マーケターの20%の光
vol.1484
今を時めくマーケターの西口一希さんが、PIVOTに出演し
「マーケターの今の仕事の8割は5年後なくなる」
という驚くべき話をされていました…
〈PIVOT / YouTube〉
AIの急速な進化により、省人化が進むと思われる未来。
…ただ、数年後と聞くと…、マーケティングを生業にしている私の心にも緊張感が走ります…
こうした危機感は、マーケティングとメディアの祭典「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」のレポートでも見られています。
カンヌの憂うつ
今年のカンヌで最も声高に語られたテーマの1つが、AI。
その急速すぎる進化が、仕事の在り方やバリューチェーンの構造、そして、この業界で働く人たちの存在意義を揺るがそうとしています。
〈DIGIDAY / 2025年6月24日〉
BoseのCMO兼ラグジュアリーオーディオ部門プレジデントであるジム・モリカさんが
「いまだにAIというと『クリエイティビティ』の話ばかりが注目されがちだが、もっと大きな影響がある」
と仰っているように、本質的な変化は、意思決定の仕組み、メディア配分、キャンペーンの成果を根本から変えるような「競争優位性と業務効率の獲得」にあると指摘されています。
例えば、メディアプランニングです。
こうした仕事は、人脈、信頼、経験知に支えられてきましたが、AIはそれを再現、あるいは補完できる段階に来ています。
そして、SNSプラットフォームでも、AIを導入した新たな動きが見られています。
若者に人気のSNS「BeReal」では、2025年末から2026年初頭にかけて、セルフサーブ型の広告プラットフォームが導入される予定とのこと。
そして、Metaは2025年末までに、広告制作のプロセスを完全に自動化するためのAIツールを企業向けに提供する計画があります。
〈ZDNET / 2025年6月4日〉
AIの機能をさらに強化し、広告のアイデアづくりから動画や音声の制作まで、全ての工程を自動で行えるようにする。
Runwayの「Gen-4」やGoogleの「Veo 3」といったモデルは、テキストから極めてリアルな映像を生成でき、従来必要とされていたロケーション選定、大規模な撮影体制、制作コストを大幅に削減する可能性を示しているのです。
この1〜2年でSNS広告の運用のあり方に、大きな変化が生まれそうな予感がしますね…
私たちに残された役割とは?
一方、Metaを始めとするテクノロジー企業は、AIによって人間の仕事を排除するのではなく、創造性を補完するツールとして位置づけているとも言われています。
特に動画生成AIの活用には、誤情報を防ぐために人間の監督や精度の高いプロンプト設計が不可欠ですし、プロンプト作成自体も創造的スキルが必要とされています。
少なくとも西口さんも「2割」は人間の仕事が残ると仰っているわけです。
では、その2割とは何なのでしょうか?
「人間に求められる能力」
と聞いて、パッと頭に浮かぶのは、「洞察力」「察知力」「判断力」の3つです。
洞察力とは、人間の感情を深く理解する力。
まだ言語化できていない感情を見つけたり、未発見の価値を発見する能力です。
“未知の問い” をつくるにも、洞察力は欠かせないでしょう。
そして、察知力は時代、社会の「空気を読む」こと。
とくにTikTokのコンテンツを見ていて思うのですが、トレンドの切り替わりが鮮やかです。
TikTokといえばミーム文化ですが、
「あっ、もうこのネタ、ちょっと古いかも」
と思えば、すぐに新しいミームが生まれている。
「こういう表現をしたら、ちょっと炎上しちゃうかもな」
と察知するのが上手いのも人間なのではないでしょうか😊
そうして、AIが生み出したクリエイティブやプランや分析を人間の目で判断していく。
「AIが仕事を“こなす”時代だからこそ、人間は仕事に“意味”を与える存在であり続ける」。
そう考えていくと、もしかしたら2割以上の役割になっていくのかもしれません〜
広告とは「共感欲求」
実際、今年のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルでライオンズを受賞した作品には、そんな人の力が生きています。
〈TABI LABO / 2025年6月26日〉
その広告とは、KitKatのキャンペーン『Phone Break』。
皆さん、「休憩中」は何しているでしょうか?
ほとんどの方がスマホを見ているのではないでしょうか?
KitKatの広告では、皆が移動中の何でもない時間の中で、スマホを見る人々を描いているのですが、途中から、その手元に持っているスマホがKitKatに変わる。
この単純な置き換えによって、現代人がいかに無意識にスクリーンに没頭しているかを、見る人に優しく、そして的確に気づかせてくれます。
〈KitKat’s iconic “Have a Break” by VML Czechia and Mindshare CZ / YouTube〉
さらに、個人的に深読みしていてみたいと思います。
お菓子は単に小腹を満たすだけではなく、コミュニケーションツールでもある。
お菓子のそばでは、談笑が生まれます。
実際、日本の茶礼文化から生まれた「三時のおやつ」には、
お茶を分け合い、皆で団欒を楽しみ、心身を休ませる
という意味が込められています。
スマホなんか見ていないで、みんなと楽しくしゃべりながら、お菓子を楽しむ。
そんな幸福のイメージが湧いてきます。
この広告の上手いところは、説明し過ぎず、視聴者の考える余白をつくっているところ。
それでいて、KitKatが向かって欲しい思考の筋道に誘導している。
人間を深く理解した作品だと思います
そして、私のような誰かが他の誰かに伝えることで、共感の輪が広がっていく。
広告とは人と人のコミュニケーション。
会話がそうであるように、広告も「つくり手」も「受け手」も、求めている核は「共感」なのかもしれません。
やりたい仕事をやる未来
恐らく、KitKatの広告をつくったクリエイティブメンバーは、たくさんの共感を集めて、至極幸せなことでしょう。
そして、「広告業界に入って良かった〜!」と言っている可能性は高い。
…羨ましい…(笑)
そして、また次の共感を目指して知恵を絞っていくことでしょう。
私も、小さな成功ながらも、それなりに喜びを味わってきました。
だから、AIがどれだけ台頭しようとマーケティングの仕事をやめるとこはないような気がする。
仮にマーケティングの仕事がゼロになって、別の職業についたとしても、マーケターとしての目で物事を見つめ、これまで培ってきたことを生かしていくはずです。
結局のところ、どんな仕事(業務)が代替されるかは分からないですし、洞察力、推察力、判断力に優れたAIが登場する可能性もある…
だから、やりたいことをやる、という部分を、自分の仕事の一丁目一番地にしようと思う今日この頃です。
「AIが仕事を“こなす”時代だからこそ、人間は仕事に“意味”を与える存在であり続ける」。
まずは自分の仕事の意味ですね😊
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
