創造とは“再定義”である
vol.1748
今年も「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」が6月に開催されました。
〈知財図鑑 / 2026年6月24日〉
マーケター、クリエイターが注目する広告賞ということもあり、毎年どんな感じだったかチェックしているのですが、今年は非常に興味深いヒントがあったというのが感想です。
AI時代をクリエイターはどのように生きるのか?
今日は、そんな話をさせていただきます。
「人間の感情」「共感」「手触り感」
ちなみに、昨年のカンヌはクリエイターたちから悲壮感が漂っていたという印象でした。
AIの急速すぎる進化が、仕事の在り方やバリューチェーンの構造、そして、この業界で働く人たちの存在意義を揺るがそうとしている。
BoseのCMO兼ラグジュアリーオーディオ部門プレジデントであるジム・モリカさんが
「いまだにAIというと『クリエイティビティ』の話ばかりが注目されがちだが、もっと大きな影響がある」
と仰っていたことがショックでした…
ところが、1年経った今年はAIには代替できない
「人間の感情」「共感」「手触り感」
が重要だという明るい見方になっているのです。
AIは過去の膨大なデータを分析し、「どんな商品が売れやすいか」などを予測することには長けていると言われています。
もちろん、それなりの傾向は掴めるのでしょうが、それでも、実際にその商品や広告が人々の心を掴み、大ヒットするかどうかは分かりません。
映画や音楽、広告、ブランドは、ロジックだけでヒットするものではないからです。
一方、ムーブメントは人の共感の連鎖から生まれると言えます。
「思わず笑ってしまった」
「感動して涙が出た」
「誰かに話したくなった」
そうした感情の動きが、誰かに伝えたい想いに変わり、ヒットへとつながっていく。
この「人の感情を動かす力」は、人間だから理解し、想像することができるとも言えるわけです。
だからこそ、AI時代のクリエイターに求められるのは、効率よく作品をつくることではなく、人が驚き、共感し、「面白い」「誰かに伝えたい」と感じるような体験や物語を創り出すことが重要となるでしょう。
ブランドやエンターテインメントの価値は、最後は人の心をどれだけ動かせるかで決まる。
つまり、「感動」を生み出すのは人間の役割であるというわけです。
際立つ「再定義」の発想
そうした考えが知財図鑑の記事では語られていたのですが、改めて私も人間の価値は単に「つくること」ではなく
「問いを再定義し、新しい意味を与えること」
にあると感じました。
生成AIによって画像や映像、文章などのアウトプットを誰もが短時間でつくれるようになった結果、「制作能力」そのものは差別化要因ではなくなる可能性が高いと考えています。
一方で
「何を課題と捉えるのか」
「どんな視点で世界を見るのか」
を問い、当たり前だと思われている前提を書き換えることは、人間にしかできないことでしょう。
実際、カンヌライオンズで評価された作品に共通するのは「再定義」の発想です。
例えば、Audio & Radio部門グランプリに輝いた韓国の自動車メーカー「Hyundai」の「Coquí Alarmed」というCM作品では、「音の意味」を変えました。
普通は、車の施錠音は単なる電子音で、誰も意識しません。
しかし、この作品ではその音をプエルトリコの象徴であるカエル「コキー」の鳴き声に変えました。
すると、今まで「うるさい」としか思われなかった鳴き声が
「この土地を象徴する文化や自然の声」
へと変わったのです。
コキーはプエルトリコでは島のシンボルとして親しまれ、文化的・歴史的にも大切な存在。
車を“文化を伝えるメディア”に変えたところが秀逸なのです😊
ちなみに、最近日本でも「シャンプー」を再定義した好事例に出会いました。
〈毎日新聞 / 2026年6月18日〉
「冷やしシャンプーはじめました」
「冷やし中華」ではなく「冷やしシャンプー」。
なかなか気になりませんか?(笑)
遊び心を解き放つ
どういうことかと言いますと、これは山形県発祥の夏季限定の理美容サービスで、メントール系のシャンプーを冷やして使うことで、頭皮だけでなく体の芯まで爽快感を味わえるというもの。
1995年頃、山形市宮町の理容室「メンズ・ヘアリズム」にて、夏の限定サービスとして冷蔵庫で冷やしたシャンプーを使用したのが始まりとされています。
その後、他のお店にも広がり、2004年には「冷やしシャンプー推進協議会」が設立。
今では山形県の名物になりました。
このサービスが生まれた背景には、山形の夏の厳しい暑さがあります。
それを乗り切る工夫として、ラーメンや肉そばなどと並び、山形の「冷やし文化」として定着しているのです。
当初は「クールシャンプー」と言っていたそうなのですが、「冷やしシャンプー」に変えたところがミソでしょう。
より“夏を乗り切るためのもの”ということがユニークなイメージとともに伝わってきます。
こうした遊び心こそ、人間の力。
何より、自由な発想で考えることこそ楽しいことです。
ちなみに先日、海外の名所に似た場所を国内で見つけて行く「擬似海外旅行」の話をしましたが
同じような発想を持った『休日の予定は世界旅ごっこ 異国気分をたのしむ東京さんぽ』という本があるのを最近知りました。
〈ダ・ヴィンチ Web / 2026年6月6日〉
東京にいながら世界各国を旅した気分を味わう「なんちゃって海外旅行」をテーマにしたコミックエッセイなのですが、例えばフランスをテーマにするなら
「輸入雑貨店やフレンチレストランを巡るだけでなく、服装や振る舞い、そしてこの日の会話はフランス人のように『批評や議論』を楽しむ」
といった具合に「なんちゃってフランス旅行」をトコトン都内で味わうというのが大事だそうです(笑)
これも、遊び心と再定義。
この妄想力がAIにはない人間の創造性に感じられます😊
クリエイターだけではなく、全てのビジネスパーソンのヒントになる。
私も遊び心を持って再定義を楽しみながら、今後もマーケティングの仕事に取り組んでいきたいと思います🫡
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
