実践・リスクマネジメント[概要編] - - マネジメントの道具箱
はじめに
私たちの生活や仕事には、さまざまなリスクが潜んでいます。企業経営、ITシステム、自然災害、法律問題など、リスクは多岐にわたります。これらのリスクを適切に管理し、被害を最小限に抑えるための手法が「リスクマネジメント」です。
ここでは、リスクマネジメントの基本概念から歴史、現在のトレンド、実践方法までを解説します。
1. リスクマネジメントとは?
1.1 歴史と背景
リスクマネジメントの概念は、古代から存在していました。例えば、古代メソポタミアの商人は、商品が紛失した際の損失を分担するために「保険」のような仕組みを用いていました。
19世紀
産業革命により労働災害や環境リスクが増加し、保険や安全対策が発展しました。
20世紀中盤
戦後、企業経営や金融におけるリスクマネジメントが体系化されました。
21世紀
ITの発展により、サイバーセキュリティや情報漏洩対策が重要視されるようになりました。
1.2 リスクとは
リスクとは、将来における不確実な出来事が、望ましい結果ではなく、望ましくない結果をもたらす可能性のことを指します。簡単に言えば、リスクは「何か悪いことが起こるかもしれない」という可能性を意味します。
リスクは避けることが難しいため、多くの場合、適切な対策や計画を立ててその影響を最小限に抑えることが重要です。
1.3 リスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、潜在的なリスクを特定し、その影響を最小限に抑えるための計画を立て、実行するプロセスのことを指します。
リスクマネジメントの基本プロセス
(1)リスクの特定/洗い出し
どのようなリスクが存在するかを洗い出します。
(2)リスクの分析/評価
リスクの発生確率や影響度を評価します。
(3)対策の立案/計画策定と実施
回避、低減、移転、受容などの対策を講じ、実施します。
(4)継続的な監視と見直し
継続的にリスクを監視し、対策を改善します。
1.4 リスクマネジメントの対象
現代のリスクマネジメントは、単なる危機対応ではなく、経営戦略の一部として重要視されています。
特に以下の分野でのリスクマネジメントが注目されています。
(1)IT・サイバーセキュリティ
情報漏洩、ハッキング、データ破壊、など
(2)金融・経済
市場の変動、為替の変動、企業倒産、など
(3)自然災害
地震、洪水、パンデミック、など
(4)法務・コンプライアンス
法令違反、知的財産権侵害、訴訟、など
(5)経営戦略
M&A(合併・買収)、サプライチェーンの途絶、など
2. リスクマネジメントの実践方法
リスクマネジメントを実践する際には、以下のステップを踏むことが重要です。
2.1 リスクの特定/洗い出し
リスクを予測するために、たとえば以下のようなツールを使用します。
・ブレーンストーミング
・インタビュー
・チェックリスト
・フローチャート
・SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威の分析)
・ヒヤリハット(事故につながる可能性のある事象)の収集
【例】新しいプロジェクトの開始時に、潜在的なリスクをリストアップし、それぞれのリスクがどの程度かを評価します。
2.2 リスクの分析/評価
リスクの「発生確率」と「その影響」を評価(スコア化)し、対応策策定の優先順位を決定します。
評価方法には
・定性的評価
→リスクの大きさを「高・中・低」で評価
・定量的評価
→数値を使用してリスクを評価
があります。
【例】プロジェクトの遅延がどのくらいの確率で発生するのか、遅延が発生した場合の影響度合いを評価します。
2.3 対策の立案/計画策定と実施
(1)リスクを減少させるための対策を策定
以下の4つのいずれかに該当する対策を考えます。
A.リスクを回避する
「該当する情報などを保有しない」、「該当する行為をしない」などにより、リスクのある状況に巻き込まれない様にします。
B.リスクを減少させる
適切な管理策を適用することで、受容可能となるように、リスクを低減します。
【例】セキュリティ強化として、「強固なファイアウォールの導入」、「社員に対するセキュリティトレーニングの実施」など。
C.リスクを移転/転嫁する
別の対策を取ることにより、損失の負担を他者と共有します。
【例】「損害保険に入る」、「取引先との契約事項で担保する」など。
D.リスクを受容する
リスクからの損失の負担を受容します。「残存リスク」はあるものの、受容基準以下のため、現状維持とします。なお、リスクが発生した場合に備えて、予防策を取る場合があります。
(2)リスクが発生した場合の対応を策定
「緊急時対応計画」や、リスクが現実化した際の「回復計画」を作成します。
【例】自然災害が発生した場合に備えて、「従業員の避難訓練」を実施し、「業務継続計画」を策定する、などです。
2.4 継続的な監視と見直し
リスクの発生状況を継続的に監視し、新たなリスクの発生を早期に察知します。定期的なリスクレビューや、リスク管理計画のアップデートを行います。
