実践・問題分析[概要編 ]- - 思考と分析の道具箱
1.はじめに
世の中には、さまざまな問題が存在しています。
その問題が発生した原因を見つける方法を知っていますか。
正しく「問題分析」を使いこなして「根本的な原因」を見つけることができなければ、適切な対策をとることはできません。
ここでは、問題発生の原因を掘り下げて追究する「問題分析」について、「基本的な考え方」を解説したいと思います。
2.問題分析とはなにか
「問題分析」とは、
・発生している問題の本質を明確にする
↓
・原因を特定する
↓
・解決策を導く
ためのプロセスのことです。
単に「問題点を探す」だけではなく、問題の構造や影響範囲を理解して、適切な対策を講じるための論理的なアプローチを指すのです。
なぜ問題の原因分析が重要なのでしょうか?
問題の本当の原因を突き止めないまま対策を講じると、一時的な解決にしかなりません。問題が再発したり、別の問題を引き起こしたりしてしまいます。そのため、効果的な解決策を立てるには、根本原因を明らかにすることが重要なのです。
3. 問題分析の目的
問題分析の目的は、以下のように整理できます。
(1)問題の正確な理解
現象だけでなく、根本原因を特定する。
(2)影響範囲の把握
問題がどこに、どれだけの影響を及ぼしているのかを分析する。
(3)解決策の検討
効果的で持続可能な解決策を見つけるための基礎を作る。
(4)意思決定のサポート
組織やチームが適切な対応を取れるようにする。
4.問題分析が必要な場面
問題分析が必要な場面は、あらゆる分野に存在します。たとえば次のようなものがあります。
(1)ビジネス・経営
売上低迷、納期遅延、など
(2)製造・品質管理
不良品増加、生産ライン停止、など
(3)IT・ソフトウェア
システム障害、バグの多発、など
(4)医療・ヘルスケア
診断ミス、院内感染、など
(5)教育
学力低下、不登校、など
(6)サービス業
クレーム増加、リピーター減少、など
(7) 日常生活
家計費の赤字、ダイエット効果なし、など
問題が発生したら、適切な分析手法を用いて原因を特定し、解決策を考えることが重要です。
5.そもそも「問題」とは何か?
「問題」とは、あるべき理想の状態と現実の状態との間にギャップがあり、そのギャップが望ましくない影響を与える状況を指します。

(1)問題の3つのタイプ
A.発生型の問題(原因追求型の問題)
クレームの発生、不具合の発生など、問題が目の前で起こっているものです。「見える問題」といえます。その処置を考え、次になぜそのようなことが起こったのかの原因分析が必要となります。
B.探索型の問題(探す問題/疑ってみる問題)
現在特に問題が発生しているわけではないものの、目標を現在よりも高く設定することによって、意識的にギャップをつくり出すというタイプの問題です。
「生産性を上げるには」、「職場の活性化を図るには」など。目の前で発生しているわけではないので、よく考えないと気づきません。
C.設定型の問題(つくる問題)
今までにない全く新しい課題を設定する場合の問題です。「未来」または「あるべき姿」から発想して、現在何をしなければならないかを考えるのです。将来の問題を予測して取り組む、変化を先取りする問題といえます。
(2)発生型の問題の例
A.製造業における品質不良
【問題】「製品の不良率が上がっている」
【理想の状態】不良率が低く、品質の安定した製品が作られる。
【現実の状態】不良品の発生率が上昇し、クレームが増えている。
B.ITシステムの障害
【問題】「Webサイトが頻繁にダウンする」
【理想の状態】安定して稼働し続ける。
【現実の状態】アクセスが増えるとサーバーが落ちる。
C.働き方改革の失敗
【問題】「テレワーク導入後に業務効率が下がった」
【理想の状態】テレワークによって生産性が向上する。
【現実の状態】業務の進捗が滞り、コミュニケーション不足が発生。
6.「原因」とは何か?
