絶景路線はビールの記憶〜セルビア🇷🇸/モンテネグロ🇲🇪 | 40女のヨーロッパ乗り鉄旅 | #05-2
【Day13: ベオグラード/セルビア→バール/モンテネグロ】 絶景路線だというバール線を楽しみに、12時間の長距離路線を昼間に乗ってみたけれど、遅すぎるセルビア国鉄の遅延に阻まれる。
🚊96日間の旅エッセイ。前回のお話はこちら↓
***********************
##首都の駅はボロボロ
翌朝、今回の旅で楽しみにしていた路線の一つ、絶景のバール鉄道へ!
朝9時過ぎにベオグラードを出発した列車がモンテネグロ海辺の終着駅バールに到着するのは21時前の予定。
実に12時間の長旅だ。

夜行列車もあるけれど、絶景路線ということで景色を堪能したい私は昼行をチョイス。
が、これが間違いの元。なかなかの過酷な鉄旅、ある意味印象に残る貴重な経験だったわけではあるが…。

ボロボロのプラットフォームが数本、ベンチも壊れかけ、といった古びたベオグラード駅にはこれまた落書きだらけの車両が停車している。こちらが本日12時間を共にする列車らしい。

##安定のノロノロ運転
二等車両のコンパートメントはそこそこ人が居るが一等車両は人もまばら、幸いにしてコンパートメント1室独り占めで、のんびりコーヒーと朝ごはんを楽しみながらの出発。


街を抜け、緑が深い野山に時おりのどかな集落が見える、といった景色が連続していく。
少しスピードを上げたかと思ったら止まりそうな速度になるのは相変わらず。
絶景区間はまだまだ先のモンテネグロに入ってからのようなので、居眠りなどしながら鉄道旅は進んでいく。


##謎の停車、食堂車にトライ!
お昼を過ぎ、いくつかの山を越えた先の少し大きめの駅に到着。
特になんの変哲もない田舎の駅でしばらく停車するらしく、停車後少し経つと、続々と乗客がホームに降りて伸びをしたり一服したりしている。
何分停まるのか特段のアナウンスもないけれど、私も外に出て車両撮影などしてブラブラしてみる。

長い車両には食堂車もあったので、この機会に覗いてみることにした。
ちょうどよく晴れた昼下がり、ビールでも飲もうということで食堂車に入ってみると、めちゃくちゃタバコ臭い。食堂車は喫煙可のようだ。

汚いというほどでもないが、決して美しくはないクロスがかけられ、カピカピの造花が飾られた花瓶が置かれたテーブルに腰をかけ、やってきた食堂車担当のおじさんにビールをオーダー。
無言で500ml缶をぶっきらぼうに置かれる。
グラスも何もない冷えていないビールが200円弱。
市販価格の倍はしそうだけれど良心的と言えるのかどうか、初めての食堂車体験はお客さんの居ないタバコ臭い空間で、ぬるいビールを飲むというなかなかの経験になってしまった。

##動かぬまま2時間経過!!
それにしても動かない列車。
食堂車担当のおじさんは、端っこの席でたばこを吸いながら誰かに大きな声で電話して大笑いしている。
よく見たらビール飲んでるし!
おいおい~なんちゅうゆるさ!
と思っていたら、車掌だか乗務員だかがやってきて今度は2人でトランプを始めてしまった。
すでに1時間ほど経過しているけれど、これは相当停まることになりそうな感じがひしひし伝わってくる。

外はというと、もう一つの線路を横切って小さな駅舎の外に出て行く人の姿もちらほら。
近くに商店でもあるのだろうか、何やら買い物袋を下げて戻って来る人の姿も見える。
さすがにいつ出発するか分からない中で、駅舎の外に出る勇気はなかった。
##思い思いに過ごす乗客たち
ビールも飲み干し、タバコ臭い空間に耐えられなくなったのでまた外に出てみると、さっき食堂車から外を眺めていた時に何度か目が合ってニッコリしてくれた大男が居たのでご挨拶。

彼はベオグラードからお母さんが住むバールに戻るところとのことで、この路線は何度も利用しているらしい。
「この停車はいったい何?いつもこんな感じなの?」
「たぶんどこかの線路を補修してるから動けないんじゃないかな。いつもは夜行に乗ってるけど、セルビアの鉄道ではよくあることだよ」と。
なんと線路修理しているとは!
そりゃいつになったら発車するか分かったもんじゃない。

