水の都で、夢みたいな2日間を過ごした|イタリア🇮🇹夫婦旅③ヴェネツィア編
こんにちは、天豆(てんまめ)です。
結婚25周年のイタリア夫婦旅。
ローマから始まり、フィレンツェで美術と街歩きに心を満たされ、毎日、想像以上に濃い時間を過ごしています。
今回は、旅レポ第3弾。
いよいよ、水の都ヴェネツィア編です。
ローマ編はこちら。
フィレンツェ編はこちら。
コロッセオ、フォロ・ロマーノ、ドゥオーモ、ウフィツィ美術館、ヴェッキオ橋。
ここまででも十分すぎるほど素晴らしかったのですが、イタリアの旅は、まだ終わりません。
フィレンツェを離れる朝。
僕たちは、最後にもう一度、あの街を高台から眺めることにしました。
フィレンツェを立つ朝。ミケランジェロ広場へ
翌朝。
フィレンツェを出発する日です。
前夜は21時ごろに寝て、朝5時に妻の目覚ましで起きました。
よく寝ました。
旅先でこれだけ歩いていると、寝つきも早いです。
シャワーを浴びて、身支度を整え、5時45分から50分ごろには宿を出発しました。
目的地は、ミケランジェロ広場。
フィレンツェの街を一望できる高台です。
本当は前日の昼に行く案もありました。
でも、真夏のような暑さの中で行くより、朝に行った方がいい。
そう判断して、この日の早朝にしました。
これは、大正解でした。
宿を出てすぐ、運よくタクシーを拾うことができました。
そこから12、3分ほどでミケランジェロ広場へ。
朝の空気は涼しく、人もまだ多くありません。
そして目の前に、フィレンツェの街が広がりました。

本当に素晴らしかったです。
ドゥオーモの赤いクーポラ。
ヴェッキオ宮殿の塔。
アルノ川。
ヴェッキオ橋。
街の屋根。
遠くの丘。
フィレンツェのすべてが、朝の光の中にありました。
朝に来てよかった。
心からそう思いました。
昼だったら、暑さも人の多さもあったと思います。
でも朝は、空気が澄んでいて、光がやさしい。
街がまだ完全には目覚めていないような静けさの中で、フィレンツェを見下ろすことができました。



しかも、空には気球が浮かんでいました。
まるで映画のワンシーンのようでした。
こんな景色を、フィレンツェを離れる朝に見られるなんて。
旅の神様が、最後に少しだけサービスしてくれたような気がしました。

広場では、ウェディングフォトを撮っているカップルもいました。
この景色の中で写真を撮る。
それは確かに、人生の記念になるだろうなと思いました。
僕たちも、結婚25周年の旅でここに来ることができました。
派手な言葉はいりません。
ただ、妻とこの景色を一緒に見られたこと。
それが、何より嬉しかったです。
タクシーではなく、歩いて街へ戻る
帰りはタクシーを呼ぼうかとも思いました。
でも、なかなかうまくアプリで呼べそうになかったこともあり、歩いて戻ることにしました。
Googleマップで見ると、宿までは徒歩45分ほど。
ヴェネツィア行きの列車にも間に合いそうです。
それなら歩こう、と。
結果的に、これも大正解でした。
ミケランジェロ広場から坂を下り、アルノ川沿いへ。
朝の涼しい空気の中で、フィレンツェに別れを告げるように歩きました。
前日の夕方に見た街とは、また違います。
人が少ない。
光がやわらかい。
川沿いの風が気持ちいい。
ゆっくり歩きながら、昨日行ったウフィツィ美術館の近くまで戻ってきました。
途中、ポンテ・アッレ・グラツィエを渡りました。
名前の響きが、なんだかいい。
グラツィエ。
ありがとう。
まるで、フィレンツェに「ありがとう」と言いながら橋を渡っているようでした。
そして最後に、朝カフェへ。
最後の朝カフェ。Alex Bistro del Chiantiへ
駅方面へ戻る途中、素敵なカフェを見つけました。
Alex Bistro del Chianti。
ここで、最後のフィレンツェ朝カフェです。

店内にはパンや焼き菓子が並んでいました。
イタリアのカフェは、本当に朝が強い。
どの街でも、朝のカフェに入ると、その街の日常に少し混ぜてもらえる感じがします。

僕はアイスカフェラテ。
妻はホットラテ。
そして、フルーツデニッシュと、サラミとチーズが入ったパンを買いました。
フルーツデニッシュはその場で少し食べ、もうひとつのパンは宿に戻ってから2人で分けました。

最後の朝まで、フィレンツェは美味しかったです。
朝の絶景を見て、川沿いを歩き、カフェで飲み物とパンを買う。
観光のハイライトと、日常の小さな幸せが、きれいに混ざった朝でした。
Relais Tiffanyをチェックアウトし、ヴェネツィアへ
宿に戻り、最後のパッキングをしました。
今回泊まったRelais Tiffanyは、ホテルというよりB&Bに近い雰囲気の宿でした。
派手ではありません。
でも、温かくて、落ち着いていて、フィレンツェ滞在にはとてもよかったです。
チェックアウトは、鍵をフロントに置いてそのまま出る形。
こういうところも、B&Bらしくていいなと思いました。
スーツケースを持って、フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅へ向かいます。
駅からは、高速列車Italoでヴェネツィアへ。
ローマからフィレンツェに来た時とは、また違う列車です。
8時50分ごろにフィレンツェを出発。
ヴェネツィアまでは、およそ2時間の鉄道旅です。
車内では、前日までのフィレンツェ編の記事を仕上げました。
旅をしながら、旅の記事を書く。
少し大変ではあります。
でも、その日の感動がまだ身体に残っているうちに言葉にすると、写真だけでは残せない温度まで残せる気がします。
窓の外を眺め、文章を整え、また少し眠気と戦いながら、列車は北東へ。
フィレンツェの石の街から、水の都ヴェネツィアへ。
少しずつ、旅の景色が変わっていきました。
宿はヴェネツィア・メストレ側。ホテル・ロベルタへ
今回、妻が予約してくれた宿は、ホテル・ロベルタ。
ヴェネツィア本島側ではなく、本土側のヴェネツィア・メストレにあるホテルです。
今回は、少し落ち着いたメストレ側に泊まり、電車でヴェネツィア本島側へ向かう形にしました。
駅からホテルまでは、歩いて5分ほど。
とても便利です。
ホテルに着いたのは、11時過ぎ。
まだ部屋の準備は整っていないとのことでしたが、少しロビーで待っていると、15分から20分ほどでチェックインできることになりました。
ありがたい。
部屋は、簡素ながらも落ち着く雰囲気でした。
豪華というより、旅の途中でほっと身体を置ける感じ。
荷物を整理し、少し休み、ここでフィレンツェ編の記事も無事に投稿しました。
そして1時過ぎ。
いよいよ、ヴェネツィア本島側へ向かいます。
ホテルからヴェネツィア・メストレ駅までは徒歩。
そこから電車で10分ほど。
向かうのは、ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅です。
サンタ・ルチア駅を出た瞬間、目の前に水の都があった
ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅に着きました。
そして、駅を出た瞬間。
思わず、声が出そうになりました。
目の前に、いきなり水の都が広がっていたからです。

