【新感覚!自己選択型RPG小説】大航海物語〜物語展開は無限大!〜
第一話「リスボンの碧き風」
リスボンの港に、朝焼けが差し込んでいた。
赤茶けた屋根の街並みが陽に染まり、無数の帆船の白い帆が、まるで空に浮かぶ雲のように並んでいる。潮風は塩の匂いを運び、港は今日も賑やかだ。荷を運ぶ商人、船員を募集する声、そして行き交う異国の言葉。
「――これが、俺の出発点だ。」
ディオゴ・アルヴェスは桟橋に立ち、遠くの水平線を見つめた。
碧い瞳が、まるで大洋そのものを映しているかのようだった。
幼い頃、ヴァスコ・ダ・ガマの凱旋をこの港で見た日の衝撃が、今も胸に焼きついている。異国の旗に彩られた船、積まれた香辛料や金銀、そして英雄を讃える人々の歓声。あの日の高鳴りが、彼をこの日まで導いてきた。
「ディオゴ船長、出航準備完了です!」
副官ロドリゴが声を張り上げた。元傭兵の剣士で、日に焼けた顔にはいくつもの傷が刻まれている。だがその目は、主君に対する信頼で輝いていた。
「ありがとう、ロドリゴ。皆、緊張はしていないか?」
「へっ、俺は海の上の方が性に合う。だが…新米の連中は尻込みしてるな。」
桟橋の先に停泊する小型キャラベル船《サン・ヴェントゥーラ号》を見やると、甲板では十数名の船員たちがロープを結び直したり、帆を畳んだりしていた。彼らの中には、港でスカウトした漁師上がりや、元海賊まで混ざっている。
「おい、緊張するな!」
ディオゴは笑顔を浮かべ、彼らに声を張った。
「俺たちは恐れるために海に出るんじゃない。夢をつかみに行くためだろう?」
その言葉に、船員たちは思わず顔を見合わせ、やがて笑みが広がった。彼の明るさは、不思議な力で人を安心させる。ENFJの持つ天性のカリスマ――それが、寄せ集めのクルーたちを一つにしていた。
⸻
「…ディオゴ、本当に行くのね。」
港の一角で、学者ソフィア・デ・メデイロスが見送りに来ていた。幼馴染であり、星図や地理に通じた知識人だ。彼女の手には、革張りの航海日誌が握られている。
「これを持っていって。私が書き写した最新の星図と、航海の注意点が入ってるわ。」
「ありがとう、ソフィア。君がいなければ、俺は地図の見方もろくに知らなかっただろう。」
「…気をつけて。アフリカ西岸は嵐も多いし、海賊も出るって噂よ。」
「心配するな。俺は必ず帰ってくる。そして、世界の果てを見て、それを君に語る。」
ディオゴは迷いなくそう言い、ソフィアの手を取った。その真っ直ぐな眼差しに、彼女は言葉を失った。
(…そんなこと、簡単に言えるわけないのに。)
心の奥に、秘めた想いを押し込める。彼は海に恋している。だから、今は――見送るしかない。
⸻
「錨を上げろ!帆を張れ!」
港に響く掛け声とともに、《サン・ヴェントゥーラ号》はゆっくりと岸を離れた。
船が進むたび、港の喧騒が遠ざかり、代わりに潮の匂いと波音だけが近くなる。水平線の彼方に広がる未知の海。そこに、彼の未来がある。
だが、海はすぐに牙を剥いた。
三日目、カナリア諸島近海で突如嵐に見舞われたのだ。
黒雲が空を覆い、稲光が海面を裂く。巨波が船体を打ち、船員たちは必死にロープを握りしめた。
「帆を畳め!舵を北西に切れ!」
ディオゴの指示が飛ぶ。恐怖で硬直した若い船員の肩を叩き、「大丈夫だ、俺を信じろ!」と笑って見せる。
彼の声が、不思議と皆の心を奮い立たせた。
その時、甲板の向こうから叫び声が上がる。
「船影だ!……海賊だぁ!!」
嵐の向こう、黒い帆を掲げた大型ガレオン船が迫ってきていた。波をものともせず、鋭い船首がこちらに突っ込んでくる。
「くそっ…よりによってこんな時に!」
ロドリゴが剣を抜いた。だが嵐の中で戦闘など狂気の沙汰だ。
ディオゴは舵輪を握りしめ、咄嗟に三つの策を考えた。
⸻
【ここでプレイヤー選択】
ディオゴは嵐と海賊の板挟みの中、どの行動を取るのか?
Aパターン:全速力で逃げる!
嵐を利用して船を急旋回、荒波の中で振り切る。リスクは高いが、最も被害が少ない可能性。
Bパターン:海賊船に接舷、逆に白兵戦を挑む!
嵐を逆手に取り、接舷して奇襲。成功すれば海賊船を奪えるが、失敗すれば沈没必至。
Cパターン:嵐に乗じて隠れる!
帆を畳み、波間に紛れてやり過ごす。消極的だが、運が良ければ難を逃れられる。
⸻
次回は選んだパターンによって、物語が分岐します。
Aなら「命懸けの大脱出」、Bなら「血煙の海賊戦」、Cなら「奇跡の漂流と謎の島」へ――。
