混み合うコースで自分のリズムを取り戻す
『急ぎの一打ほど深呼吸』
急いでいるときほど、ほんの一呼吸。
その一瞬が、ゴルフを少しやさしくしてくれることがあります。
土日のゴルフ場は、平日とは空気が少し違います。
朝イチの1番ホール。
カートのエンジン音があちこちで聞こえ、駐車場には車がずらりと並んでいる。
フェアウェイの向こうには、霞んだ山がうっすら見えて、芝の上にはまだ朝露が光っています。
本当なら、ゆったりした気持ちになれる景色です。
でも、ティーグラウンドに立つと、背中が少しざわつくことがあります。
前の組はセカンド地点で、グリーンが空くのを待っている。
気づけば後ろの組もカートを降りてきて、グローブをはめ始めている。
焦りで打った一打の、あの感触
こちらを見ているわけではないのに、見られている気がする。
「早く打たなきゃ」
その気持ちが入った瞬間、体は正直です。
肩が上がり、グリップに力が入り、いつものテンポがどこかへ行ってしまう。
構え直す間もなく振ってしまった一打は、たいてい思ったところへ飛んでいきません。
打った瞬間、手に残る鈍い感触。
芯を外した、あの小さな振動。
ボールはフェアウェイ左の木の手前へ、力なく転がっていく。
私はもう30年以上ゴルフをしていますが、それでも「後ろを待たせている」と感じた瞬間、スイングが自分のものではなくなることがあります。
ランドレッスンでの感じたこと
これは、初心者だけの話ではありません。
ゴルフを長く続けていても、焦るときは焦ります。
私も、いまだにそうです。
だからこそ、ラウンドレッスンで初心者の方と一緒にコースへ出るとき、私は技術以上に「段取り」を大切にしています。
コースデビューの生徒さんが3名いると、最初からスムーズに回れることの方が少ないです。
ボールの場所を探したり、クラブ選びに迷ったり。
グリーン周りでウェッジを置いた場所が分からなくなったり。
そんなひとつひとつが積み重なると、だんだん心が急いできます。
前の組に離されてきた。
後ろの組が近づいてきた。
早くしないと迷惑をかけるかもしれない。
そう思うほど、ゴルフが怖くなってしまうことがあります。
でも本当は、初心者の方に必要なのは「急いで打つこと」ではなく、「焦らなくていい準備」を先に作っておくことなんです。
急ぐことと、焦ることは違います。
急ぐための段取りがあると、心は意外と乱れません。
たとえば、次に使いそうなクラブを2〜3本持ってボールの場所へ向かう。
グリーン周りでは、使い終わったクラブを次に歩く方向、できればカートへ戻る動線側に置く。
素振りの回数も、最初から決めておく。
「1回だけ素振りをして打つ」と決めておけば、迷う時間が減ります。
場面によっては少し早歩きで移動する。
でも、打つ直前だけは一度息を吐く。
この小さな決めごとがあるだけで、焦りに飲み込まれにくくなります。
「急ぎの一打ほど深呼吸」
これは、少し逆説のように聞こえます。
急いでいるのに、深呼吸なんてしている場合じゃない。
そう感じる人もいるかもしれません。
でも体というのは正直で、「急げ」という信号が入った瞬間に、肩が上がり、腕に力が入り、テンポが崩れます。
急いで打った一打がいい結果を生まないのは、技術だけの問題ではなく、体の状態の問題でもあります。
深呼吸は、時間を取るためのものではありません。
「今ここにいる」という感覚を、体に一瞬だけ取り戻すためのものです。
息を吐いた瞬間、肩の力がわずかに落ちる。
グリップの力が、ほんの少しゆるむ。
その「わずか」が、スイングを変えてくれることがあります。
完璧に落ち着けなくていいんです。
少しだけ体がやわらかくなれば、それで十分です。
焦るとリズムは崩れます。
今日からコースで、試してほしいこと
最初から自分の中で「急ぐためのルール」を決めておくと、急いでいても焦りに変わりにくくなります。
次に使いそうなクラブを持つ。
クラブの置き場所を決める。
素振りの回数を決める。
打つ前に、息をひとつ吐く。
たったこれだけでも、コースでの余裕は大きく変わります。
芝の上を歩きながら、また次の一打を楽しみにできる
ラウンドの後半、少し疲れてきた頃のフェアウェイ。
木々の間から午後の光が斜めに差して、足元の芝がやわらかく沈む感触がある。
後ろの組がいても、前が詰まっていても、今この一打だけは自分のものです。
息を吐いて、ゆっくり構える。
そして、今できる一打を打つ。
それだけで、気持ちのいいゴルフは戻ってきます。
急いでいても、焦らなくていい。
そう思えた瞬間、景色が少し広くなる気がします。
そしてまた、次の一打が楽しみになってくるのです。⛳
後ろの組が気になったとき、あなたはどうやって気持ちを整えていますか?
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