駅の前に広がるカナル・グランデ。
水上バス。
水上タクシー。
運河沿いの建物。
そして、緑色の丸い屋根が美しいサンタ・マリア・ディ・ナザレ教会。
ここは「スカルツィ教会」とも呼ばれる、サンタ・ルチア駅近くの教会です。



ローマとも、フィレンツェとも、まったく違う。
石の街から、水の街へ。
本当に来たんだなと思いました。
ヴェネツィアは、写真や映画では何度も見てきた場所です。
でも、実際に駅を出て、その景色が目の前に広がる瞬間は、やっぱり特別でした。
「駅を出たら、いきなりヴェネツィア」
これは、かなり強い体験です。
しばらく、その景色を眺めていました。
妻と一緒に、「すごいね」と言いながら。
言葉にするとそれだけなのですが、旅の中には、本当に「すごいね」しか出てこない瞬間があります。
ヴェネツィア初日は、まさにそこから始まりました。
運河沿いのレストランMIRAで、最高の海鮮パスタを
まずはランチです。
ヴェネツィアに来たら、やはり海鮮を食べたい。
妻も僕も、そこは完全に一致していました。
Googleマップでお店を探し、見つけたのがMIRAというレストラン。
運よく、予約なしで運河沿いのテラス席に入ることができました。

これがもう、本当に最高でした。
目の前には運河。
水上バスやボートが通り、風が抜けていく。
白いテーブルクロス。
青いボート。
きらきら光る水面。
「これぞヴェネツィア」という景色の中で、昼食をいただくことができました。
まず出てきた前菜が、貝の香草パン粉焼きのような一皿。
小さな貝に旨みがぎゅっと詰まっていて、これがとても美味しかったです。

そして、メインは海鮮パスタ。
ムール貝、エビ、イカ、トマトソース。
見た目からして、もう勝ちでした。

ひと口食べて、思いました。
これは、今回のイタリア旅で食べたパスタの中でも、かなり上位です。
もしかしたら、一番かもしれません。
もちろん、ローマのカルボナーラも、フィレンツェのパスタも美味しかった。
でも、この日のパスタは、味だけではなく、景色も含めて完璧でした。

観光名所を急いで回るのも旅です。
でも、こうして何気なく入ったレストランで、目の前の景色を眺めながら、妻と「美味しいね」と言い合う時間。
こういう時間こそ、あとで一番思い出すのかもしれません。
目的を決めすぎず、ヴェネツィアの小道を歩く
昼食のあとは、しばらく散策することにしました。
ヴェネツィアでは、あまり目的を決めすぎずに歩きたい。
妻も、気になったお店や小道にふらっと入りたいと言っていました。
それが、とてもいいなと思いました。
ローマは遺跡のスケールに圧倒される街。
フィレンツェは美術と建築の密度に包まれる街。
ヴェネツィアは、歩いているだけで物語の中に入り込む街。
そんな感じがしました。

建物の色が、いちいち可愛い。
赤、ピンク、オレンジ、淡いクリーム色。
窓辺には花。
細い路地の先には、小さな運河。
橋を渡るたびに、また違う景色が現れます。

日曜日でしたが、ローマやフィレンツェの中心部ほど人の圧が強くなく、どこか素朴で、やわらかい雰囲気がありました。
もちろんサン・マルコ広場周辺まで行けば観光客でいっぱいなのですが、このあたりはまだ少し落ち着いています。
風も気持ちいい。
水の匂いもする。
道に迷っているようで、ちゃんと旅をしている。
ヴェネツィアの散策には、そんな不思議な心地よさがありました。

サン・ロッコ大信徒会へ。ティントレットの世界に包まれる
歩いているうちに、サン・ロッコ周辺へ着きました。
ここで訪れたのが、サン・ロッコ大信徒会です。

イタリア語では、Scuola Grande di San Rocco。
「スクオーラ」と聞くと学校のように感じますが、ここでいうスクオーラは、信徒会や同信会のような意味です。
サン・ロッコは、ペストから人々を守る聖人として信仰されてきた存在。
そしてこの建物は、ヴェネツィアを代表する画家ティントレットの作品群で知られています。
正直に言うと、最初からここを完璧に理解して入ったわけではありません。
でも、入ってすぐにわかりました。
ここは、ただの観光スポットではない。
空間そのものが、絵画に包まれている場所でした。
隣には、サン・ロッコ教会もあります。

サン・ロッコ教会の中も、とても印象的でした。
外の明るさから一転して、内部には静けさと荘厳さがあります。
壁には大きな絵画。
高い天井。
赤いカーテン。
古い木の椅子。
光と影のコントラスト。
ヴェネツィアの教会は、豪華さだけではなく、どこか湿度のある深さがあります。
水の都の静けさが、そのまま教会の中にも流れ込んでいるようでした。





ここは、想像以上でした。
天井にも、壁にも、巨大な絵画。
ティントレットの作品が、空間全体を満たしています。
美術館で一枚ずつ絵を見るというより、絵画の中に入っていく感覚です。
ヴェネツィアには、サン・マルコ寺院やドゥカーレ宮殿のような圧倒的に有名な場所があります。
でも、こういう少し奥まった場所で、思いがけず深い美に出会えるのも、ヴェネツィアの魅力だと思いました。
観光地としてのヴェネツィアではなく、長い時間をかけて信仰と芸術が積み重なってきた街としてのヴェネツィア。
その一部に、少しだけ触れられた気がしました。
そして、アカデミア橋のあたりへ。
木造の大きな橋を渡ると、目の前にまた絵のような景色が広がります。


