【理論編】次期学習指導要領の「構造化」 とは?
次期学習指導要領に向けて、中教特別部会の論点整理で以下のような資料が出されたと思います。今、注目を浴びている下の図について、いまいちイメージがわかない、ピンとこない方も多くいるのではないでしょうか?

今回のnoteでは、「概念的理解」をカリキュラムの中核に据えている国際バカロレアの現場経験をもとに、上の図の解説をしていこうと思います。
まずは、「理論編」ということで、私なりの現段階の解釈/理解で理論をお伝えし、次のnoteでイメージが湧きやすいように実践編で提示できたらと思います。
私がこのnoteを解説する上での参考図書「概念型カリキュラムの理論と実践(以下黄色い本)」は以下の書籍になります。
まず、私なりの解釈として、この知識・技能における「総合的な理解」というのは、知識ベースの教科(社会、理科、数学等)と技能ベース(言語、芸術、体育等)の教科で、知識や技能の構造の仕方が異なると考えています。

ここからは、「知識」と「技能」それぞれの「タテの関係」について、黄色い本を私なりに解釈して整理していきます。
Point❶ 「知識」における「タテの関係」って?

ここで重要なのは、「知っている(事実)」と「理解する(概念)」の違いなのではないかと思います。
黄色い本でも次のように述べられています。
実力と識見に富み、1950年代から1960年代にかけて活躍した教育者のヒルダ・ダバ(Hilda Taba)は、社会科におけるさまざまなレベルの知識の抽象化と体系化を明確に説明している。タバは、事実情報を表面的になぞるような指導ではなく、概念と主要なアイデア(転移可能な概念的理解)のより深い理解に向かう指導を提唱した(Taba,1966)
次期学習指導要領で大切にされているのは、これまでの小さな個別の事実的な知識を網羅するような学びで止まるのではなく、その先にある「つまり…(So,what…???)」まで知識を統合、抽象化していくプロセスの中で、知識を構造化していくことになります。
大事なのは、これまで学校教育が積み上げてきた事実的な知識を学ぶことが軽視されるということではなく、そこでとどまらず事実的な知識を統合して、理解まで引き上げていく学びにアップデートしていくことになります。
エリクソンとラニング(Erickson &Lanning,2014)が示した「知識の構造」と「プロセスの構造」は総合的なアプローチをとっており、モデルの下位の部が概念の習得および一般化を支えている。各モデルの下位部分を飛ばしてしまうと、最終的な理解が不正確になるか、もしくは過度に一般化されたものになる危険性がある。ジョン・メディナ(Medina,2014)は、このような「事実に基づいた基盤の欠如」を「知性のエアギター」(p.38)と表現している。
具体例は次のnoteで示します。
以下のnote記事で紹介した本では、「社会科における概念の理解を導く単元デザインの考え方」がまとめられていました。
また、以下のnote記事で紹介している本では、「教科書を網羅しない授業デザインの考え方」についてまとめています。
気になる方は是非読んでみて下さい!
Point❷ 「技能」における「タテの関係」って?

ここで重要なのは、「実践する/できる(スキル)」だけではなく、このできるの背後にある「なぜ」や「どのように」についての理解を伴うスキルまで引き上げることになります。
黄色い本でも次のように述べられています。
国語の授業が独立したものとして扱われているのは、ここで取り組む要素の複雑さと重要性を生徒に概念レベルで理解してほしいからである。ストラテジーが複雑である場合、概念的な授業を意図的に設計しない限り、生徒がある時点でそのストラテジーについて知ることができたとしても、その後日後だったり、別の文脈に置き換えられたりしたときに、もう一度同じことを教え直さなければならないことがある。私たちが生徒に望むのは、たんなる「できる」ではなく、理解を伴った「できる」であり、概念的に達するためには、国語に特化した学習経験が必要になる。内容重視の授業のなかでたんなる「できる」をめざして練習する方法をとった場合、教師は生徒が複雑なスキルやストラテジーを理解しているものと誤って思い込んでしまうことがある。理想は、学際的な単元で生徒が用いる複雑なスキルやストラテジーを、まずは国語に特化した概念型単元で概念的かつ、包括的に教えておくことである。こうすることで、生徒はプロセス、ストラテジー、およびスキルがどのようにはたらくのか、またそれはなぜなのかについての概念的理解を確実に得られるようになる。
具体例は次のnoteで示します。
Point❸ 「ヨコの関係」って?
先ほどの「タテの関係」では、(教科書で扱われるような)知識・技能をどのように「深い理解」にまで引き上げていくのか(第一フェーズ)を説明しましたが、今回は、ここで育まれた知識・技能をどのように活用していくのか(第二フェーズ)になります。

以下の教育新聞では、わかりやすく解説されていましたので、引用して説明します。
下の図を見ると分かるように、知識や技能がないと、活用(思考力・判断力・表現力)できないというのは、想像ができると思いますが、必ずしも、知識や技能がないと活用できないというわけではないと思います。この「ヨコの関係」というのは、知識技能が100%準備されていないと、ヨコにいけないという一方通行的な考え方というよりは、行ったり来たりをしながら、それぞれの総合的な理解や発揮力を高めていくようなものだと私は考えています。

では、教科で学んだ「知識・技能」をどのように、「持っている」状態から、「使い方」がわかり、「自在に活用できる」レベルまで引き上げていくことができるのでしょうか?
私なりの解釈として、これは、先ほどの技能ベースで取り上げたプロセスの構造の考え方を同じように応用できるのではないかと考えています。

先ほどは教科の技能に特化したプロセスの理解でしたが、ここでは、教科の枠を超えて、学際的な単元で生徒が用いることができる複雑な(汎用的な)スキルを学んでいく大きなプロセスとしての構造を表しています。
黄色い本には以下のように書かれています。
どの教科でも、しっかりとしたカリキュラムの単元では通常、「知識の構造」と「プロセスの構造」の両方が反映されている。程度の差はあれ、生徒を深い理解に至らせるためには両方が必要となるからである。
また、緑の本にも以下のように書かれています。
知識ベースの理解とプロセスベースの理解が組み合わさったとき、生徒はその教科を真に理解し、「積極的な探究者になるためには知識とプロセスの両方が重要である」ということを認識できるようになる。
今回のnoteでは、次期学習指導要領の「構造化」 を、国際バカロレアのカリキュラムが参考にしている「概念型探究」の考え方を切り口にして解説を試みてみました。
まだ、イメージしにくいところが多いと思うので、これから少しずつ国際バカロレアでの教育現場の経験から、具体的な授業実践事例を振り返りながらの解説に挑戦していきます。
そもそも「知識の構造って何なのか?」「プロセスの構造って何なのか?」
これから少しずつ言語化をしていきたいと思います。
また、以下の4つの矢印の関係についてまとめてみました。よかったらこちらもご覧ください。
⚫︎次期学習指導要領の「知識の階層化」を紐解くシリーズ<全4回>
・「個別の知識・技能」と「個別の思考力・表現力・判断力」の関係(リンク)
・「個別の知識」と「中核的な概念の深い理解」の関係(リンク)
・「個別の技能」と「中核的な概念の深い理解」の関係(リンク)
・「個別の思考力・判断力・表現力」と「複雑な課題の解決」の関係(リンク)
いつも読んでいただきありがとうございます。
