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うまくいかない日は、スイングより先に呼吸を整える

『乱れた日は、呼吸を長くする』

ミスが続く日は、直すことを増やすより、まず一度ゆっくり息を吐く。
それだけで、いつもの感覚に戻る入口が見つかることがあります。


朝の練習場で

朝いちばんの練習場は、まだ空気がひんやりしています。

夜露を含んだ芝は少し重く、打席に立つとスパイクの裏にじんわりと湿り気が伝わってくる。
遠くで鳥が鳴き、人もまばらな中、乾いた打球音だけが規則正しく響いています。

そんな静かな時間なのに、心の中はまったく静かではない朝もあります。

アイアンは右へ抜け、短いアプローチも距離が合わない。
体はいつもどおりのはずなのに、歯車がひとつずつずれていくような感覚です。

一球打つたびに首をかしげ、グリップを握り直す。
隣の打席から気持ちのいい音が聞こえると、自分だけが取り残されたような気持ちになることもあります。


誰にでもある、「乱れる日」

ゴルフを始めたばかりの頃は、こういう日があると「自分にはセンスがないのかもしれない」と落ち込んでしまいがちです。

一球ミスすると、次の一球が怖くなる。
怖くなると、グリップを強く握る。
早く取り戻そうとして、構えるまでの時間まで短くなる。

気づけば、息を吸ったままボールをにらんでいる。

焦っている本人は、早く打っているつもりも、力んでいるつもりもありません。
ただ、「次こそは」という思いだけが少しずつ動きを急がせていきます。

でも、そんな日に乱れているのは、スイングより先に呼吸なのかもしれません。


私も、息を止めています

私は長くゴルフを続け、レッスンもしてきましたが、今でも「ここは飛ばしたい」と思った瞬間に呼吸が止まることがあります。

肩が上がり、腕が硬くなり、いつもより速くクラブを上げてしまう。
打ったあとになって初めて、「そういえば、息をしていなかったな」と気づきます。

大切な場面だけではありません。

朝から仕事のことが頭に残っていたり、前のホールのミスを引きずっていたりすると、普段のショットでも呼吸が浅くなることがあります。
ゴルフとは関係のない焦りを、そのままクラブと一緒に振っているような日です。

以前はスイングの形ばかり気にしていました。

けれど最近は、準備運動の中に深呼吸を入れています。
体を整えるというより、今日の自分がどんな速さで動こうとしているのかを知るためです。


Hさんとの練習場での出来事

先週、レッスンに来られたHさんは、その日アイアンが何度打っても右へ抜けていました。

「なんで今日は、こんなにダメなんですかね」

苦笑いするHさんに、私はスイングの話をする前に聞いてみました。

「打つ前、息を止めていませんか?」

Hさんは少し驚いた顔をして、「言われてみれば、止めているかもしれません」と答えました。

そこで、構える前に口からゆっくり息を吐いてもらいました。
吐き切ってから足元を確かめ、いつものテンポでクラブを振る。

次の一球は、先ほどまでより力みの少ない音で飛んでいきました。

もちろん、呼吸だけで毎回まっすぐ飛ぶわけではありません。
それでもHさんの表情は少しやわらぎ、「今のほうが振りやすいです」と笑いました。

そのあとも右へ飛ぶ球はありました。

けれど、先ほどまでのようにすぐ打ち直すことはありませんでした。
一度クラブを下ろし、息を吐いてから、もう一度ボールの前に立つ。
その姿を見て、結果より先にリズムが戻ってきたように感じました。


呼吸は、ミスを消す魔法ではない

『乱れた日は、呼吸を長くする』

これは、深呼吸をすればミスがなくなる、という話ではありません。

焦ると体は小さく縮こまり、視線はボールだけに集まり、動きも急ぎやすくなります。
長く息を吐くことは、その縮こまりを一度ほどいてあげる作業なのだと思います。

うまくいかない原因を、スイングの中にばかり探してしまう日があります。

グリップ、姿勢、クラブの上げ方。
直す場所を増やすほど、かえって自分の動きが分からなくなることもあります。

そんなとき、答えはスイングの手前にある一呼吸かもしれません。

呼吸を整えることは、ミスを消すためではなく、次の一球までミスに支配されないための小さな区切りです。


今日からできること

次にミスが続いたら、構える前に口からゆっくり息を吐いてみてください。

吸うことを頑張る必要はありません。
「ふうー」と少し長めに吐いて、肩が下がるのを待つ。
そして、足裏の感触を確かめてから構える。

もう一つ試すなら、息を吐いている間はボールを見ないことです。

遠くのネットや木々に目を向け、視野を少し広げてみる。
狭くなっていた気持ちも、景色と一緒にほんの少し広がることがあります。

直そうとするのは、そのあとで十分です。


ほどけた先にあるもの

朝日が練習場の芝に差し込み、夜露が小さく光る時間があります。

長く息を吐いたあとの一打が、必ずナイスショットになるとは限りません。
それでも、少しだけ自分らしいテンポで振れたなら、その一球には十分な意味があります。

乱れた日があってもいい。

むしろそんな日こそ、自分の呼吸に戻る練習ができる日なのかもしれません。

乾いた打球音が朝の空気に溶けていく。
その音を聞きながら、次の一球を急がずに置く。

ゴルフには、打つことだけではなく、戻ることを覚える楽しさもあるのだと思います。


あなたはミスが続いたとき、どんな方法でいつもの自分に戻っていますか。


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