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印刷用書体の開発とデジタルフォントの未来 #32|スマホの時代で

変わり始めた文字を読むメディア

皆さんはメールの添付ファイルで届いた書類をどのように読んでいるでしょうか。私は基本的にPCでファイルを開き、大きな画面で閲覧することがほとんどです。

この他にテキストの量が多かったり、アナログ的なメモが必要であったり、またプリントの方が読みやすそうな時など、内容や必要に応じてプリンターで印刷しています。

ほとんどの方は同じように読んでいると考えていました。

私はある自治会の会長を務めています。
毎月定例会を開催する都度、4ページ程の議事録を作成して、これまで自治会活動にかかわった全ての関係者にメールで届けています。
企業や行政の方々、あるいは一般の居住者など、20年近くの間、毎月約300名程に議事録を送信しています。

ある時、その内の一人に、つい数十分前に配信した議事録の話題を尋ねる機会がありました。問われた相手のポカーンとした様子に気付き、普段はどうやってメールや添付ファイルを見ているのかを尋ねてみたのです。

すると、スマホで見るだけで、プリンターを持っていないということでした。その時、自分の浅はかさを痛感したわけです。

つまり20年前のワープロの時代から、今日のスマホの時代になるまでの間に、ほとんどの一般家庭からプリンターは無くなっていたというわけです。

さて、私たちは4ページのテキストだらけの議事録を、スマホの小さな画面で読み解き、肝心なことを記憶にとどめておくことができるのでしょうか。
たぶん要領の良い人は、メモ帳やGoogleカレンダーにコピペしたりして、うまくやり繰りしているのでしょう。

ですがもしかすると発信者と受け取り側の間に、考え方の乖離が始まっているのかもしれません

私たちはそのようなことを注意深く見つめつつ、新しい表現を試みていくのでしょう。それが「スマホの時代」と言えるかもしれません。

ということで、ここからは「スマホの時代で」というテーマで、これまでの誌面デザインの考え方と何が変わってきたのかを探ってみます。
そして、そんな時代のフォントの行方も追ってみたいと思います。

判型の無い世界?

さて、唐突な謎かけになりますが、スマホなどの電子デバイスに判型は存在するのでしょうか。

次の図1は、紙と電子デバイスのサイズの種類をざっくりと調べたものです。紙媒体はサイズの単位をミリで、電子デバイスはピクセルで示しています。

それぞれに様々なサイズがありますが、紙の判型に比べて電子デバイスの種類は圧倒的に多いことが分かります。

図1 主な判型と画面サイズ
図1 主な判型と画面サイズ

ここで改めて気が付くのは、紙媒体のサイズは JIS や ISO で規定されており、どの国のどのようなメーカーが印刷用紙を作ったとしても基本的な判型は同一であるということです。

これに対し、電子デバイスは端的に言ってバラバラです。
メーカーの都合次第で、これからもっと増えていくかもしれません。

私たちは相当長い間、「紙」という媒体と付き合ってきました。
様々な用紙サイズが生み出され、それが判型として標準化され、今日に至っています。

私たちはその標準化された判型から様々な想像を掻き立てられて、印刷用紙というキャンバスに向かって作品を作ってきました。
つまり判型こそデザインの基本条件だったはずです。

また内容、すなわちコンテンツについては、各国の言語とフォント、およびこれに応じた組版ルールといった、それぞれの国に最適の印刷物を作ることができました。
別の言い方をすれば、自分の国のことだけ考えていればよかったわけです。

またレイアウトデザインは印刷用紙という揺るぎのない、固定化された空間にしっかり定着していました。
今まではそれがごく当然のことで、こんなことを考える必要はなかったわけです。

しかし電子デバイスの時代になると、かなり事情が変わってきます。

まず表示デバイスには、紙媒体のような定まった判型というものがありません
どんなサイズや解像度、縦横比であっても快適に表現できなければなりません。

また、コンテンツの表現はグローバルに対応していなければなりません。
インターネット時代の今日、あらゆる情報はすべてグローバル対応であることを求められています。

あらゆるデバイス、すなわちPC、スマホ、タブレットなどのハードウェアや、ブラウザ、EPUBリーダー等のアプリケーション、様々な開発ツールといった異なる環境間であっても、フォントや組版ルールを共通して利用できるようにする必要があります。

紙媒体では、他の国のことをあまり気にしないで、各国ごとに自由に表現できていたこととは対照的に、電子媒体ではグローバルな標準の中でしか表現が許されないわけです。

図2 紙媒体と電子媒体の特性
図2 紙媒体と電子媒体の特性

フォントのグローバル化については、「【14】文字コードについて」の中で、解説した通りです。



【次回予告】

次回は電子媒体の世界標準について、日本語組版の標準化などを交えて振り返っていきます。


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