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焦らないゴルフは、スタート前から始まっている

『余裕は、待つより作るもの』

調子がよくなるのを待つより、ひとつ先の準備をしておく。その小さな行動が、コースでの心を少し軽くしてくれます。


早朝のコースで

まだ日が完全に昇りきらない時間のコースには、独特の静けさがあります。

芝は夜露でしっとりと濡れ、歩くたびに靴底からひんやりとした感触が伝わってくる。遠くではスプリンクラーが水をまき、練習グリーンからはパターでボールを打つ「コツン」という音が響いています。

そんな朝、スタート前のベンチに座り、自分の調子が上がってくるのを待っている生徒さんを見かけることがあります。

「今日は、なんだか体が重いな」
「早く調子が出てくれないかな」

そう願う気持ちは、私にもよくわかります。


誰にでもある、「調子待ち」の時間

ゴルフを始めたばかりの頃は、うまく打てない理由を「今日の調子」のせいにしてしまいがちです。

素振りをしてもしっくりこないまま1番ホールを迎え、案の定、最初の一打が右へ飛んでいく。

すると、「やっぱり今日は調子が悪い日なんだ」と決めつけてしまいます。

調子というものを、天気のように向こうからやってくるものだと思ってしまうのかもしれません。

けれど実際には、待っているだけでは、なかなかこちらへ近づいてきてくれません。


私も、急かされると慌てます

普段は落ち着いてプレーできていても、「前の組と離れています。
少し急いでください」と声をかけられると、私も途端に慌てます。

アドレスが雑になり、クラブ選びが適当になり、急いだはずなのにミスをして、さらに時間がかかってしまう。

ラウンドレッスンでも、これはよく起こります。

初心者さんに急いでほしいと思っても、「急いでください」と言えば、焦りからミスが増えてしまうことがある。

だから私は、なるべく余裕のある表情をしながら、クラブを運んだり、カートを動かしたり、次の準備を整えたりしています。

表面上は涼しい顔をしていますが、ラウンドが終わった後は、なかなかの疲労感です。

余裕の顔も、ときどき筋トレになります。


Yさんからいただいた言葉

以前、コースデビューを控えたYさんのラウンドレッスンを担当したことがあります。

私はスタート時間の1時間前に集合して、ティーやボール、マーカーなどを準備することをお伝えしました。

コースでは次に使いそうなクラブを3本ほど持って移動すること。

グリーン周りでは、使ったクラブを次のホールへ向かう側に置くこと。

そんな説明を何度もしていました。

ところがYさんからは、後日こう言われました。

「初めてのコンペ前だったので、傾斜地からの打ち方や、ルールをもっと教えてほしかったです」

その言葉を聞いたとき、私も説明の仕方が悪かったのだろうかと考えました。

けれど、コンペが終わった後のレッスンで、Yさんは笑顔で話してくれました。

「コーチ、すみませんでした。コースに出ると、やることが本当に多いんですね」

一緒に参加した同期の方たちは、クラブを取りに戻ったり、どこに置いたかわからなくなったりして、プレーに集中できなかったそうです。

「準備やクラブの置き場所を教えてもらった意味が、やっとわかりました。あれがあったから、私は焦らずにプレーできました」

その言葉を聞いたとき、私の中でも今日の言葉が、あらためて腑に落ちました。


余裕は、準備の中にある

『余裕は、待つより作るもの』

これは、気合いで調子を上げようという話ではありません。

早めに動くことや、次を予想して準備すること。
その小さな積み重ねが、焦らなくてもいい時間を作ってくれるということです。

クラブを取りにカートへ戻る。

忘れ物を探しに来た道を引き返す。

そうした動きが重なると、時間だけでなく、心の落ち着きまで少しずつ失われていきます。

反対に、使うかもしれないクラブをあらかじめ持っていれば、ミスをしても「持ってきてよかった」と、すぐに次の一打へ向かえます。


今日からできる、ひとつの準備

初心者の方には、コースで持ち歩くクラブの本数を、最初に決めておくことをおすすめしています。

たとえば、グリーンまで距離が残っているときは3本。

グリーン周りでは、ウェッジ2本とパターの3本。

毎回同じ本数を持つようにすると、「1本足りない」と、置き忘れにも気づきやすくなります。

細かい技術ではありません。

けれど、こうした準備がプレーの流れを守り、自分の一打に集中するための余白を作ってくれます。


自分で整えた一打

朝日がじわりと芝を照らし始める頃、早めに準備を終えた人の表情は、どこか穏やかに見えます。

待って手に入れた余裕より、自分で作った余裕のほうが、少し長く続くのかもしれません。

調子が戻るのを待つ日があってもいい。

けれど今日は、ほんの少しだけ先に動いてみる。

その小さな準備が、次の一打を軽くし、目の前に広がるコースの景色まで楽しませてくれるはずです。


あなたはラウンド前やプレー中、どんな準備をすると心に余裕が生まれますか。


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