【山形グルメ】赤い雫が心に落ちた日【龍上海】
親友から届いた贈り物には、まだ山形の秘密が詰まっていた。
『龍上海』――
遠く熊本の地にも名を馳せる、その響き。
ああ、これが――。
昭和三十三年創業、今は三代目が魂を注ぐ一杯。
あの『ラーメン大好き小泉さん』が手にしていた、まさにその味。


パッケージに記された『赤湯』の文字に、フラワー長井線のあの沿線の景色が浮かぶ。
親友と見送った、あの可愛らし電車の車体が、頭の中をゆっくりと走り出す。

辛いものは苦手なのだが、食べれるだろうか?
ひとつひとつ、心を込めて具材を用意する。
と言っても市販品なのだが、味玉は自分で味見をしつつ調理した。
なるとは……熊本ではあまり見かけない、残念だ。

まずは辛味噌を入れずに食べてみる。
なるほど。
行列ができる店の味だ。
濃厚で、熊本では味わえない、深いコクがある。
これだけでも充分に旨いのに、この辛味噌を入れたらどうなるのだろうか――

……辛そうである。
少し怖気づいた。
しかし、店主はこの辛味噌こそが!と袋にも記載していた。
ひとなめ。
うん。
辛い。
だが、コクがあり、旨味が深い。
これは、入れるしかない――

完全な赤湯辛味噌ラーメンの再現、というわけにはいかなかったが、熊本で再現できる、これが赤湯の味。
ほんの少しだけ、スープに溶かす。
そのとき、空気が変わった。
濃厚なスープに、辛味噌の鋭さと甘さが溶け合い、まるで幾重にも重なる音楽のように、深みを持ち始める。
玉子麺の縮れがその音をすくい取り、啜る度、香りが鼻に、心に抜けていく。
丼を前にして、大きなため息をついた。
何だこれは。
旨すぎて、言葉を失う。
『旨い』という言葉すら追いつかない。
これはもう、体験だ。
感動の、体験。
山形では、普通のスーパーにこの麺が、普通に並んでいるという。
信じられなかった。
どうして今まで知らなかったんだろう。
この土地の豊かさを、奥行きを。
次に山形を訪れたなら、私は必ず、あの店の前に並ぶだろう。
親友と、湯気を共にして。
スープまで飲み干した後、親友の笑顔が脳裏に浮かんだ。
山形、ばんざい。
そして、龍上海。
君の一杯が、今日、ひとつ、私を豊かにしてくれた。
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