【📓小説】②心クリーニング書店 「転職の後悔をクリーニング」
第2話「転職の後悔をクリーニング」
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1 カケル、アシスタントとして再び書店へ
「……ほんとに、ここで働くんですか?」
カケルは「心のクリーニング書店」の前で立ち尽くしていた。
あの日のタイムリープから一週間。仕事は忙しいが、どこか胸の中に一本の芯が通ったように感じている。
「アシスタントとして来てみない?」
薫からそう誘われたのだ。
(タイムリープ……あれは夢じゃなかったんだよな。)
意を決して扉を開けると、いつもの鈴の音。
「おう、坊主。今日から正式な助手じゃの。」
爺がにやりと笑いながら出迎えた。
「爺、坊主ってやめてください……。」
「ならばカケル坊でええかの?」
「余計ひどい!」
薫はくすりと笑い、「まぁまぁ。今日は依頼者が来るわ。初任務よ。」
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2 依頼者・三浦美咲との出会い
扉が開き、30代前半の女性が入ってきた。落ち着いた雰囲気のスーツ姿だが、その表情はどこか沈んでいる。
「……あの、ここ、“後悔を消せる”って……本当なんでしょうか?」
「ええ、本当よ。」薫は柔らかく頷く。「ようこそ、心のクリーニング書店へ。」
「私は三浦美咲、31歳です。……3ヶ月前、念願の大手広告代理店に転職したんですが……もう辞めたいんです。」
「理由を、教えてくれる?」
促され、美咲はぽつりぽつりと語り始めた。
• 前職は中小企業の広報担当で、のびのび働けていた
• でも「もっと大きな仕事がしたい」と転職
• ところが入ってみると、激務と派閥争いに疲弊。毎晩終電
• 「前の会社のままで良かったのでは?」という後悔が消えない
薫は頷き、爺が差し出した湯呑を美咲に渡した。
「――その後悔、クリーニングしましょう。」
「……できるんですか?」
「もちろんよ。――ね、カケル。」
「は、はいっ!」
突然振られ、カケルは慌てて背筋を伸ばした。
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3 本のページが開く――転職直後の過去へ
薫が古びた本を開くと、光が溢れ出す。
「さあ、最初のタイムリープよ。」
次の瞬間、カケル、美咲、薫、そして爺の四人は――3ヶ月前、転職初日の朝に立っていた。
「え……これ……!」美咲が目を丸くする。
「現実よ。過去は変えられない。でも“見直す”ことはできるの。」
薫が微笑み、カケルに視線を送る。「カケル、あなたの出番よ。彼女に寄り添って。」
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4 1回目のタイムリープ――カケルの情熱で空回り
美咲の入社初日。緊張した面持ちでオフィスに入ると、すぐに上司が冷たく指示を飛ばしてきた。
「三浦さん、企画書は今日中に修正ね。あと、夜の会議は覚悟して。」
「は、はい……!」
美咲は戸惑いながらも必死に応じるが、周囲はピリピリしていて声をかけづらい。
(うわ、これ……きついな……)
カケルは思わず口を挟んだ。「美咲さん、大丈夫っす! ガツンと言い返してやりましょうよ!」
「えっ……で、でも……」
「遠慮なんかいらないっすよ!自分の意見言わなきゃ損ですよ!」
情熱的に背中を押され、美咲は震えながらも勇気を振り絞った。
「課長、あの……修正箇所なんですけど、もっと効率的な方法が……!」
しかし課長は眉をひそめた。「君、新人が何を……!」
その場の空気が一気に凍りつく。
(やば……)
結局、美咲は初日から上司に目をつけられ、余計に追い込まれてしまった。
「……ごめんなさい……」
「俺が悪いっす……」
カケルは肩を落とした。薫はため息をつき、カケルに静かに言った。
「情熱だけじゃ人は救えないのよ。」
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5 2回目のタイムリープ――薫の影アシスト
再び光が包み、入社初日に戻る。
薫がカケルに耳打ちした。「今度は“観察”から。焦らずに。」
オフィスに入る美咲を見守りながら、薫は姿を消した。
「(お嬢様は影からサポートしておるわい)」爺が小声で笑う。
カケルは、美咲にゆっくり話しかけた。「美咲さん、まずは“聞く”ことから始めましょう。焦らず、観察です。」
美咲は頷き、上司の指示を素直に受け取り、要所で質問を挟んだ。
「この資料はどの順番で直すと効率がいいでしょうか?」
課長は苛立ちながらも、「……それならここからやれ」と答えた。
少しずつ、空気が和らぐ。
さらに薫の見えないアシストが入り、隣の先輩社員が自然に声をかけてくる。
「三浦さん、これテンプレあるよ。使う?」
「えっ……ありがとうございます!」
こうして、美咲は初日の終わりには小さな達成感を得られていた。
しかし――
現実に戻ると、美咲は小さく首を振った。
「確かにマシにはなったけど……“前の会社のほうがよかった”って思いは、まだ消えない。」
薫は頷く。「だからこそ――最後の一回よ。」
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6 爺の未来ページ――未来の美咲を覗く
爺が分厚い本を開くと、眩い光が溢れた。
映し出されたのは――2年後の美咲。
そこには、堂々とプレゼンをする美咲の姿があった。
背後には大型広告案件の資料。周囲の同僚も頷き、拍手が起きる。
「……すごい……私、こんな……!」
さらにページをめくると、前職の同僚たちとカフェで笑顔で話す姿もあった。
「戻らなくてよかったね」と言われ、美咲は誇らしげに笑っていた。
「……私、このままでもいいんだ……!」
美咲の目に涙が浮かぶ。
薫がそっと微笑む。「後悔は、選んだ道が間違いじゃないって気づいた時に消えるのよ。」
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7 現実へ――美咲の決意
光が消え、書店に戻る。
美咲は深く息をつき、「……辞めません。もう少し頑張ってみます。」
「それでいいのよ。」薫が頷く。
爺は茶を差し出し、「お嬢様、またお見事で。」
「ありがとう、爺。」
カケルは思わず拳を握った。(……俺も、アシスタントとして役に立てたかな?)
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8 エピローグ――未来を覗くふたり
美咲が帰った後、薫は本を開き、未来をそっと覗いた。
そこには、堂々と働く美咲と、その隣で資料を持つカケルの姿が――。
「お嬢様、坊主もなかなか様になっとるのう。」
薫は微笑む。「ええ、未来は自分で選び直せるものだから。」
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薫メッセージ
「後悔は“選んだ過去”じゃなく、“これからの心の持ちよう”で変えられる。」
