【山形グルメ】ショリショリ、夏の音。
旅に出る度、私は「土地の音」を探している。
それは風に混じる方言だったり、踏みしめる大地の質感だったり、あるいは食卓の上でひっそりと鳴る、野菜の音だったりもする。
今年、私が見つけたのは――
ショリショリ
という音。
山形の親友から届いた包みの中に、一際涼しげなものが入っていた。

山形のだし。
噂には聞いていた。
もう一人の山形の友人が、それは「ショリショリするもの」だと言っていた。
私は「山形のだし」と聞いた際に、てっきり出汁汁のことだと思い込み、その「ショリショリ」については失念していた。
出汁汁がショリショリするわけはない。
しかし、薄っすらと記憶のどこかに、そのことが残っていたのだ。
届いた容器の蓋を開けると、そこには刻まれた夏があった。

きゅうりに大葉――美しい緑の野菜たちが、細かく細かく刻まれて、まるで宝石のモザイクのようにぎゅっと詰まっている。
そのひとつひとつが優しい出汁にくぐらされて、艷やかに光っていた。
まずは、炊きたてのご飯に乗せてみる。

湯気の向こうに浮かぶ、刻み野菜の小さな山。
ひとくち。
口の中で、確かに「ショリショリ」という音がする。
きゅうりの軽やかな歯ざわり。
大葉の涼しい香り。
出汁の旨味が、野菜の輪郭をそっと際立たせる。
塩気は効いているのに、どこか優しい。
白いご飯の甘みがぐんと際立って、するすると喉を通っていく。
疲れて、なかったはずの食欲が、気がつけば、もっともっととご飯を欲している。
さらり、とろり。
ご飯の熱さと、山形のだしの冷たさが交互にやって来て、何とも楽しい食感だ。
親友がお勧めしてくれた、冷奴にも乗せてみた。

とろりと冷えた豆腐に、冷たいい「だし」。
醤油も薬味もいらない。
豆腐のまろやかさと、野菜のシャキシャキが交互に舌の上で踊る。
何だろう、これは。
まるで冷奴のために生まれたような組み合わせ。
まるで、夏のための食べ物。
山形には、まだ私の知らない「夏の音」があるのかもしれない。
山の奥で聞こえる風の音。
果樹園の桃が、そっと枝から落ちる音。
そのひとつひとつを、私はきっとこれからも探し続けるのだろう。
でも、今年はとりあえず。
この「ショリショリ」という音を、しばらく大切に口にしていたい。
親友も驚く早さで食べ終えた、「山形のだし」。
美味しすぎて相方にも大好評だったので、自分で作れるようにレシピを探してみようと思う。
ありがとう、山形。
またひとつ、夏が好きになった。
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