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迷いが出たとき、それはやめるサインかもしれない

『迷った日は低いリスクを選ぶ』


朝、練習場で

月曜日の朝は、練習場が少し静かだ。

週末のラウンドの疲れが残っているのか、打席に立つ人の数も少ない。
ボールを打つ乾いた音だけが、広い空間にぽつん、ぽつんと響いている。

空気はまだひんやりしていて、グリップを握る手にも少しだけ緊張が走る。

そんな朝、私はその日のレッスンのことを考えながら、アイアンをゆっくり素振りする。

今日はどんな生徒さんが来るだろう。
何に悩んでいるだろう。
どんな一打で迷っているだろう。

そう考えていると、ふと思い出す言葉がある。

迷いながら打つと、たいていうまくいかない。

これは、何度もコースで目にしてきたことだ。


「行けるかも」が大きなミスを生む

先週のラウンドレッスンでのことだった。

50代の男性、Iさんはゴルフを始めて2年目の方だ。
いつもは丁寧にショットを選ぶタイプなのに、その日は池越えのティーショットで少し表情が変わっていた。

グリーン方向には池。
風も少しアゲンスト。
届けば気持ちいい。でも、少しでも右に出れば池に入る。

Iさんは池と目標方向を何度も見比べながら、こう言った。

「先生、行けますかね……」
声のトーンに迷いがあった。

私はすぐに答えず、聞き返した。
「Iさんは、どう思いますか?」

すると、Iさんは少し笑って言った。
「行けるかも、って気持ちはあるんですけど……でも……」

その「でも」が、もう答えだったのかもしれない。

それでもIさんはドライバーを手に取った。
構えた瞬間、少し体が固くなっているのが見えた。
テークバックもいつもよりぎこちない。

インパクトの瞬間、フェースがわずかに開いた。

ボールは右へ飛び出し、そのまま池に吸い込まれていった。

「あー……」

Iさんは天を仰いだ。
その気持ちは、痛いほどよく分かる。

あの一打は、技術だけのミスではなかった。
迷いを残したまま、無理に振り切ってしまった一打だった。


迷いが出たとき、それはサインだ

ゴルフには、決断が必要な場面が何度もある。

池を越えるか。
手前に刻むか。
バンカー越えを狙うか。
ピンを直接狙うか。
グリーンの真ん中でよしとするか。

そのとき、頭の中に迷いが生まれることがある。

でも私は、その迷いをただの優柔不断だとは思っていない。

迷いは、体が出しているサインだ。

「今の自分には少し難しいかもしれない」
「風が読み切れていない」
「ライが思ったより悪い」
「成功するイメージがまだ薄い」

何かが引っかかっているから、迷いが出る。

だとすれば、その迷いを無視して「えいっ」と打ってしまうのは、勇気ではなく無謀に近い。

迷いが出たとき。
それは、「一度立ち止まってみよう」という合図なのかもしれない。


インストラクターだって、迷う

正直に言うと、私自身もこれが苦手だった。

若い頃、競技に出ていたときは、攻めるかどうか迷っても、

「ここで引いたら負け」
「逃げたらかっこ悪い」
「ここは勝負だ」

そんな気持ちが先に立っていた。

そして、迷いを抱えたまま打ってしまう。
大きく曲げる。
池に入れる。
そこから大叩きする。

そんな経験を、何度もしてきた。

当時は、攻めることが強さだと思っていた。
でも今は、少し違う見え方をしている。

本当に強い人は、迷ったときに立ち止まれる人だ。

自分の状態を正直に見て、
「今日はこっちにしよう」
と選べる人が、最後にスコアをまとめていく。


「低いリスクを選ぶ」はかっこ悪くない

ゴルフを始めたばかりのころ、安全な選択をすることを「逃げ」だと感じてしまうことがある。

でも、そうではない。

ダブルボギーになりそうな場面を、ボギーで止める。
池に入れそうな場面で、手前に刻む。
ピンを狙いたい場面で、グリーンの広い方を選ぶ。

それは逃げではなく、スコアを守る判断だ。

派手なナイスショットだけが、ゴルフを良くするわけではない。

大きなミスを避ける一打。
次が打ちやすい場所に置く一打。
気持ちを乱さずに済む一打。

そういう静かな一打が、ラウンド全体を助けてくれる。

格好いい攻めより、静かな判断。
それもまた、大人のゴルフだと思う。


今日から一つだけ試してみてほしいこと

今日のラウンドや練習で、一つだけ自分に聞いてみてほしい。

「今、迷っていないか?」

もし少しでも迷いを感じたら、より安全な方を選んでみる。

池越えが怖いなら、手前のフェアウェイに刻む。
バンカー越えに迷うなら、ピンを外してグリーンの広い方を狙う。
ロングアイアンが不安なら、短いクラブで次に打ちやすい場所へ運ぶ。

無理に攻めなくていい。
その一択だけで、次の一打の空気は変わる。

「やめておいてよかった」

そう思えたとき、少しだけホッとする自分がいるはずだ。
そのホッとした感覚は、案外、正解に近い。


迷いを知っている人が、うまくなっていく

Iさんは次のホールで、同じように少し迷う場面があった。

今度は無理に狙わず、安全なフェアウェイ側を選んだ。

「先生、今回は安全な方にしました」

少し照れたように笑っていた。

打ったボールは、フェアウェイの真ん中へ。
そこから落ち着いてアプローチを打ち、ボギーで上がった。

ホールアウトしたあと、Iさんが言った。

「なんか、こっちの方が気持ちよかったです」

その言葉が、とても印象に残っている。

迷うことは、悪いことではない。
自分のショットに正直に向き合っているから、迷いが生まれる。

その迷いを無視せず、ちゃんと聞いてあげる。
それだけで、ゴルフは少しやさしくなる。

月曜日の朝。
ひんやりした練習場の空気の中で、今日も誰かが静かに成長している。


あなたは最近、迷いながら打ってしまったショットがありますか?
「あのとき、安全な方にしておけばよかった」
そんな一打があれば、ぜひコメントで教えてください。


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