印刷用書体の開発とデジタルフォントの未来 #31|様々なタイトル書体の事例から
これまで主に本文の文字組版について見てきました。
話は変わって、ここからはタイトルの話をしたいと思います。
私は日本経済新聞日曜版の「NIKKEI The STYLE」という連載コラムの書体に興味を持っていました。
このコラムは毎回異なるテーマを取り上げていますが、面白いのは、少し前までテーマに合わせてタイトル書体を変えていたことです。
中には、私ならこれは絶対使わないだろうと思えるフォントもどんどん使っていました。

(出典:日本経済新聞日曜版「NIKKEI The STYLE」の記事タイトルの事例から)
図1の❶は、モリサワの「すずむし」という書体だと思います。
❷の書体は、砧書体制作所の「丸明オールド」かなと思っています。
❸は、フォントワークスの「マティスM」ではないかと思います。
❹は、砧書体制作所の「丸丸ゴシックA」と思うんですが、ちょっとこれは自信がありません。
最後の❺は、フォントワークス「筑紫アンティークL明朝」だと思います。
タイトルは次に続く本文を読ませるための、いわば客引きのような役割があります。読者の目を捉え、「本文」という店内に自ら好んで入っていくよう促すわけです。
そのため、タイトルのイメージは本文の内容を正しく訴えかけて、かつ魅力的でなければなりません。
この目的に適うタイトルであれば、仮にデザイナーが目を背けるようなフリーフォントが使われていたとしても、その試みは正解であるといえるでしょう。
また、その時点でそのフォントは「良いフォント」であるといえるのかもしれません。
肝心なことは文字組版
このことは何もタイトルに限った話ではありません。
私が駄目な組版をした写研書体の例や、情緒を醸し出す文字組の例のような、本文組にも言えることだと思います。
つまりフォントを活かすも殺すも文字組み次第なのです。
だからこそ、「肝心なことは文字組版」ということになります。
私はそろそろ制約ごとばかりのイメージがある「文字組版」という言葉を捨てて、「文字の演出」としてみたらどうかと思っています。
この方がよっぽど楽しそうで、文字の扱いもうまくなるような気がします。
そういえば、文字は英語で「キャラクター」(character)と呼びます。言ってみれば「役者」のようなものとも考えられそうです。
「文字」という役者を「文字組」という演出で花を咲かせることができたなら、すべてのフォントが「良いフォント」に成りえるのかもしれません。
【次回予告】
次回から「スマホの時代で」をテーマに、印刷用から画面表示用へと広がっていく、デジタルフォントの未来について考えていきます。
