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掌編|【加古川の傍らで】先生のヘタな授業

ナカガワ先生は
とても若い男の先生だった。

二時間休みになると
子どもたちと一緒になって
校庭を走り回ったりしていた。

月に一度、
マラソン大会を開催しようと
職員室で言い出して、
本当にそうなってしまった。

私はとても迷惑に思った。

そんなナカガワ先生は
意外に国語も好きだった。
国語が得意な私のことを
とても可愛がってくれた。

ある晴れた日の午後、
先生は
教科書をパタン、と閉じた。

「今日は、教科書を見ないで
社会の歴史の授業をします。」

突然始まった紙芝居のようで
みんなは一気に食いついた。

だけど、
すぐに気づいた。

この授業は
ヘタかもしれない。

私は
手に汗を握るようにして、
その授業を見守ることにした。

まず、
一つ目を間違えたときは
その場で教えようかと思った。

なのに、先生はすぐ
さらに間違えてしまった。

決定的だったのは
浅井長政と浅野長政を
間違えてしまったことだ。

安土桃山時代の授業で
それは流石に許せない。

もう、腹を決めた。

結局、先生は
その授業の間に
六つも間違えた。

授業が終わった後、
机に向かって歩いていって、
そこでこっそりこう言った。

「浅井長政は近江を治めた戦国大名で、
浅野長政は五奉行の筆頭です。

それから…」

先生は、私の話を
ちゃんと最後まで聴いた後、
叱られた子犬のような顔をした。

全く、先生もまだまだね。

先生の肩を
ぽんぽん、と叩きたくなるのを堪えて、
心の中だけで
ため息をついた。 

あの頃は、大人なつもりでいたけれど
今思うと随分と
子どもだったなぁ、なんてね。


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同じ先生、再登場。
▶︎【加古川の傍らで】綿だらけの水槽

同級生との話も、ここに。
▶︎【加古川の傍らで】ピンクを纏う小太鼓

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▶︎ようこそ!つはるの世界へ

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