遠くに見えるのは、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会。
丸いドームが美しい、ヴェネツィアを代表する景色のひとつです。
水の上に街があり、街の中に教会があり、教会の向こうに空がある。
写真で見たことがあるはずなのに、実際に目の前にすると、やっぱり胸にくるものがありました。
フィレンツェを離れる朝に見た、ドゥオーモの赤いクーポラ。
そしてその日の午後、ヴェネツィアで見た、サルーテ教会の白いドーム。
同じイタリアなのに、こんなにも違う美しさがある。
ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア。
街ごとに、時間の流れ方も、光の色も、人の気配も違う。
旅をしていると、その違いが身体に入ってきます。
水上バスで、ヴェネツィアの風を浴びる
ここからは、水上バスでの移動です。
ヴェネツィアの水上バスは、ただの交通手段ではありません。
もちろん、街を移動するための乗り物なのですが、実際に乗ってみると、それ自体がもう立派な観光体験でした。
船がゆっくりと動き出す。
水面がきらきら光る。
建物が、陸から見る時とは違う角度で流れていく。
そして風が、本当に気持ちいい。

この日は天気もよく、空も水も明るくて、乗っているだけで気分が上がりました。
ローマでは石の道を歩き、フィレンツェでは美術と建築の中を歩きました。
でもヴェネツィアでは、街そのものが水の上を動いていくように感じます。
まるで、自分たちが絵画の中をすべっているようでした。
途中、白く美しい大きな教会が見えてきました。
先ほどアカデミア橋で、遠目から見えたサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会です。
17世紀に流行したペストの終息を祈って建てられた、ヴェネツィア・バロックを代表する教会のひとつ。
丸い大きなドームが印象的で、大運河沿いの景色の中でも、ひときわ存在感があります。

この日は外から眺めるだけでした。
でも、この美しい姿を見て、翌日は中にも入ってみたいと思いました。
ヴェネツィアは、予定通りに回るだけではなく、見えたものに心が動いて、翌日の行き先が決まっていく。
そんな街でもあるのだと思います。


ゴンドラも、水上バスも、水上タクシーも、運河を行き交っていました。
車ではなく、船が日常の交通手段になっている街。
わかっていたはずなのに、実際に目にすると、やっぱり不思議です。
そして、たまらなく美しい。
水の上に暮らしがあり、水の上に観光があり、水の上に歴史がある。
ヴェネツィアという街は、本当に特別でした。
サン・マルコ広場へ。世界の中心に出たような感覚
水上バスでサン・マルコ広場方面へ向かうと、だんだん人が増えてきました。
駅周辺とはまた雰囲気が違います。
「こちらが、ヴェネツィア観光の中心なんだ」
すぐにそうわかりました。
サン・マルコ広場は、翌日にあらためてじっくり訪れる予定でした。
サン・マルコ寺院も、翌日に予約しています。
でも、この日の時点でも、広場周辺に近づくだけで、空気が変わるのがわかりました。
建物のスケール。
人の多さ。
音楽。
光。
どこを見ても絵になります。
ただ、僕たちはこの時点で、朝からかなり動いています。
フィレンツェのミケランジェロ広場から始まり、朝カフェ、列車移動、ホテルチェックイン、ヴェネツィア散策、海鮮パスタ、教会、水上バス。
すでに、かなり濃い一日です。
少し疲れも出てきました。
でも、そんな時に、妻と僕の目の前に現れたのが、あの場所でした。
カフェ・フローリアンへ。ヴェネツィアで出会った珠玉の時間
サン・マルコ広場にある、カフェ・フローリアン。
1720年創業の、世界最古級のカフェとして知られる名店です。
名前は知っていました。
でも、正直に言えば、この日に絶対行くと決めていたわけではありません。
むしろ、少し疲れてきて、次にどこへ行こうか、目的を見失いかけていた頃でした。
そんな時に、
「近くにカフェ・フローリアンがある」
と気づきました。
これは、入るしかありません。

入口からして、もう雰囲気があります。
古い木の扉。
クラシックな看板。
きちんとした制服のスタッフ。
観光地のカフェというより、長い歴史の中に今も人を迎え続けている場所、という感じがしました。
中に入ると、内装が本当に美しい。
壁も、天井も、照明も、椅子も、空間全体が美術館のようでした。

そして、さらに素晴らしかったのが、生演奏です。
広場側から音楽が聴こえてくるだけでも贅沢なのに、席から演奏の様子まで見える。
ピアノ。
クラリネット。
コントラバス。
白いシャツに黒い蝶ネクタイの演奏者たち。

この瞬間、思いました。
ああ、来てよかった。
本当に、来てよかった。
ここは、ただ飲み物やデザートをいただく場所ではありませんでした。
音楽に包まれながら、ヴェネツィアの時間そのものを味わう場所でした。
僕が選んだのは、ダークチョコレートのタルトゥーフォ。
冷たいチョコレートのデザートで、濃厚なのに重すぎず、とても美味しかったです。
そして、フローズン・フローリアン。
冷たいコーヒークリームにホイップがのった、まさにこの店らしい一杯です。
妻は、いちごのアイスクリーム系のデザートを選びました。