「原因」とは、「問題」が発生する直接あるいは間接の要因のことです。原因を正しく特定することで、適切な対策を立てることができるのです。
たとえば、
(1)製造業における品質不良
【問題】「製品の不良率が上がっている」
【原因分析の例】
A.直接的な要因(表面的な原因)
•機械の設定ミス
•作業員の操作ミス
B根本原因(本質的な原因)
•機械の定期点検が適切に行われていなかった(保守管理の問題)
•作業員の教育訓練が不足していた(スキル不足)
(2)ITシステムの障害
【問題】「Webサイトが頻繁にダウンする」
【原因分析の例】
A.直接的な要因(表面的な原因)
•サーバーの負荷が高すぎる
•データベースの応答時間が遅い
B.根本原因(本質的な原因)
•サーバーのスペックが現在のアクセス数に対して不足している(インフラ設計の問題)
•負荷分散の仕組みが導入されていない(システム設計の問題)
(3)働き方改革の失敗
【問題】「テレワーク導入後に業務効率が下がった」
【原因分析の例】
A.直接的な要因(表面的な原因)
•会議や打ち合わせの回数が増え、作業時間が減少した
•チャットツールの活用が不十分
B.根本原因(本質的な原因)
•テレワークに適した業務フローやルールが整備されていない(制度設計の問題)
•企業文化として、対面コミュニケーションに強く依存していた(組織文化の問題)
これらの「原因」に対して、適切な対策を取ることで、「問題解消」に向かうことができるでしょう。
7.問題分析の進め方
「問題分析」と、分析結果に基づく「対策」実行までの具体的な進め方について解説します。
(1)問題の把握(何が起きているのか)
•何が問題なのか?(現象の把握)
•どのような影響があるのか?(被害・影響範囲の特定)
【ポイント】
・解決しようとしている問題を明確にする。
→「あるべき姿」と「現状」とを明確にし、「ギャップ」を把握する。
(2)情報の収集
•データや事実を集める(定量データ・定性データ)
•調査、関係者へのヒアリング、など
(3)原因の分析(なぜ起きているのか)
•「なぜなぜ分析」や「特性要因図」などを用いて、根本原因を探る。
•「パレート分析」などで、影響度の高い要因を特定する。
【ポイント】
・「問題の本質」をとらえ、問題を引き起こしている原因を明確にする。
→「なぜ」「なぜ」「なぜ」と「原因/要因」を深く追求する。
(4)解決策の検討(どうすればよいのか)
•原因に基づき、適切な対応策を考える。
•実現可能性やコスト、効果を比較し、最適な方法を選ぶ。
【ポイント】
・「課題」を明確にし、解決方法を考える。
→「何をすべきか」という問いに対する答えを見つける。
(5)実行と評価
•解決策を実施し、問題が解決したか評価する。
•必要に応じて再分析を行い、継続的な改善を行う。
8.問題分析に使える手法/ツール
問題分析に使えるは手法/ツールには様々なものがあります。目的や状況に応じて使い分けることが重要です。
(1) なぜなぜ分析
問題の根本原因を特定するための手法です。
「なぜ?」を繰り返し問いかけることで、問題の真の原因(根本原因)を特定する手法です。一般的には5回程度繰り返すことで、表面的な原因ではなく、根本的な要因を明らかにすることができます。

【ポイント】
・表面的な原因ではなく、根本原因を見つけることができる。
・「なぜ?」の回数に決まりはないが、浅い分析で終わらないように注意する。
例:
製品の不良率が高い!
なぜ? → 組立作業にミスがある
なぜ? → 作業者のスキルにばらつきがある
なぜ? → 教育・研修が十分でない
なぜ? → 研修にかける時間が確保できていない
なぜ? → 人員不足で余裕がない
解決策:人員配置を見直し、研修の時間を確保する
(2) 特性要因図(フィッシュボーン・ダイアグラム)
問題の原因を「人」「環境」「方法」「機械(設備)」などのカテゴリーに分け、整理して可視化する手法です。魚の骨のような形になるため、「フィッシュボーン・ダイアグラム」とも呼ばれます。

【ポイント】
•視覚的に整理できるため、複雑な問題の原因を体系的に分析できる。
•1つの原因に注目しすぎず、広い視点で考えられる。
例:
製品の不良率が増加している
問題(結果) → 「製品の不良率増加」
原因カテゴリーと具体的な原因
•人(Man): 作業員の経験不足、教育不足
•方法(Method): 検査プロセスが不十分
•機械(Machine): 設備の老朽化、精度が低い
•材料(Material): 仕入れた材料の品質がバラつく
•環境(Environment): 作業場の温度や湿度の影響
対策: 各カテゴリーごとの原因を確認し、適切な対策(作業員教育、設備更新、検査体制強化など)を実施する。
(3) パレート分析(80:20の法則)
「問題の大部分は、少数の主要な原因によって引き起こされている」という考え方に基づき、発生頻度や影響度を数値化して分析する手法です。
棒グラフを使って、どの原因が最も影響を与えているかを視覚的に把握します。
例えば、「80%の問題は20%の要因から発生している」という考え方を使います。

【ポイント】
•すべての原因に均等に対応しようとせず、影響が大きい原因を優先的に解決することができる。
