池を越えるより、大切だった選択
『迷った時は、背伸びより安心できる選択をする』
迷うことは、弱さではありません。
一度立ち止まり、自分に合った選択を見直すための合図なのだと思います。
池越えのグリーンを前にして
残り150ヤード。
目の前には、陽の光を反射して、まぶしいくらいに輝く池があります。
風が水面をさらい、ちゃぷ、ちゃぷと小さな音を立てている。
手のひらにはクラブの重み。グリップを握り直すと、少し汗ばんでいるのが分かります。
「届くかな」
頭の中で何度も距離を計算しながら、結局いつもより強気に7番アイアンを選びました。
振り抜いた瞬間、手応えは悪くありませんでした。
ところが、ボールは途中で勢いを失い、静かに池へ吸い込まれていきます。
ぽちゃん。
その音だけが、妙にはっきりと耳に残りました。
「なんとかなるかも」が、いちばん怖い
ゴルフを始めたばかりの頃、こういう場面で欲を出してしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。
「今日は調子がいいから届くかも」
「あと少しだから、頑張ればいけるかも」
そう考え始めた時ほど、実は心の中に迷いが生まれています。
目の前にグリーンが見えると、つい背伸びをしたくなるものです。
届くかどうか怪しいクラブを握りながら、心のどこかでは「少し危ないかもしれない」と分かっている。
あの迷いは、一度狙い方を見直したほうがいいという、自分からの小さなサインなのかもしれません。
私も、迷って池に落としています
正直に言えば、私自身もいまだにこの罠にはまります。
先に打った同伴者のボールがグリーンに届かなかった。
それを見た瞬間、最初に決めていたクラブが急に不安になります。
「思ったより風が強いのかな」
「見た目以上に上っているのかな」
考え始めると、クラブを替えるかどうか迷い、いつの間にかグリップにも力が入っています。
そして、いつもとは違う速いテンポで振ってしまい、ボールは池へ。
普通に打てば、グリーンに届かなかったとしても、池には入らなかったかもしれない。
そんな悔しい思いを、私も何度もしています。
Bさんが選んだ、あの一本
以前担当していた40代の生徒、Bさんも、池越えのホールになると力が入ってしまう方でした。
ある日、同じような場面で、少し不安そうな表情を浮かべながら聞いてきました。
「7番で届くと思います」
言葉では届くと言っていますが、表情には迷いが残っています。
私はこう伝えました。
「届くかどうか迷う時は、ピンだけを狙わなくても大丈夫ですよ。グリーンの左側へ運びましょう」
Bさんは池のかからない方向へ狙いを変え、無理に振り切らず、安全な場所へボールを運びました。
結果はボギー。
決して派手な結果ではありません。
けれど、次のホールのティーグラウンドに立つBさんの表情は、それまでよりずっと穏やかでした。
あの時、スコアを守ったのは、クラブ選びそのものだけではなかったのだと思います。
自分の迷いを認めて、安心して振れる場所を選んだこと。
その選択が、次の一打まで良い流れを残してくれました。
安心を選ぶことは、逃げることではない
「迷った時は、背伸びより安心できる選択をする」
これは、いつも消極的にプレーしようという意味ではありません。
自信を持って振れる時は、思い切って狙っていい。
ただ、構える直前までクラブや狙いに迷っているなら、一度立ち止まってみる。
迷いを抱えたまま無理に振り切るより、安心して振れる場所へ目標を変えるほうが、結果として自分らしい一打になります。
経験のあるゴルファーが堅実に見えるのも、怖がっているからではありません。
今は攻める場面なのか。それとも、次につなぐ場面なのか。
その見極めを大切にしているのだと思います。
今日から試せること
練習場では、ナイスショットの飛距離だけでなく、少し当たりが悪かった時の距離も見てみてください。
7番アイアンが、最高で150ヤード飛ぶ。
それだけではなく、少しミスをした時は130ヤードくらいになる。
その幅を知っておくだけでも、コースでの迷いは少なくなります。
もう一つは、池を越える距離ではなく、池を安全に越えられる距離を基準にすること。
「うまく当たれば届く」ではなく、「少しくらいミスをしても越えられるか」と考えるだけで、クラブ選びはずっと穏やかになります。
次のラウンドで、池を前にしたら
次に池越えのグリーンを前にした時は、風の音や、水面のきらめきに少しだけ意識を向けてみてください。
迷いを感じたら、すぐに振らなくても大丈夫です。
クラブを替える。
狙いを横へずらす。
グリーンの手前に運ぶ。
安心して構えられる場所を選んだ先には、きっと穏やかな一打が待っています。
池を越えたかどうかよりも、自分で納得して選んだ一本のほうが、長く心に残ることがあります。
あなたは?

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