甘いものを食べながら、音楽を聴く。
窓の外には、サン・マルコ広場。
店内には、長い歴史をまとった空気。
疲れていた身体が、少しずつほどけていくのがわかりました。
旅先では、名所をどれだけ見たかも大切です。
でも、それ以上に、
「ここで休めてよかった」
と思える場所に出会えるかどうか。
それも、とても大事だと思います。
カフェ・フローリアンは、僕たちにとって、まさにそういう場所になりました。
ヴェネツィア初日の中でも、かなり大きなハイライトです。
水の都の余韻を抱えながら、メストレのホテルへ戻る
カフェ・フローリアンを出た頃には、すっかり夕方の空気になっていました。
このあとも少しだけ歩きました。
アカデミア橋の方へ向かいながら、ヴェネツィアの路地と運河を眺めます。
水上バスで来た道とは違い、帰りは少し歩きながら駅方面へ戻ることにしました。
ただ、さすがに朝から動き続けています。
フィレンツェの早朝から始まった一日です。
体力的には、かなり限界が近づいていました。
でも、不思議と嫌な疲れではありません。
「今日は本当に、よく歩いたな」
「本当に、いい一日だったな」
そう思える疲れでした。
夜の食事は、軽めに済ませることにしました。
この日はランチの海鮮パスタも、カフェ・フローリアンのデザートもかなり満足感がありました。
なので、駅前でピザなどを買って、メストレのホテルに戻ってから食べることに。
電車でヴェネツィア・サンタ・ルチア駅からメストレ駅へ。
そこから歩いてホテル・ロベルタへ戻りました。
シャワーを浴びて、ようやく一息。
そして、スーパーで買ったピザが、これまた意外なほど美味しかったです。
高級レストランでも、歴史あるカフェでも、スーパーのピザでも。
イタリアは、最後までちゃんと美味しい。
それもまた、この旅で何度も思ったことでした。
ヴェネツィア初日から、もう心を奪われた
こうして、ヴェネツィア初日が終わりました。
フィレンツェを離れる朝、ミケランジェロ広場で見た絶景。
最後の朝カフェ。
高速列車での移動。
メストレのホテル。
サンタ・ルチア駅を出た瞬間に広がった、水の都の景色。
運河沿いの海鮮パスタ。
ヴェネツィアの小道。
サン・ロッコ大信徒会と教会。
初めての水上バス。
サルーテ教会の美しいドーム。
そして、カフェ・フローリアンでの音楽とデザート。
一日で、どれだけ詰め込むのか。
そう思うほど、濃い一日でした。
でも、不思議と無理をした感じはありません。
むしろ、ヴェネツィアという街に、自然と導かれていったような感覚でした。
ローマは、歴史に圧倒される街。
フィレンツェは、美に包まれる街。
そしてヴェネツィアは、水と光と音楽に、心をさらわれる街。
初日だけで、もうすっかり好きになっていました。
でも、ヴェネツィアの本番は、まだここからです。
翌日は、ムラーノ島へ。
そして、サン・マルコ寺院へ。
さらに、水の都の奥深さに触れていく一日になります。
ヴェネツィア2日目。ムラーノ島へ向かう朝
翌朝。
ヴェネツィア2日目です。
前日は、フィレンツェを出る朝からミケランジェロ広場へ行き、列車で移動し、ヴェネツィアに着いてからも、ランチ、散策、水上バス、カフェ・フローリアンまで、かなり濃い一日を過ごしました。
さすがに疲れがたまっていたのだと思います。
この日は、目覚ましが鳴る6時まで、ほとんど気づかずに眠っていました。
8時間以上、一気に眠れたのではないかと思います。
旅も5日目あたりになると、楽しさと同時に、身体にはしっかり疲れが蓄積していきます。
でも、それもまた旅のリアルです。
朝起きて、シャワーを浴び、身支度を整えます。
この日の午前中の目的地は、ムラーノ島。
ヴェネツィアン・グラスで有名な島です。
特に妻が行きたがっていた場所で、僕もとても楽しみにしていました。
ホテルのあるメストレ側から、まずはヴェネツィア本島側へ。
そして、そこから水上バスに乗ってムラーノ島へ向かいます。
水上バスでムラーノ島へ。朝の風が気持ちいい
この日も、水上バスが本当に気持ちよかったです。
座る場所にも恵まれました。
船の外側に近い席で、風を浴びながら、水の上を進んでいきます。

水上バスに乗っていると、ヴェネツィアという街の不思議さを、あらためて感じます。
道の代わりに水路がある。
バスの代わりに船がある。
駅も、停留所も、移動の風景も、全部が水の上にある。
日本で暮らしている感覚からすると、それだけで別世界です。
途中、白い教会と緑に囲まれた島が見えてきました。
サン・ミケーレ島です。
ここはヴェネツィアの墓地の島として知られていて、水上バスから見ても、独特の静けさがありました。

観光でにぎわうヴェネツィアの中で、ふっと空気が変わるような場所。
今回は船の上から眺めるだけでしたが、こういう風景に出会えるのも、水上バス移動の魅力だと思います。
やがて、ムラーノ島に近づいていきます。
水上バスの停留所が見えてきて、いよいよ到着です。

ムラーノ島で朝カフェ。ゆっくり流れる時間
ムラーノ島に着いて、まずは朝カフェです。
前日までのローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア本島とは、また少し違う空気が流れていました。
観光地ではあるけれど、どこかゆったりしている。
人はいるのに、せわしなさが少ない。
朝の光も、運河の水も、街の色も、少しやわらかく感じます。


見つけたカフェに入り、朝ごはんをいただきました。
クロワッサン。
サラミの入ったパニーノ。
アイスカフェラテ。
カプチーノ。
シンプルだけれど、旅先の朝には十分すぎる幸せです。

イタリアの朝カフェは、やっぱりいいです。
豪華な朝食ではありません。
でも、その街の日常に、少しだけ混ぜてもらえる感じがします。
観光客として名所を巡る時間も好きですが、こうして普通に座って、飲み物を飲んで、パンを食べる時間も同じくらい好きです。
旅の記憶に残るのは、案外こういう何気ない朝だったりします。
歩くだけで癒される、ガラスの島
朝カフェを終えて、ムラーノ島を歩きます。
ムラーノ島は、そこまで大きな島ではありません。
でも、歩いていると、あちこちに運河があり、小さな橋があり、色のかわいい建物が並んでいます。


ローマのような圧倒的な歴史の迫力。
フィレンツェのような美術館のような密度。
ヴェネツィア本島のような観光地としての華やかさ。
そのどれとも違う、ムラーノ島の魅力がありました。
もっと素朴で、もっとゆっくりしている。
でも、ちゃんと美しい。
妻はこの島をとても気に入っていました。
「ここはまた来たい」
そんなふうに言っていました。
僕も同じ気持ちでした。
旅の中で、こういう場所に出会えると嬉しいです。
有名な観光地を見た感動とは違う。
心と身体が、ふっとゆるむような感覚です。
ヴェネツィアン・グラスの世界へ
ムラーノ島といえば、やはりヴェネツィアン・グラスです。
島のあちこちに、ガラス工芸のお店があります。
ショーウィンドウを眺めているだけでも楽しい。
花瓶、アクセサリー、動物のオブジェ、シャンデリア、置物。
色も形も本当に豊かで、ガラスという素材がここまで表情を持つのかと驚きました。

