、よく言っていた。夜は、念入りに戸締まりをしていたことを思い出す。

孫は、不用心。


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🕯️次はちゃんと、アリガタイナーが書きたいナー。





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