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ミスのあと、一歩下がるだけでゴルフは崩れにくくなる

『一歩引ける人は、崩れにくい』

取り返そうと前へ急ぐより、一度だけ後ろへ下がる。
その小さな間が、次の一打を助けてくれることがあります。


夕暮れのグリーン、静かなのに心はざわつく

日が傾き始めた午後のコース。

芝の匂いが少し濃くなり、グリーンの上を渡る風が頬をなでていきます。
カップへ向かって歩く足音だけが、やけにはっきりと聞こえる時間です。

周りは静かなのに、頭の中だけがざわついている。

そんな瞬間を、ゴルフをしていると何度も経験します。

グリーン周りからの寄せが大きくオーバーした直後は、特にそうです。

手のひらには、まだクラブの感触が残っている。
カップの奥でボールが止まるのを見て、小さなため息がこぼれる。

同伴者を待たせている気がして、心だけが先へ急いでしまうこともあります。


「早く取り返したい」という気持ち、よく分かります

ゴルフを始めた頃、私も同じでした。

ミスをした直後ほど、次の一打で早く取り返そうとしていました。

ボールのところへ急いで歩き、傾斜や芝の向きも十分に見ないまま、「今度こそ寄せる」と打ってしまう。

うまくいけば救われます。

けれど、多くの場合はさらにオーバーしたり、反対側まで転がったりして、最後は笑うしかなくなる。

そんな経験がある方は、きっと少なくないと思います。

焦りは、悪いものではありません。

真剣にプレーしているからこそ、「次こそは」と思うのです。

ただ、焦ったままの体は、いつもの動きを忘れやすくなります。

呼吸が浅くなり、肩が上がり、グリップも自然と強くなる。
頭では「落ち着こう」と思っていても、体は正直です。


恥ずかしながら、私も今でも崩れます

長くゴルフを教えていても、私自身、グリーン周りで欲を出してしまうことがあります。

「ここで決めたい」

その気持ちが強くなると、必要以上に強く打ってしまう。
カップを越えて大きくオーバーし、返しのパットまで外してしまう。

冷静に考えれば、無理に入れにいかず、強く打ってもここまでとオーバーラインも決めておけばいいのですが。

頭では分かっています。

それでも、「あわよくば入ってほしい」という欲が、クラブを少し強く動かしてしまうのです。

大切なのは、一度も崩れないことではありません。

崩れかけたときに、自分なりの戻り方を持っていること。

そのほうが、私たち普通のゴルファーには、ずっと現実的なのだと思います。


Bさんが教えてくれた、一歩下がる強さ

50代の生徒さん、Bさんは、寄せを失敗すると早打ちになりやすい方でした。

ある日のラウンドでも、アプローチが大きくオーバーしました。

Bさんは、ボールのところへ急いで歩き、そのままパターを構えようとしました。

その瞬間、私は声をかけました。

「一度、ラインを見直してみましょうか」

Bさんは少し戸惑った様子でしたが、構えを解き、一歩ほど後ろへ下がりました。

そして、ボールとカップの間をもう一度眺め、しゃがんで傾斜を確認しました。

再び構えた表情は、先ほどより少しやわらかく見えました。

打ち出されたボールは、慌てることなくカップへ向かい、そのまま静かに沈みました。

もちろん、パットが入ったこともうれしかったと思います。

けれど私には、結果以上に、Bさんが自分で落ち着きを取り戻して打てたことが印象に残りました。

ラウンド後、Bさんはこう話してくれました。

「一度見直しましょうと言ってくれたのが、よかったです」

それ以来、Bさんはミスをしたあと、すぐに構えず、一度立ち止まるようになったそうです。

「慌てると、コーチの声が聞こえてくるんですよ」

そう笑って話してくれるたびに、私もうれしくなります。


一歩引くことは、弱気になることではない

『一歩引ける人は、崩れにくい』

これは、我慢強さや消極性の話ではないと私は思っています。

一歩下がることで、自分と状況を少し離れた場所から見直せる。

ボールだけを見ていた視線が、カップや傾斜、周りの景色へと広がっていく。
浅くなっていた呼吸も、少しずつ戻ってきます。

前へ進むために、あえて一度下がる。

それは逃げではなく、自分を取り戻すための小さな技術です。


今日から試せる、たった一つのこと

次にミスをして焦りを感じたら、すぐにボールへ向かわず、一歩だけ後ろへ下がってみてください。

そして、木や空、グリーンの色を一度だけ眺めます。

できれば、その景色を見ながら、息を長く吐いてみてください。

それだけで十分です。

ほんの数秒の間ですが、心と体を次の一打へ切り替えるスイッチになってくれます。


夕暮れの一打に、もう一度

日が沈みかけたコースで、一歩下がって息を吐く。

木々が揺れる音や、湿った芝の匂いが、固くなった気持ちを少しずつ緩めてくれます。

遠くで鳥の声が響き、空の色がオレンジから薄い紫へと変わっていく。

ミスを取り返すことに夢中になっていると、見えなくなってしまう景色です。

その景色に気づいて、もう一度ボールへ向き直る。

次の一打が必ずうまくいくとは限りません。

それでも、焦りに押されて打つ一打より、自分で選んで打つ一打のほうが、きっと気持ちよく前へ進んでいきます。


あなたが「早く取り返したい」と焦ってしまうのは、どんな場面ですか。
次のラウンドでは、その瞬間に一歩だけ下がってみませんか。


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