J.S. Bach: ピアノ協奏曲第1番の背景
以前の記事で、バッハのピアノ(チェンバロ/ハープシーコード) 協奏曲の由来についてまとめました。今回は、その中から特に好きな第1番をピックアップして、作品の背景について調べてみました。
Concerto per il Cembalo Concertato
ピアノ (チェンバロ/ハープシーコード) 協奏曲第1番 ニ短調
作曲年 : 1738年頃 (自筆総譜の合本で伝えられている)
作品番号 : BWV 1052
この作品はバッハのチェンバロ協奏曲の中で最もよく知られており、失われたヴァイオリン協奏曲から編曲されたものと推測されています。
現存している最古の形は1720年代後半のカンタータの中に見られ、第1・第2楽章は《カンタータ第146番》に、第3楽章は《カンタータ第188番》に転用されています。
カンタータとの対応関係
第1楽章ー 《カンタータ第146番》 (シンフォニア)
第2楽章ー 《カンタータ第146番》(2曲目合唱)
第3楽章ー 《カンタータ第188番》 (シンフォニア)
流れを整理すると…
オリジナルはヴァイオリン協奏曲だったと推測されている(現存しない作品)。
→ライプツィヒ時代に、教会での典礼のためにカンタータ(BWV 146, 188)の一部として改作。
→その後、主にコレギウム・ムジクムの演奏会のため、チェンバロ協奏曲版(BWV 1052)に再編。
カンタータ BWV 146 《Wir müssen durch viel Trübsal in das Reich Gottes eingehen》 われら多くの艱難を経て神の国に入るべし
Sinfonia
Wir müssen durch viel Trübsal (Chor)
Ich will nach dem Himmel zu (Arie)
Ach! wer doch schon (Rezitativ)
Ich säe meine Zähren (Arie)
Ich bin bereit (Rezitativ)
Wie will ich mich freuen (Arie)
Freu dich sehr (Choral)
《カンタータ第146番》については、別の記事にまとめました。原曲と推測されているヴァイオリン協奏曲と、その復元版についても触れています。
演奏動画 :
Netherlands Bach Society (オランダ・バッハ協会)
チェンバロ協奏曲第1番第1楽章の元となったこのシンフォニアが、当時の礼拝でもこのようにオルガンで演奏されていたのだろうと思うと、想像しただけで鳥肌が立ちます。
苦難や重荷を象徴するようなニ短調の雰囲気の中にも、力強い「希望の光」のようなものが感じられます。
カンタータ BWV 188《Ich habe meine Zuversicht》 われ固く信ず
Sinfonia
Ich habe meine Zuversicht (Aria: tenor)
Gott meint es gut mit jedermann (Recitative : bass)
Unerforschlich ist die Weise (Aria: alto)
Die Macht der Welt verlieret sich (Recitative : soprano)
Auf meinen lieben Gott (Chorale)
作品番号:BWV 188
年代:1728年頃(ライプツィヒ)
ジャンル:カンタータ
典礼日:三位一体後第21主日(Trinity XXI)
→ 三位一体主日(Pentecost の後に来る祝日)から数えて21週目の日曜日にあたる。
→ 典礼の聖書箇所は、福音書=ヨハネによる福音書4章47–54節「王の役人の息子のいやし」など。
編成(諸説あり)
独唱:ソプラノ、アルト、テノール、バス
合唱:SATB
器楽:フルート、オーボエ、オーボエ・ダ・カッチャ、弦楽器(ヴァイオリン I・II、ヴィオラ、通奏低音)、オルガン独奏
自筆譜が断片的にしか残っていないため、特に冒頭シンフォニアなどは後世に補筆されています。
「人間の弱さと神への信頼」をテーマに、苦難の中での信仰を描いています。
演奏動画、録音 :
J.S. Bach-Stiftung, St. Gallen (バッハ財団 ザンクト・ガレン)
Ton Koopman • Amsterdam Baroque Orchestra (トン・コープマン、アムステルダム・バロック管弦楽団)
バッハ・コレギウム・ジャパンの録音も愛聴しています。
これらのカンタータは、ピアノ協奏曲第1番が好きな人には特に響く作品なのではないかと思います。私はもはや、カンタータのバージョンの方が好きになってしまいそうです。
このように他の作品との関連を知ることで、聴く楽しみが何倍にも増えるような感じがしますね。
【参考】
All of Bach – Top
Bachipedia – Top
Bach Digital –Top
Boston Baroque – Official Website