•定量的なデータに基づくため、主観的な判断を避けられる。
例:
顧客クレームの分析
A.顧客クレームを分類する
•商品の品質不良(50件)
•納期遅れ(30件)
•配送ミス(15件)
•接客態度(5件)
B.件数の多い順に並べる(パレート図を作成)
C.累積比率を計算する(品質不良と納期遅れで80%以上を占める)
対策: 最も影響の大きい「品質不良」と「納期遅れ」に重点的に対策を講じる。
(4) 5W1H(6W2H)分析
問題の発生状況を 「What(何が)」「Why(なぜ)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「How(どのように)」 の観点で整理する手法です。
☆「Whom(誰と)」「How much(どれだけ)」を加えて6W2Hとする場合もあります。
【ポイント】
•問題を「発生した状況」から整理できるため、原因特定の手がかりになる。
•他の分析手法と組み合わせて使うと効果的。
例:
プロジェクトの納期遅延
•What(何が) → 納期が2週間遅れた。
•Why(なぜ) → 仕様変更が頻繁に発生したため。
•When(いつ) → 設計フェーズで特に多くの変更があった。
•Where(どこで) → 開発チーム内の仕様調整で問題が発生。
•Who(誰が) → クライアントと開発チームの認識がズレていた。
•How(どのように) → 要件定義が曖昧だったため、後から変更が相次いだ。
対策: 仕様を最初に明確に固めるため、要件定義の段階でクライアントと詳細に合意する。
(5)FMEA(故障モード影響解析)
「何が問題を引き起こす可能性があるか」「その影響はどれくらい深刻か」「発生しやすいか」を事前に評価する手法です。特に製造業やシステム開発で使われます。
【ポイント】
•事前にリスクを予測し、問題を未然に防ぐのに適している。
•複雑なシステムやプロセスに有効(製造業、ソフトウェア開発、医療機器設計など)。
例:
新しい製品の設計ミスを防ぐ
A.潜在的な故障モードを洗い出す(例:部品の組み立てミス)
B.その影響を評価する(例:誤動作して顧客のクレームにつながる)
C.発生確率を評価する(例:組み立て時に発生しやすい)
D.発生を防ぐ対策を考える(例:作業マニュアルを強化し、検査工程を追加する)
9.書籍の紹介
(1)世界一やさしい問題解決の授業
渡辺健介著
ダイヤモンド社(2007年06月)
大きな問題でも難しい問題でも、小さく分けて考えれば、必ずとっかかりが見えてきます。世界最高峰の経営コンサルティング会社で教えられている「問題解決」の考え方を、身近なストーリーと素敵なイラストで中高生にもわかるように解説。自分のアタマで考え、行動する力が自然と身につく本。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
(2)「図解」問題解決入門新版 問題の見つけ方と手の打ち方Kindle版
佐藤允一著
ダイヤモンド社(2003年11月)
問題とは何か、問題を見つける、問題を組み立てる、問題点を挙げる、解決策を考える、といった基本的な考え形をわかりやすく紹介する「問題解決の考え方の入門版」。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
(3)図解入門ビジネス 最新ロジカル・シンキングがよくわかる本 Kindle版
今井 信行著
秀和システム(2023/04発売)
ビジネスに役立つ論理的思考法「ロジカル・シンキング」が図解でよくわかる入門書です。「コミュニケーション」に重点を置き、「思考しながら体得する」をキーワードに解説しています。また、ロジカル・シンキングを実際に使いながら体得できるよう、わかりやすい言葉と図版で視覚的にイメージしやすいようにしています。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
(4)『問題解決プロフェッショナル』「思考と技術」新版 Kindle版
斎藤嘉則著
ダイヤモンド社( 2010年04月)
「ゼロベース思考」「仮説思考」「MECE(ミッシー)」「ロジックツリー」など、 2つの思考、2つの技術、1つのプロセスを通じて、ビジネスの現場で問題解決を実践する方法を体系化。問題解決の基本的考え方はここにある。旧版のシンプルで明快な問題解決理論はそのままに、企業事例や演習課題を刷新。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
10.まとめ
「問題分析」は、感覚や経験だけでなく、論理的・体系的に問題の本質を探るプロセスです。様々な手法を組み合わせ、問題の原因を適切に特定することで、的確な解決策を導き出すことができます。そのためには、表面的な問題ではなく、根本原因を特定することが重要ですね。
今回紹介したことは、あくまでも問題分析の入り口/概要です。ツールの使い方も含めて、まだまだ奥の深いものがあります。正しい考え方/使い方を理解して、うまく使いこなしてください。
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