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【山形グルメ】涼しさは、遠くからやってくる

空はどんよりと曇り、夏の暑さがじわじわとにじり寄ってくる昼下がり。
一つの小包が届いた。
山形の大親友からだった。
「山形の夏、先取りして送るね」
その言葉に、一気に私の心は青空になる。

冷やしラーメン。
――その響きだけで、私はなんだか涼やかな風の中にいるような気がした。

冷やしラーメン――
それは、山形の人たちが暑い夏を乗り越えるために育んだ、ひとつの文化だという。
ざるラーメンとは違う。
冷やし中華でもない。
熱々のラーメンを冷たくした、そう言ってしまえば簡単だけれど、その味わいには深い物語があった。


添えられていたのは、山形市の「サンコー食品株式会社」の一品。
スープは水で溶くのが正式。
お湯ではない。
「具材はね、わかめ、チャーシュー、もやし。できれば味玉もあるといいよ」
そう、親友が教えてくれた。
きゅうりも合うらしい。
冷やし中華の具みたいだね、と電話で笑いあった。

台所で、音を立てず静かに麺を茹でた。
湯気の向こうに、北の街の記憶が浮かんでくる。
あの夏訪れた
置賜の空の色
暑さに焼けたアスファルトの香り
親友の笑い声
並んで歩いた影の長さ。

麺をよく冷やすと、よく冷やした丼のスープにそっと移す。
そよ風が立つように、ふわりと香りが立ち上がった。

ひとくち、啜った瞬間に思った。
これはただ”冷たい”だけのラーメンじゃない。
”冷たくて、あたたかいラーメン”だ。
さっぱりしているのに、醤油のコクと甘みが舌に残る。
玉子麺の風味が豊かで、もちもちとした歯ざわりが、喉を通る度に涼やかに心を癒やしていく。
これは風だ。
山形を吹き抜ける、あの風。
暑さと向き合いながらも、工夫と知恵と優しさを込めてこんな料理が生まれたのだと思うと、胸が少し熱くなった。

山形はラーメン消費量日本一の地。
冬は雪に閉ざされ、夏は熊本と同じくらい暑い。
厳しさを知っている土地だからこそ、人の工夫と食の知恵が、深く根を張っているのかもしれない。

”冷やし”とは、ただ冷たいという意味ではない。
その涼しさに、誰かの思いやりや、美味しさの物語が宿っている。
だから、こんなにも沁みるのだ。

ご馳走様、と呟いて、私はひとつ息をついた。
スープを最後まで飲み干すと、口の中にほんのりと山形の風が残っていた。
熊本のスーパーでは見かけないこの味。
私はまた思い出すだろう。
あの夏の空と、冷やしラーメンのぬくもりを。

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