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小3社長、休業します。息子に教わったワークライクバランスの話

ゲーム好きが高じた長男、「作る側」に行く

長男は、ゲームが好きだ。
Nintendo Switchはもちろんだが、ポケモンカードや将棋などのアナログなゲームもする。ルールがあって、制約があって、それを戦略的に攻略するというプロセスが、ロジカルシンカーな彼には総じて快感であるらしい。

そんな彼が、半年ほど前から熱中していることがある。カードゲーム作りだ。
画用紙をカードサイズに切り、上半分に自作のキャラを描く。下段には属性や技名を書き、本人いわく「ゲームバランスを調整しながら」攻撃力や防御力、必殺技の発動条件などを決めていくのだそうだ。
それが学校で人気になり、今ではクラスの枠を超えた同好会までできているらしい
(おもちゃは本来学校持ち込み禁止だが、手作りということでギリギリ許可された模様だ)。

「好き」を「仕事」にするとどうなる?

ある朝。
目が覚めると、外はまだ薄暗いのに、リビングの引き戸の隙間から煌々と明かりが漏れている。
朝5時。眠い目をこすりながら様子を見に行くと、長男がダイニングテーブルに向かい、真剣な顔で小さなカードに文字を書き込んでいる。
「おはよう。早起きだね」と声をかけると、彼は顔も上げずに、短く答えた。
「……仕事だから」。

聞けば、注文が殺到し、一袋5枚入りのパックを今日中に5個作ってくる約束を友達としたらしい。つまり25枚のカードを一日で仕上げなければいけなくなって、早起きする羽目になったのだ。

「お母さんも手伝って」というので、わたしは彼の指示に従い、ひたすら裏側のロゴをお手本通りに描いて色を塗っていく臨時アシスタントとして、急遽現場入りした。

無事に「仕事」を終え、夕方、帰宅した長男が、ランドセルを放り出し、ぽつりと言う。
「……ちょっと仕事、引き受けすぎたかもしれない」。
ソファにどっかりと身を預けて、空を見つめている。
早起きして、おそらく学校では普及活動もして、疲れたのだろう
(もちろん、学業もしている、と信じたい)。

「好きなことでも、仕事になると、しんどくなる時もあるよね」
わたしが差し出したおやつのバナナを、彼は無言で受け取った。

息子から教わる、ワークライクバランス

「ワーク『ライク』バランス」という言葉を初めて目にしたとき、わたしは、「あ、いいじゃん」と思った。
従来の「ワーク『ライフ』バランス」が、仕事と生活を対立させているようで、どうもしっくり来ていなかったし、多様な働き方が世に広まった今では、やや時代遅れな気もしていた。

「ワーク」と「ライク」のバランスをとるということなら、腑に落ちる。
そしてそれらをひっくるめた全体が、「ライフ」だ。

好きだから、これを仕事にできたら、楽しい。
そう思いながらミシンを踏んでいる。
自分の作品が、誰かの生活の小さな一部になって、静かに溶け込んでいる様子を思い描いている。
けれど、「作りたいもの」と「売れるもの」は、違ったりする。
「作りたいとき」と「売れるとき」は、ズレていたりする。

好きだから始めたことなのに、気づけば締切や依頼に追われる。
楽しいはずなのに、義務になる。
それでも、誰かが楽しみに待っていてくれることは、嬉しい。

「あーっ、もう!」
糸が絡まって苛立ちを見せるわたしに、長男が近づいてきて言う。

「仕事、やりすぎじゃない?少し休んだほうが、いい作品ができるよ?」。

息子の言葉に、はっとする。
この子は、わたしが思っているより、きっともう、大人だ。

「カード制作、休業中」

それからもしばらく、長男が制作活動に没頭する日々は続いたのだが、ある日、変化が訪れた。

その日は、小さなカードではなく、A4用紙に、何やら書いている。
「カード制作、休業中。6月1日まで」。

「ちょっと疲れたから、休むことにした」のだそうだ。
今日は学校の自分の机に、この貼り紙をするらしい。

「業」の字が、間違っていた。
三年生らしくて微笑ましい。けれど、ちゃんと期限を決めて、告知してから休業する責任感は、もう立派な社会人だ。
そういえば先日、近所のパン屋さんを通りかかったとき、似たような貼り紙がしてあったのを、思い出した。
子どもって、世の中を、こんなにもよく見ているんだな、と感心する。

「休みながら、楽しめる範囲でやったほうが、いい作品ができるよね」。

息子からもらった言葉を、返してあげた。

ワークライクバランスとは、好きなことを仕事にする技術ではなく、
好きであり続けるために、休む技術なのかもしれない。

たくさんの紙と筆記用具と、ミシンと布切れでエネルギッシュに散らかったダイニングテーブルを見て、そう思った。



そんなわけで、ゆるく、制作しています。
作品は、メルカリで販売しています。


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そんな気持ちは、こちらに綴っています。


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