【ムダが嫌い】① AI活用:30秒の雑務を奪ってほしい

AIが人間の仕事を奪う――そんな話題を目にするたびに、思うことがある。
本当に奪ってほしいのは、企画や文章作成のような仕事の核心部分ではない。
誰も価値を感じていないのに毎日繰り返される雑務のほうだ。
たしかにAIはすごい技術だと思う。私自身もAIを仕事で使っているし、アイデアの整理や情報収集の壁打ち相手として助けられている。
ただ、企画そのものをAIに任せればうまくいくかというと、そう単純でもない。
企画には、その人がこれまで見てきたものや経験してきたこと、仕事の現場で感じた違和感や発見が混ざり込む。一見関係のないもの同士を結びつけるような意外な組み合わせも重要だ。
AIにそうした要素を盛り込んでもらうことはできる。
しかし、そのためにはかなり細かく指示を出さなければならない。こちらの経験や考えを丁寧に伝えないと、どこか無難で、なんとなくイマイチな仕上がりになることが多い。
なので私がAIに最も期待していることは少し違う。
私は小さな広告制作会社で営業兼ディレクターとして働いている。
お客様と打ち合わせをし、企画やデザイン制作の流れを組み立て、社内外のスタッフとチームを組んで、進行を管理し、価格交渉し、無事に納品・請求までたどり着くよう全体を動かすのが仕事だ。
そんな私がAIに頼みたいのは、文章作成よりもずっと地味なことだ。
例えば、得意先からきた資料を保存する。社内スタッフに共有する。できあがった制作物をアップしてURLを取得する。関係者に送る。
ほかにも、見積を作る際に、作業履歴の画面キャプチャを取りながら資料でまとめる作業もかなり手間がかかる。
一つひとつのコピー&ペーストや、アプリを開く、保存する、といった作業は数十秒で終わる。しかし、それらは一日に何十回も発生する。
そして、本当に面倒なのは、Outlook、iCloud、OneDrive、Slackといったアプリを行き来することだ。
パソコンならまだいい。
複数のウインドウを並べて作業できるし、ドラッグ&ドロップも簡単だ。
本当に厄介なのは外出先でのスマホでの操作だ。
メールやSlackから共有ファイルやPDFを保存する。クラウド共有リンクを取得する。メールへ貼り付ける。その途中で電話や通知が入ると、どこまで作業したかわからなくなる。
保存したつもりが保存できていなかったり、一つバージョンの古いリンクを共有してしまったりすることもある。
だから私はAIに、こうした雑務をまとめて引き受けてほしい。
「このPDF、保存しておきました」
「共有リンクを取得してメールの下書きに貼っておきました」
「関係者への連絡事項をまとめました。送信しますか?」
そんなふうに報告してくれる存在がほしい。
私が欲しいのは文章を書くAIではない。優秀なアシスタントだ。

営業兼ディレクターの仕事は、自分で作業することよりも、人や案件を止めないことが大事になる。それはデスクに向かう時間だけではない。
私は完全リモートワークをいいことに、カフェや美容室、映画の上映待ちなど、外出先で仕事することも多い。
そんな細切れの時間にも、爆速で返信をし、資料を共有し、案件を前へ進めている。
だからバレない。ではなくて、仕事は止めない。
そこに立ちはだかるのが、スマホでのチマチマした作業なのだ。
私がAIに期待するのは雑務。
そうして効率化して得たいものとは、「余白」だ。
雑務が減れば、頭の中に、時間に、身体的自由に余白が生まれる。
その余白があれば、お客様からの連絡にも、トラブルにも、新しい企画にも、すぐ反応できる。
URLのコピー。ファイルの移動。リンクの共有。転記作業。
AIが肩代わりしてくれてそれらから解放されれば、私はもっと企画を考えられるし、情報収集ができる。(時にはカフェで。時には美術館をうろつきながら。)
そして、「トラブルが起きた」「今から打ち合わせしたい」「相談がある」という突発的なことに、「あとで」じゃなく、「今」パッと対応ができる。
効率化したいのではない。
止まらずに動きたいのだ。
私がAIに望むのは、効率化の先にある機動力である。
-----
AIに任せたいのは、派手な企画書だけではなく、毎日少しずつ発生する“30秒の雑務”でもあります。仕事を止めない仕組み、信頼資産の積み上げ方、そして暮らしの中でムダを減らす話もこちらに書いています。