店内に入ると、天井からは美しいシャンデリア。
棚には色とりどりのガラス作品。
光が当たるたびに、作品の表情が変わります。

ムラーノのガラス作りは、13世紀末にヴェネツィア本島からガラス職人たちが移されたことをきっかけに、この島で発展していったそうです。
火を使う工房を本島から離す意味もあり、技術を守る意味もあったと言われています。
そう思うと、目の前に並ぶ美しいガラスたちは、ただのお土産ではありません。
何百年も続いてきた職人の歴史の延長にあるものなのだと感じました。

僕たちは、家族へのプレゼントも探しました。
僕の母と姉へ。
妻のお母さんへ。
そして、自分たちにも少しだけ。
僕は、透明なガラスの中に虹のような色が入った、馬のオブジェに一目惚れしました。

小さな作品なのに、見ているだけで気持ちが明るくなる。
「これは連れて帰りたい」
そう思いました。
妻は、自分への記念に、緑のネックレスを選びました。
この旅で見た水の色や、島のやさしい空気を思い出せるような、美しい色でした。
ガラス職人の工房をのぞく
さらに歩いていると、ガラス工房のような場所にも出会いました。
中では、実際に職人さんがガラスを扱っていました。
高温の炉。
赤く熱を帯びたガラス。
それを棒の先で回しながら、形を整えていく職人さん。



写真では静止した一瞬ですが、実際には、そこに熱と動きがあります。
ガラスは硬くて冷たいもの。
そんな印象があります。
でも、工房の中では違いました。
ガラスは熱を帯びて、やわらかく、流れるように形を変えていきます。
それを人の手が導いて、作品になっていく。
ムラーノグラスの美しさは、完成品だけではなく、この過程そのものにあるのだと思いました。
ムラーノ島で、心までゆるむ
ムラーノ島の時間は、本当に心地よかったです。
ただ歩くだけで楽しい。
お店をのぞくだけで楽しい。
運河沿いを眺めるだけで、気持ちが落ち着く。



ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア本島。
どの街も素晴らしかったです。
でも、ここムラーノ島では、少し違う種類の幸せを感じました。
何かに圧倒されるのではなく、心がゆっくりほどけていく。
予定を詰め込むのではなく、気になったものに足を止める。
そういう旅のよさを、あらためて思い出させてくれる場所でした。
妻がここを気に入ってくれたことも嬉しかったです。
結婚25周年の旅で、こういう小さな島を2人で歩けたこと。
家族へのプレゼントを選びながら、自分たちの記念の品も見つけられたこと。
その時間そのものが、宝物になりました。
ムラーノ島から、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会へ
正午前には、ムラーノ島を出ました。
再び水上バスに乗り、今度はサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会へ向かいます。


水上バスから見るヴェネツィアは、何度見ても飽きません。
水面の色。
船の揺れ。
建物の連なり。
そして、遠くに見えてくる白い大きなドーム。
前日に水上バスから眺めて、翌日は中に入ってみたいと思った場所。
それが、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会でした。

この教会は、17世紀にヴェネツィアを襲ったペストの終息を願って建てられた教会です。
名前の「サルーテ」は、健康や救いを意味する言葉。
つまり、街の人々の祈りが形になった教会でもあります。
そう思って眺めると、ただ美しいだけではなく、どこか切実なものを感じます。


外観は、本当に壮大でした。
白い大理石。
大きなドーム。
正面の階段。
運河を背にして立つ姿。
ヴェネツィアの景色の中でも、特に印象に残る建物です。
そして中に入ると、外の明るさとは違う、静かな空気が広がっていました。




中央に立つと、上へ上へと空間が広がっていきます。
丸いドーム。
高い天井。
柱のリズム。
床の模様。
すべてが端正で、落ち着いていて、でも確かな迫力がある。
サン・マルコ寺院のような金色の圧倒感とは、また違います。
ここには、白い祈りのような美しさがありました。
ペストという大きな苦しみをくぐり抜けた街が、祈りを込めて建てた場所。
だからこそ、豪華さだけではなく、静けさがあるのかもしれません。
旅をしていると、美しいものにたくさん出会います。
でも、その背景にある痛みや祈りを少しでも知ると、見え方が変わります。
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会は、まさにそういう場所でした。
ムラーノ島で心がゆるみ、この教会で静かに整う。
ヴェネツィア2日目の午前は、とても美しい流れになりました。
このあと僕たちは、サン・マルコ広場方面へ戻り、ランチへ向かいます。
そして午後には、いよいよサン・マルコ寺院へ。
ヴェネツィアの奥行きに、さらに深く触れていくことになります。
サン・マルコ広場近くで、ヴェネツィアらしいランチを
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会を出たあと、僕たちはサン・マルコ広場方面へ戻り、少し歩いたところでランチにすることにしました。
この日も、妻のGoogle Mapリサーチが大活躍です。
見つけたお店は、Ristorante Al Mercante。
外観は、いかにもヴェネツィアの街角にあるレストランという雰囲気でした。



外の席もありましたが、この日は少し暑さもあったので、店内へ。
中に入ると、観光地の真ん中にありながら、落ち着いた空気が流れていました。
ワインボトルが並び、壁には絵が飾られ、照明もやわらかい。
朝からムラーノ島を歩き、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会まで行っていたので、ここで少し腰を落ち着けられたのが嬉しかったです。
ここで注文したのは、カニの旨みが絡んだスパゲッティ、魚介のフリット、そしてトマトソースのペンネ。
これが、どれも本当に美味しかったです。

まず印象的だったのは、カニのスパゲッティ。
殻が添えられているだけで、もう見た目からテンションが上がります。
ただ華やかなだけではなく、カニの旨みがしっかりパスタに絡んでいて、ひと口食べるたびに、ヴェネツィアに来てよかったと思う味でした。

そして、魚介のフリット。
海老やイカなどがカラッと揚がっていて、レモンを絞ると一気に爽やかになります。
重すぎず、でも満足感がある。
水の都で食べる魚介は、やっぱり気分が上がります。

アマトリチャーナのペンネも、シンプルなのにしっかり美味しい。
イタリアに来てから何度も思っていますが、こういう何気ないトマトソースのパスタが、ちゃんと美味しいのがすごいです。

