「また打てた」が積み重なる夜の話
『自信は派手さでなく回数で育つ』
すごい一打が出た日だけが、自信になるわけではありません。
本当の支えは、もっと静かなところで育っているのかもしれません。
練習場の灯りが好きな理由
夜の練習場には、独特の空気がある。
蛍光灯の白い光が打席を照らして、ネットの向こうは暗く沈んでいる。
隣の打席からは、乾いた芯の音が響いてくる。
自分のボールは少し右へ、また少し左へ。
それでも、またクラブを握る。
あの静かな時間が、私はずっと好きだ。
華やかなコースでも、仲間と笑い合うラウンドでもない。
一人で黙々と打ち続ける、平日の夜。
その積み重ねが、ゴルファーの「本当の自信」をつくっていると、最近しみじみ思う。
ドライバーが当たった日だけ元気になる、あの感じ
「今日は調子いい!」
ドライバーが芯を食った日は、気持ちよく帰れる。車のハンドルを握りながら、次のラウンドのことまで考えてしまう。
でも翌週、同じクラブを握ったら右へ大きく曲がった。
途端に、さっきまであった自信がしぼんでいく。
「あれは偶然だったのかも」
「やっぱり自分には才能がないのかも」
そんな声が、頭の中でざわめく。
これ、私自身の話でもある。
コーチという立場でいながら、自分のスイングが崩れると不安になる。
レッスンで生徒さんに「大丈夫ですよ」と言いながら、内心では「自分が一番焦ってるじゃないか」と思うこともある。
ゴルフの自信なんて、そんなに丈夫なものじゃない。
だからこそ、一発のナイスショットだけに頼ると、少し苦しくなる。
先週の生徒さんのこと
60代の女性の生徒さんがいる。
週に一度、レッスンに来てくれる方だ。
ある日、クラブを置いて少し下を向きながら、ぽつりと言った。
「先生、私って上手くなってないですよね」
理由を聞くと、「友達みたいに飛ばせないし、全然変わってない気がする」と。
でも私には見えていた。
3ヶ月前と比べたら、アドレスが全然違う。
バックスイングも、ちゃんと肩まで回るようになっている。
何より、前は続いていたダフリが、ずいぶん減っていた。
「Aさん、今日もちゃんと打てましたよね」
そう言うと、少し間があってから、
「……あ、そうですね」
と、表情がふっとやわらいだ。
派手な変化ではなかった。
でも確実に、「また打てた」が積み重なっていた。
こういう話は、レッスンの中で何度も見てきた。
ご主人の趣味に合わせて、60代からゴルフを始められた女性がいる。最初はドライバーでようやく100ヤード飛ぶくらいだった。
それでも、週に一度、淡々と続けていく。
「今日は当たらないですね」と笑いながらも、また次の週にクラブを握る。
「前より少し飛びましたね」と言うと、少し照れたように笑う。
そんな時間を2年、3年と積み重ねていくうちに、気づけばドライバーで170ヤード以上飛ぶようになり、家族の中で一番安定したゴルフをするようになった方もいる。
最初から派手だったわけではない。
ただ、やめなかった。
また来た。
また打った。
その回数が、静かにその人のゴルフを変えていった。
「自信」という言葉の勘違い
自信というのは、すごいことができた時に生まれると思いがちだ。
300ヤード飛んだとき。
バーディーが取れたとき。
同伴者に「上手いね」と言われたとき。
もちろん、それは嬉しい。
でも、そういう自信は意外ともろい。次の日に崩れたら、ゼロどころかマイナスになったような気持ちになる。
本当の支えは、もっと地味なところから育つ。
「昨日より少し体が動いた」
「また今日も練習に来られた」
「あのミスショット、前より早く切り替えられた」
そういう小さな事実の積み重ね。
『自信は派手さでなく回数で育つ』
この言葉の意味は、そこにある。
何かが急にすごくできるようになることじゃない。
「またやれた」という回数が、じわじわと、確かな土台になっていく。
今日から一つだけ試してみてほしいこと
練習が終わったあと、小さなことを一つだけ書いてみてほしい。
「今日、アドレスを丁寧に確認できた」
「今日、ハーフスイングで芯に当たった」
「今日、また練習場に来られた」
それだけでいい。
スコアでも飛距離でもなくていい。
この小さなメモが、3ヶ月後に「あ、自分ってちゃんと続けてきたんだ」という事実になる。
そしてその事実が、崩れにくい自信の根っこになる。
アプリのメモでも、手帳の隅でも、練習場のスコアカードの裏でも。どこでもいい。
ただ、「今日も打てた」を残しておく。
夜の練習場を出るとき
ボールかごが空になったら、グローブを外して、ゆっくり指を伸ばす。
汗が少し残っていて、グリップのにおいがする。
足裏に芝の感触はないけれど、マットの固さが今日打った球数を伝えてくる。
帰り際に、
「今日もやれたな」
そう思えたら、それでいい。
ナイスショットが出なくてもいい。
思ったほど飛ばなくてもいい。
また来られたこと。
また打てたこと。
その回数が、少しずつあなたをゴルファーにしていく。
焦らなくて大丈夫。
続けた数だけ、自信は静かに育っていく。
あなたが「また打てた」と感じたのは、最近どんな瞬間でしたか?

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