【例】「定期的なリスクアセスメントの実施」、「定期的なプロジェクト進捗状況の確認」、などによりリスク発生の兆候がないか監視します。兆候が見られた場合は、必要であれば、その内容や状況に応じた改善策を適用します。
3. リスクマネジメントの今後
今後のリスクマネジメントでは、AIやデータ分析の活用がさらに進むと考えられています。
・AIとビッグデータの活用
リスク予測の高度化を図ります。
・サプライチェーンリスクの管理強化
グローバルな視点でのリスク把握を行います。
・サイバーリスクの増大
クラウド、IoTに対応したセキュリティ強化を図ります。
・環境・社会・ガバナンス(ESG)リスクへの対応
企業の持続可能性を重視します。
4. 書籍の紹介
(1)図解ひとめでわかるリスクマネジメント第2版
仁木 一彦 (著)
東洋経済新報社 (2012/1/27)
災害、事故、粉飾などの企業不祥事がひとたび起これば、ある日突然、巨額賠償が発生し、会社が消滅することも。では企業は、生殺与奪を握るリスクにどのように備えればいいのか?「リスクマネジメントの全体像がつかめた」「実務でもそのまま使わせてもらっている」など好評を博した入門書に、表現の見直し、事例の追加、情報のアップデートを加え、東日本大震災以後その必要性が再認識された事業継続計画(BCP)に対応した章を新設した改訂第2版。総務・法務・企画担当者必読の一冊。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
(2)エンジニアのためのリスクマネジメント入門
田邉 一盛 (著)
技術評論社 (2020/2/27)
伝統的なリスクマネジメントは、すでに体系化された分野と言えます。しかし、FinTechやIoTの普及により多様化する複雑な事業には、これまで大企業で培われた画一的なリスクマネジメントでは限界があります。このような状況の中、ITベンチャーなど企業の規模を問わず、多くの企業でリスクマネジメント資格や知識を持つエンジニアの採用ニーズが高まっています。そこで本書では、リスクマネジメントの基礎的な説明にとどまらず、ITに関連した具体的なトラブル事例からも学べる構成になっています。リスクマネジメントを学びたい、仕事にしてみたい方にお勧めです。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
(3)ケースで学ぶ組織と個人のリスクマネジメント
石川 慶子/木村 栄宏 (著)
株式会社産労総合研究所出版部経営書院 (2024/7/3)
社員の不祥事、事故、パワハラ、あるいはSNS炎上など、組織はもちろん、個人としてもさまざまなリスクに直面することがあります。これらのリスクを予測して回避するためにどうすればよいのか、起きてしまったときの損失を最小限にするにはどうすればよいのか。本書では、リスクマネジメントの基本の理解から、クライシス対応・メディア対応などの具体的な進め方、および事前のトレーニング方法などについて、わかりやすく解説しています。多くの具体的な事例を掲載することで、「気づき」も得られる内容です。リスクマネジメントや危機管理対応は、企業の総務や広報担当はもちろん、多くの人にとって知っておくべき内容です。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
(4)これだけは知っておきたいリスクマネジメントと危機管理ガイドブック
東京海上ディーアール株式会社 (編集)
同文舘出版 (2022/9/23)
リスクマネジメントと危機管理の基本を網羅的に解説し、かつ、感染症対策、パンデミック時の事業蒸発、品質偽装といったコンプライアンスなど、現代的トピックも紹介する。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
(5)なぜリスクマネジメントは組織を救うのか――リーダーのための実践ガイド
勝俣 良介 (著)
ニュートン・コンサルティング株式会社 (読み手) 形式: Kindle版
経営者から現場のプロジェクトリーダーまで、組織のさまざまなリーダーに向けたリスクマネジメントの実践書。業務で起こりがちな具体例を取り上げ、リスク対応のポイントを解説する。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
おわりに
リスクマネジメントは、個人や企業が不確実な未来に備え、損失を最小限に抑えるための重要な手法です。
時代とともにリスクの種類も変化しており、最新の情報をキャッチアップしながら適切な対策を講じることが求められます。
今回紹介したことは、あくまでもリスクマネジメントの入り口/概要です。まだまだ奥の深いものがあります。正しい考え方/やり方を理解して、効果のあるリスクマネジメントの実現に結びつけてください。
リスクを正しく理解し、適切に管理することで、より安全で持続可能な社会を実現していきましょう。
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