前日のランチは、運河沿いのテラス席で海鮮パスタを食べました。
この日は、サン・マルコ広場近くの落ち着いた店内で、カニのスパゲッティとフリット。
どちらもまったく違う良さがありました。
ヴェネツィアは、景色だけではありません。
食べる時間まで、ちゃんと旅の思い出にしてくれる街です。
リアルト橋へ。ヴェネツィアの中心を歩く
ランチのあとは、リアルト橋へ向かいました。
リアルト橋は、ヴェネツィアの大運河にかかる有名な橋のひとつです。
白い石造りの大きなアーチ。
橋の上にはお店が並び、周辺には多くの人が集まっています。
昨日までは水上バスから眺めるヴェネツィアに感動していましたが、今度は橋の上から大運河を見下ろす時間です。


近くで見ると、想像以上にしっかりとした存在感があります。
ただ景色を眺めるための橋ではなく、街の歴史そのものを背負っているような重みがありました。
橋の階段を上がっていくと、人の多さにも驚きます。
観光客。
地元の人。
写真を撮る人。
お店をのぞく人。
水の上の街なのに、ここにはしっかりとした都市の熱がありました。
そして、橋の上から見た大運河。
これが、また素晴らしかったです。

両岸に並ぶ歴史ある建物。
水上バス。
小さなボート。
ゴンドラ。
赤い日よけのレストラン。
まさに、頭の中で思い描いていたヴェネツィアの風景が、目の前に広がっていました。
この街は、どこを切り取っても絵になります。
でもリアルト橋からの景色は、その中でも特別でした。
上から見ることで、ヴェネツィアが本当に水の上に生きている街なのだと、あらためて実感できます。
道の代わりに水路があり、車の代わりに船が行き交う。
その当たり前が、ここでは日常として流れている。
旅行者の僕たちには、それがずっと新鮮で、ずっと美しく見えました。
旅先のスーパーに入る楽しみ
リアルト橋を楽しんだあと、妻が気になっていたCOOPにも立ち寄りました。
日本でもおなじみの「コープ」という響き。
それがヴェネツィアの街中にあるのが、なんだか不思議でした。

旅先のスーパーに入るのは、けっこう好きです。
観光名所とは違う、その街の生活が少し見えるからです。
どんな飲み物が売られているのか。
どんなパンやチーズが並んでいるのか。
お菓子や惣菜の棚には何があるのか。
たった数分でも、その国の日常に触れたような気持ちになります。
僕たちはこの旅でも、夜ごはんを軽く済ませたい時に、スーパーにとても助けられました。
旅はレストランだけではありません。
スーパーで買ったものをホテルで食べる夜も、ちゃんと旅の一部です。
いよいよサン・マルコ寺院へ
そして、この日の午後の大きな目的地。
サン・マルコ寺院へ向かいました。
前日にサン・マルコ広場へ来た時から、その外観の迫力には圧倒されていました。
けれど、この日は予約して中へ入ります。
広場に立つと、やはりすごい。
人も多い。
建物も壮大。
そしてサン・マルコ寺院の正面は、ただの教会というより、ひとつの巨大な宝石箱の入口のようでした。

ローマやフィレンツェでも、いくつもの教会を見てきました。
けれど、サン・マルコ寺院は、またまったく違います。
イタリアらしい教会というより、どこか東方の香りがする。
ビザンティンの影響を受けた、ヴェネツィアならではの美しさです。
外観からして、もう情報量がすごい。
アーチ。
柱。
モザイク。
彫刻。
金色。
白い石。
見れば見るほど、目が追いつきません。
でも不思議と、うるさくはない。
むしろ、長い時間をかけて積み重なってきたものが、ひとつの祈りの形になっているように感じました。
入口に近づくと、金色のモザイクが見えてきます。

ここから中へ入ると、さらに別世界でした。
金色のモザイクに包まれる
サン・マルコ寺院の中に入った瞬間、思わず息をのみました。
暗さと金色。
静けさと人の気配。
重厚さときらめき。
そのすべてが一気に押し寄せてきます。
まず目に入るのは、天井や壁に広がる金色のモザイク。
これは絵画とは違います。
光そのものが、壁と天井に宿っているような感じです。
近づいて見ると、細かなタイルが集まって、聖書の場面や人物を描いています。
でも少し離れると、それが大きな金色の世界になる。
人間の手で作られたものなのに、人間の手を超えたものを見ているような気持ちになります。

ローマでは、古代の巨大さに圧倒されました。
フィレンツェでは、ルネサンスの知性と美に心を持っていかれました。
そしてヴェネツィアのサン・マルコ寺院では、東西の文化が混ざり合ったような、独特の神秘に包まれました。
同じイタリアでも、街によってこんなに違う。
旅を重ねるほど、その違いがどんどん面白くなっていきます。
サン・マルコ寺院は、ただ華やかなだけではありません。
金色なのに、軽くない。
豪華なのに、浮ついていない。
むしろ、深い祈りの重さがあります。
何世紀もの時間。
ヴェネツィアという海の共和国の誇り。
信仰。
交易の記憶。
東方とのつながり。
そういうものが、ドームの中で静かに光っているようでした。
今までの教会とは、まったく違う感動
中へ進むほど、空間のスケールに圧倒されていきました。
柱が立ち並び、奥には祭壇があり、上を見上げれば、金色のドームが続いています。







今までローマでも、フィレンツェでも、たくさんの教会に入りました。
それぞれに素晴らしかったです。
でも、サン・マルコ寺院は、また別の種類の感動でした。
迫力という言葉だけでは足りません。
美しい、という言葉だけでも足りません。
どこか異国的で、幻想的で、少し怖いくらいに神聖。
光があるのに、同時に深い影もある。
そこがとても印象的でした。
ただ上を見ているだけで、首が痛くなるほどでした。
でも、見上げずにはいられません。
ドームのひとつひとつに物語があり、壁のひとつひとつに祈りがある。
これだけのものを、人が作ったのだと思うと、本当にすごいです。
旅をしていると、何度も「すごい」と言ってしまいます。
でも、この時の「すごい」は、少し違いました。
言葉が追いつかない時に、最後に残る「すごい」でした。
サン・マルコ寺院の中で、僕たちはしばらくその金色の世界を見上げていました。
そしてこのあと、さらに上へ。
階段をのぼり、寺院の上部へ向かいます。
そこから見えるサン・マルコ広場とヴェネツィアの景色が、また忘れられないものになるのでした。
階段をのぼり、サン・マルコ寺院の上へ
サン・マルコ寺院の内部を見上げながら歩いたあと、僕たちはさらに上へ向かいました。
細い階段を、ゆっくりとのぼっていきます。
ローマでも、フィレンツェでも、何度も階段をのぼりました。
ドゥオーモのクーポラ。
教会の階段。
駅の階段。
そしてここヴェネツィアでも、また階段です。
でも、不思議と旅の中でのぼる階段には、その先に必ずご褒美があります。
この時も、少し息を切らしながら、
「この先には、きっとまた違う景色が待っている」
そんな気持ちでのぼっていきました。
階段を抜けると、サン・マルコ寺院を上から見渡せる場所に出ました。