少し会話を交わし自分のコンパートメントに戻る。
ほかのコンパートメントもすっかり座席に寝転んで眠っている人、数人でワイワイしている人などみんな居間状態でくつろぎモードになっていた。
##酒盛りのお誘い
そろそろ2時間半が経とうという頃、さっきのお兄さんが私のコンパートメントを覗き込んできて、
「ビール買ってきたから一緒に飲まない?」
とお誘い。
見ると駅舎の外の商店でビールとつまみを大量に調達してきたようで、袋いっぱいのビールを提げている。
さすがに警戒するけれど、すでに乗客達には一心同体感が生まれていて、逃げも隠れもできない状態に思えたので、まぁいっか、ということで了承。空いてる2等コンパートメントを見つけて酒盛りがスタートした。

買ってきたビールを並べるとなんと500ml缶が8本!!いやいや買いすぎでしょー、と爆笑。
「だってビール好きでしょ?」
と言われてしまう。食堂車での一人飲みを目撃されているので酒飲みがバレてる。
「大丈夫、俺が飲むから。ビール大好きだからいつもこれくらい飲んじゃうよ」
とニッコリ。
##20代男子と4ℓビール
190センチはあろうかという体格で見た目もいかつい彼は、サングラスを取った顔をよく見ると割と若そうで可愛い顔をしている。
改めて自己紹介を聞くと、ベオグラードの大学院を卒業したばかりの26歳。
コソボ生まれ、セルビア育ち、現在は実家がモンテネグロにあるということで、旧ユーゴの多様性を象徴しているかのような経歴だ。
今、セルビアでは失業率が高く、大学院を卒業してもふさわしい職がなかなかないということで一旦実家に戻るんだ、ということを話してくれた。

強面でやんちゃな見た目と裏腹に、博識で英語も堪能、無事に電車がノロノロ動き出した後も話に花が咲き、ビールも1本、また1本と空いていく。
彼の専攻が文科系のせいか、日本のこともよく知っていて、日本には古来からShinto神道が根付いていること、戦時中の“カミカゼ”というワードや東郷平八郎の名前まで飛び出して、感心させられることばかり。
そうかと思えば、日本のサッカーについても詳しくて、ガンバ大阪!エンドウ!なんて名前も出てくる。

コソボ、セルビア、モンテネグロそれぞれに縁のある立場から、自分なりに感じている紛争の背景や現在の政治的課題についてもいろいろと話してくれたけれど、如何せん自分の基礎知識が乏しい上にビールが進んで酔っ払いのせいもあって、理解が追いつかない。

ほろ酔いの頭で、こういうことを教養と言うんだな、と感心させられながら、だからこそ他国の歴史に無頓着ではいけないよなー、としみじみ考えてしまった。
##絶景区間は闇の中
列車がモンテネグロの国境を越える頃にはすっかり薄暗くなっていて、この先が絶景区間だというのに見えるのは闇だけ。

絶景の空気だけでも感じよう!ということで窓も扉も全開にしながら、酒盛りは続く。
絶景が見られず意気消沈な上、気がかりなのは今夜のチェックインだ。
もともと21時着予定でバールの駅前民泊を予約してはいるが、この調子だと何時になるか分かったもんじゃない。遅い時間にホストが対応してくれるのか、心配は募るばかり。(スマホもつながらないし)
「大丈夫だよ、列車はだいたい遅れるから向こうも分かってるよ」
と事もなげに言ってくれるのが心強い。
結局、列車が到着する前に、ものの見事に4リットルのビールがカラになってしまった。
私は2本ちょっとしか飲んでないから彼が3リットル飲んだってこと⁉
私も酒の強さには自信があるほうだけど、3リットル飲んでもケロリとしていて、さすがの酒の強さを見せつけられた。

##2時間遅れ、14時間の長旅
23時、列車が目的地に到着。朝から実に14時間の長旅。
後半はほとんど飲んでただけだけど。
終着駅であるバールの駅前は本当に何もない闇で、開けたロータリーのような空地を挟んですぐ目の前に民家が数軒建っているだけ。
私の民泊はそのうちの1つで見事なまでの駅前宿だった。
幸い隣に住んでいるのか、ホストの中年女性が出てきてくれて長旅をねぎらってくれる。
4ℓビールを共にした彼とはここでお別れ。
私が無事に宿に到着するところまで見届けてくれて、バールの美味しいお店も教えてくれて、若いのに本当に素敵な紳士だった。
さすがの乗り鉄もぐったりするほどの長旅だったけれど、素敵な出会いがあったので結果オーライかな。
さぞお腹が空いたでしょうとホストの女性が持ってきてくれたパンやお菓子を食べながら、興奮冷めやらぬ夜は更けていった。
🚊次回、美しいアドリア海にテンション爆上がり!バスで世界遺産の街コトルへ
📘この投稿は「40女のヨーロッパ乗り鉄旅」の一編です↓