下から眺めていた時とは、まったく印象が変わります。
金色のモザイクが、ぐっと近くなる。
壁や天井に描かれた物語が、より細かく見える。
そして、下にいる人たちの姿が小さく見えることで、この空間の大きさをあらためて感じます。
サン・マルコ寺院は、ただ中に入って見上げるだけでも圧倒されます。
でも、上から眺めると、さらに別の顔を見せてくれました。
モザイクのひとつひとつに、時間と祈りが込められているようでした。
モザイクは、近くで見るほど人の手の跡を感じます。
小さな石やガラスのかけらが、ひとつひとつ集まり、人物の表情になり、衣のひだになり、金色の光になっていく。
遠くから見ると神聖な世界。
近くで見ると、人間の途方もない手仕事。
その両方が同時に存在していることに、胸を打たれました。
ヴェネツィアは、水の都です。
でも、サン・マルコ寺院の中にいると、水の上に浮かぶ街であることを一瞬忘れます。
ここだけ、時間の流れが違う。
外では観光客が行き交い、水上バスが走り、広場には陽射しが降り注いでいる。
でも寺院の中では、金色の天井の下に、何百年もの祈りが静かに積もっているようでした。
目が止まる。
足が止まる。
そして、言葉も少なくなる。
「すごいね」
「本当にすごいね」
何度もそう言いながら、僕たちは上部の通路を歩きました。
博物館エリアで出会った、もうひとつのサン・マルコ寺院
上部には、寺院の歴史を伝える展示もありました。
タペストリーのような作品や、古い書物。
かつてこの場所で大切にされてきたものが、静かに並んでいます。


サン・マルコ寺院は、ただ美しい建物ではありません。
ヴェネツィアという街が、どれだけ長い時間をかけて、この場所を大切にしてきたのか。
その重みが、展示室を歩いていると伝わってきます。
そして、とても印象的だったのが、サン・マルコの馬です。

外観に見えている馬はレプリカで、保存のためにオリジナルはこちらで展示されています。
近くで見ると、想像以上に存在感があります。
ただ美しいだけではなく、歴史をくぐり抜けてきたものだけが持つ迫力がありました。
馬の表情。
首の角度。
前へ進もうとするような脚の動き。
静止しているのに、今にも動き出しそうです。
ローマでも、フィレンツェでも、彫刻や絵画に何度も心を動かされました。
けれど、この馬たちには、また違う種類の力がありました。
ヴェネツィアの誇りを背負って、ずっとこの街を見つめてきたような存在感でした。
上部から見下ろすサン・マルコ寺院。金色のドームに包まれた空間を、しばらく見つめていました。


下から見上げた時の感動。
近くでモザイクを見た時の感動。
そして上から全体を見渡した時の感動。
同じサン・マルコ寺院の中でも、角度が変わるたびに、別の感情が生まれます。
本当にすごい場所でした。
テラスから見下ろす、サン・マルコ広場
そしていよいよ、外のテラスへ出ました。
目の前に広がっていたのは、サン・マルコ広場。










この景色は、本当に忘れられません。
下に広がる白い広場。
まっすぐに立つ旗柱。
左には鐘楼。
正面には、広場を囲む美しい建物。
そのすべてが、陽射しの中で静かに輝いていました。
地上にいる時は、人の多さに圧倒されます。
けれど上から見ると、その人の流れさえ、ひとつの風景になります。
歩く人。
写真を撮る人。
立ち止まる人。
カフェで過ごす人。
ヴェネツィアという街が、今この瞬間もちゃんと生きていることを感じました。
ドゥカーレ宮殿も、上から見るとまた違った表情になります。
白い柱が連なり、壁面の模様が光を受け、海の方へ向かって開かれている。
ヴェネツィア共和国の中心だった場所。
その歴史の舞台を、サン・マルコ寺院の上から眺めているのだと思うと、なんとも贅沢な時間でした。
時計塔も見えました。
青い文字盤と金色の装飾。
ヴェネツィアは、本当に細部まで美しい街です。
どこか一か所だけが名所なのではなく、建物の角、窓、屋根、柱、模様。
そのひとつひとつが、街の美しさを作っています。
この時、妻がテラスから鐘楼を見上げていました。
その姿を見て、少し胸がじんとしました。
結婚25周年で来たイタリア。
ローマから始まり、フィレンツェを歩き、ヴェネツィアまで来ました。
毎日たくさん歩いて、たくさん食べて、たくさん感動して、たくさん疲れました。
でも、こうして妻と一緒にこの景色を見ている。
それだけで、もう十分すぎるほど幸せな旅だと思いました。
外に出ても、まだ美しい
サン・マルコ寺院を出たあとも、しばらくその周辺を歩きました。
外に出ると、寺院の横にも美しい装飾が続いています。
広場の向こうには、さっきまで歩いていた場所が広がっています。
人の流れ。
白い建物。
影と光。
ヴェネツィアの景色は、時間帯によって少しずつ表情を変えます。
同じ場所にいても、さっきとまったく同じ景色にはならない。
だから、つい何度も振り返ってしまいます。
ドゥカーレ宮殿の横を通りながら、あらためてその美しさに見とれました。
今回は中に入る時間は取りませんでしたが、外観だけでも十分すぎるほど印象的でした。
ヴェネツィアは、見たい場所が多すぎます。
だからこそ、また来たいと思えるのかもしれません。

正面の華やかさとは違って、横から見るサン・マルコ寺院には、少し落ち着いた雰囲気がありました。
観光客で賑わう広場のすぐそばにありながら、角度を変えるだけで、急に静かな表情を見せてくれる。
この街は、本当に奥行きがあります。
そして広場のカフェでは、また音楽が流れていました。

前日にカフェ・フローリアンで過ごした時間を思い出しました。
あの赤い椅子。
美しい天井。
テーブルに並んだ苺のデザートとチョコレートのタルトゥーフォ。
そして広場に響く生演奏。
あれは、ただカフェに入った時間ではありませんでした。
ヴェネツィアという街からもらった、ひとつの贈り物のような時間でした。
水上バスで、もう一度ヴェネツィアを味わう
サン・マルコ寺院を堪能したあと、僕たちは水上バスに乗って、駅側へ戻ることにしました。
この2日間で、何度も水上バスに乗りました。
最初は、移動手段として乗っていました。
でも、だんだんわかってきます。
ヴェネツィアでは、水上バスそのものが、ひとつの観光体験なのだと。


水の上を進みながら、教会や建物がゆっくり遠ざかっていく。
風が吹く。
波が揺れる。
船がすれ違う。
ただ座っているだけで、ずっと気持ちがいい。
出発前は、せっかくヴェネツィアに行くなら、夫婦でゴンドラに乗りたいと思っていました。
もちろん、ゴンドラはヴェネツィアらしい体験です。
でも、実際に2日間を過ごしてみると、僕たちは水上バスだけでも十分に満たされていました。
ムラーノ島へ向かう朝の風。
サン・マルコ広場から駅側へ戻る午後の光。
船の上から眺めるサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会。
遠ざかっていくサン・マルコ広場。
水面に反射する建物。
全部が、僕たちにとっては十分すぎるほどヴェネツィアでした。
だから今回は、ゴンドラは見送ることにしました。
無理に全部を詰め込まなくてもいい。
また来た時の楽しみに残しておけばいい。
そんなふうに思えたのも、今回の旅がそれだけ満たされていたからだと思います。
ヴェネツィアに、静かに別れを告げる
水上バスで駅側に戻るころには、少しずつ旅の終わりが近づいていることを感じていました。

駅前に広がる大運河。
向こう側には、緑のドームが印象的な教会。
船が行き交い、人が歩き、観光客が荷物を引いている。
到着した時にも見たはずの景色なのに、帰る前に見ると、少し違って見えます。
「来た場所」ではなく、「もうすぐ離れる場所」になるからでしょうか。
ヴェネツィアは、最初から最後まで不思議な街でした。
道路ではなく、水路。
車ではなく、船。
駅を出た瞬間から、もう現実とは少し違う世界に入ったような感覚がありました。
でも2日間過ごしてみると、その不思議さが少しずつ日常になっていきます。
水上バスに乗ること。
橋を渡ること。
細い路地を歩くこと。
運河沿いで食事をすること。
広場で音楽を聴くこと。
ガラス工芸の島で、妻とお土産を選ぶこと。
そのひとつひとつが、僕たちのヴェネツィアになりました。
最後の夜は、ホテルに戻り、軽く済ませることにしました。
この日は朝からムラーノ島へ行き、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会へ行き、ランチを食べ、リアルト橋を歩き、サン・マルコ寺院を堪能しました。
もう十分すぎるほど、心もお腹も満たされていました。
だから夜は、無理にレストランへ行かなくてもいい。
スーパーで買ったもので簡単に済ませる。
それもまた、僕たちらしい旅の終わり方でした。
ヴェネツィアで感じた、旅の深まり
ローマは、圧倒的でした。
古代の遺跡。
コロッセオ。
フォロ・ロマーノ。
街全体に積もる歴史の重さ。
フィレンツェは、美しかったです。
ドゥオーモ。
ウフィツィ美術館。
ミケランジェロ広場。
ルネサンスの知性と芸術が、街のあちこちに息づいていました。
そしてヴェネツィアは、夢のようでした。
水の上にある街。
船で移動する日常。
サン・マルコ広場の音楽。
カフェ・フローリアンの優雅な時間。
ムラーノ島のガラス。
サン・マルコ寺院の金色のモザイク。
リアルト橋から見た大運河。
どの街も、まったく違いました。
同じイタリアなのに、こんなにも違う。
そしてその違いを、妻と一緒に感じられたことが、何よりも嬉しかったです。
結婚25周年。
数字だけ見れば、ただの節目かもしれません。
でも、こうして実際に旅をしてみると、25年という時間の重みを、何度も感じました。
一緒に歩けること。
同じ景色を見られること。
疲れたねと言い合えること。
美味しいねと笑えること。
次はここに来たいねと話せること。
若いころには当たり前だと思っていたようなことが、今はとてもありがたいことに感じます。
旅は、景色を見るだけではないのだと思います。
一緒に生きてきた時間を、もう一度見つめ直すことでもある。
今回のイタリア旅で、僕は何度もそう感じました。
再びローマへ。そして、バチカンへ
今、この文章はローマへ向かう高速列車の中で書いています。
ヴェネツィアを離れ、再びローマへ。
窓の外を流れていく景色を見ながら、今回のヴェネツィア編を仕上げています。
旅の終わりが、少しずつ近づいてきました。
寂しさもあります。
でも、それ以上に、
「ここまで来られてよかった」
という感謝の気持ちが大きいです。
ローマから始まり、フィレンツェへ行き、ヴェネツィアを歩き、またローマへ戻る。
そしてこのあと、いよいよバチカンへ向かいます。
旅は、もう終盤です。
でも、まだ終わっていません。
最後の最後まで、妻と一緒に楽しみ尽くしたいと思います。
ヴェネツィア。
水の上に浮かぶ、夢のような街。
また必ず、戻ってきたい場所になりました。
次に来る時は、もっとゆっくりムラーノ島を歩きたい。
ゴンドラにも乗ってみたい。
ドゥカーレ宮殿にも入りたい。
そしてまた、サン・マルコ広場で音楽を聴きながら、妻とゆっくりカフェの時間を過ごしたい。
旅には、終わりがあります。
でも、いい旅には、必ず「また来たい」が残ります。
ヴェネツィアは、まさにそんな街でした。
次は、再びローマへ。
そして、バチカンへ。
結婚25周年のイタリア旅は、いよいよ最後の章へ向かいます。
天豆(てんまめ)
再びローマ・バチカン編はこちら↓最終章ぜひご覧ください。
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